幸せな生き方とは? 〜アドラーと幸福学から学ぶ「主体性」と「勇気づけ」〜
はじめに
「パーパス」や「ウェルビーイング」という記事を最近はより多く見かけるようになりました。
仕事とウェルビーイングコンソーシアムを2020年7月に慶應義塾大学の島津先生たちと立ち上げて以来、「ウェルビーイング」とは何か?について考えて続けています。
さて、今回ですが、以下の本を読み、個人的に印象的だった点や学びになった点をまとめていきます。
本書籍は、アドラーの思想を幸福学の観点から分かりやすく説明されており、実践形式の事例が多くあり、ロジカルに理解したい人、日々の行動の参考にしたい人等、多方面に参考になるのでは?と思っています。
さて、本記事構成ですが、大枠は以下図について、私が参考になったことをまとめていきます。
アドラー心理学の中核は『「共同体感覚」=仲間感』だ
「共同体感覚」を構成する3つの要素
この3つの要素が高ければ高いほど、「共同体感覚」が満たされ、人は幸せを感じるというのがアドラーの立場のようです。
自己受容:自分を受け入れること。自己承認とは異なる。
自己承認は、自分の良いところを見つけること。
自己受容は、自分の良いところも、ダメな欠点も含めてOKを出せること。
他者信頼:周りの人を信頼できること。
貢献感:周りの人に役に立てているという感覚
幸福学の「幸せの4つの因子」
以下の幸せの4因子の全てが高い人が幸せ。1つの因子だけでは幸福度が高まらないようです。
やってみよう因子(自己実現と成長)
夢や目標を持っていたり、主体的に行動できる人は幸福度が高い
自己肯定感が高く、周りのへの信頼感があるひとは、失敗を過度に恐れず行動することが出来る
仲間との繋がりが安心感を生み、その安心感が確保されている環境に属している方が、クリエイティブに行動する傾向が高くなる(創造的自己)という研究もあり
ありがとう因子(繋がりと感謝)
人と積極的に接して、感謝出来る人は幸福度が高い
「共同体感覚」の他者信頼と貢献感はここに関係
(幸せと利他性の相関はものすごい強い強いとまでは言えないよう)
なんとかなる因子(前向きと楽観)
常に前向きで楽観的、気持ちの切り替えが速い人は幸福度が高い
「共同体感覚」の自己受容と非常に相関の高い因子
ありのままに因子(独立と自分らしさ)
人の目を気にせず、本来の自分のままに行動できる人は幸福度が高い
創造的自己とは?
「誰もが、自分の人生の主人公だ」という仮説。対極は決定論(運命決定論)。
創造的自己は、主体性や自己決定(自分の行動を自分で決めること)と関係し、約2万人の調査では、「所得や学歴より自己決定度の高さが幸福度をあげる」という結果が出ている。
アメリカの研究で「幸せな社員」は「不幸せな社員」より創造性が3倍高いという結果もあるよう。
目的論とは?
原因論の関わり方
「何が悪い?」「どこが悪い?」「どうしてこうなっちゃったの?」と、今の問題を引き起こした過去の原因や性格上の問題、誰のせいで発生したのかなどを掘り下げて取り除く。
狭義の目的論の関わり方
その行動で得ているメリットを見つけ、代わりとなる行動を探してもらう。
広義の目的論の関わり方
過去の原因や性格上の問題などには注目せず、「この先、どんな人生を生きたいですか?」「あなたはどうなりたいですか?」という、その人のこれから(目的)に注目して関わる。
主観主義とは?
主観主義は現象学、認知論とも呼ばれる。対極は客観主義。
「人間一人一人の価値観、モノの味方、考え方はそれぞれで違う、という前提に立ちましょう」という仮説。
主観主義は、相手の見ている世界に寄り添うことだと言える。
主観主義という仮説は、多様性を認め合うことでもある。「多様性に富んだ社会の方が幸福度が高く、イノベーションも起きやすい」「友だちが多様な方が幸せ」という研究結果もある。
対人関係論とは?
アドラーは「すべての問題は、対人関係に由来する」という。
対人関係論とは、そのことを前提に人と関わるべきだとする仮説。
対人関係論は、「すべての人間は、自分の居場所(=人に必要とされる場)を見つけようとしている」という前提に立っているとも言える。
対極は精神内界論。心にまつわる問題(うつ病やパニック障害など)はすべてその人の身体の内側で起きていると捉える立場。
全体論とは?
