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#313 「働きやすさ」の向上には、まだまだ改善の余地ばかり

いかがお過ごしでしょうか。林でございます。

私が仕事をし始めた2010年代前半の頃に比べ、職場の労働時間管理はより厳しくなり、労働時間や働き方に対する考え方はこの10数年だけでも随分と変わってアップデートされました。

特に、2019年より施行されている「働き方改革関連法」では、「労働時間法制の見直し」と「雇用形態に関わらない公正な待遇の確保」が大きな柱とされており、この数年でも一気に労働時間管理規制がより厳しく管理されるようになった実感があります。

特に、コロナ禍がもたらしたリモートワークの急速な普及は、多くの人にとって働き方を見直すきっかけとなり、「リモートワークのオプションがある企業」が企業の求人のより強いアピールポイントの一つになったのは明らかでしょう。

マイナビ転職をざっと見てみても、「テレワーク・リモートワーク特集」とわざわざ特集サイトが設けられるほどです。核家族化が進み、2021年における夫婦共働き世帯は68.8%を占めるようになった現代において、育児や介護との両立を考えると、「柔軟な働き方のオプション」がない仕事をしながら、日々の生活を営んでいくのは、もはや無理ゲーの域に達しつつあります。

共働き世帯は約7割
https://www.mizuho-bp.co.jp/concierge/11_tomobataraki_percent/

特にここ5年くらいで一気に働くことに対する価値観や文化が変わりつつあるのは感じつつ、「働きやすさの向上」というテーマには、まだまだ改善の余地ばかり、とも考えています。

今日は、厚生労働省が公表している「令和元年版 労働経済の分析 - 人手不足の下での「働き方」をめぐる課題について -」を見ながら、「働きやすさの向上」に何が必要と考えるかについて、私の意見も織り交ぜながら整理していきたいと思います。

「働きやすさ」に関するマクロ情報

まず、「男女別・年齢階級別にみた働きやすさに対する満足感」を見ると、働きやすさに対する満足感を「いつも感じる」または「よく感じる