全体論とは「人間の中には、本来、対立や矛盾は存在しない」というアドラーの考えを前提とする立場。対局となるのは要素還元論。
アドラーは全体論を人生全般にも適用。
例えば、要素還元論のように「あんな失敗をしてしまった自分は、もう生きていく価値がない」という風に発想するのではなく、「あの体験は本当に辛く、悲しいことだったけれど、あれがあったからこそ、気付かされたことがある。学んだことがある。」と捉える等。
過去と現在、未来を通じても、人間の中に対立は存在しないという立場。
原因論は正しさ追求、目的論は楽しさ追求
中村のお気に入りの言葉入りしたので、唐突にツイート笑
原因論
リソース(=スキル、能力、知識、技術というその人が持っている資源)追求型の解決。技術や能力に注目して、正しさを追求。
目的論
リソースフル(=心に余裕がある意識状態)追求型の解決。心の状態が良いか、楽しいか(=リソースを十分に活用できるか)を追求。
今まさに「北京2022オリンピック」ですが、アスリート指導の文脈で原因論、目的論を見ていきましょう。
原因論のアスリート指導では、技術を磨き、ミスを防ぐために原因論で徹底的にダメ出しをする。
メダルが期待される選手には「絶対に金を獲るんだ。それ以外は意味がない」と鼓舞。
一部の選手は「頑張るぞ」「やるぞ」となる一方、「優勝できなかったらどうしよう」という不安からビクビク、オドオドしたアンリソースフルな状態になる選手も多数。
目的論のアスリート指導では、ミスを防ぐことよりも、選手の持っている良い部分や成長に意識を向ける。
メダルは関係なく、本人にとってベストなパフォーマンスが出るように鼓舞。本人が持っているリソースを最大限発揮できる、リソースフルな心の状態で試合に臨める。
また、練習にも前向きに取り組めるので、リソースの向上にも期待できる。
勇気づけと勇気くじきって?
成果のみを重視するメッセージは勇気くじきの可能性あるようです。
例えば、「全社で一位とはすごいね」と褒めるのは、問題がないように思えるかもしれません。
しかし、本メッセージには「一位だったから価値があった。もし二位以下立つたら価値はない」と相手が受け取る余地があります。
一方で、過程をも重視するメッセージは勇気づけになります。
例えば、「営業成績で一位になった」というのは事実のため、その事実は承認した上で、「一位を達成する前に、相当頑張ったね」とか「一生懸命努力した結果が出ましたね」とそれまでの過程を評価。
過程や努力に意識を向けるように促すメッセージは、受け取る側に自分の人生をコントロールできている感(=創造的自己)を育むきっかけに。
地位財(=他人と優劣を比較できる財。お金、モノ、社会的地位、点数など)は勇気くじき、非地位財(=他人と優劣を比較できない財。愛情、自由、自主性など)は勇気づけ。
営業成績やテストの点数、業務や教科の得意・不得意に注目するのは地位財的な発想で、これらによる幸せは幸福学では長続きしないことがわかっている。
一方、過程や努力のような非地位財による幸せは長続きする。
終わりに
アドラーも幸福学も自分の人生をどう主体的に生きるか?なんだろうなぁというのが感想です。
ちなみに、私の相方は、以下の文脈で、口癖のように「主体性」を言います笑
また、個人的には「捉え方が10割」と思っています。
これはあえてキャッチーに言ってみていますが、1つの背景としてあるのは、「ジョブ・クラフィティング」です。
Wevox(ウィボックス)のプロジェクトで、Engagement Run!という企画があるのですが、そちらで以下の池田さんを講師になって頂き、「ジョブ・クラフィティング」の講義をして頂きました。
上記のような体験を参考にしながら私の方でまとめたのが以下の資料群です。
「捉え方が10割」を「ジョブ・クラフィティング」の認知のクラフティングで説明するとわかりやすいかもしれません。以下の記事で書いたレンガ職人の事例です。
最後に私自身は「勇気づけ」が出来る人間として、煉獄さんをリスペクトしながら頑張っていきます。
最近ハマっている言葉は「フィードフォワード」笑
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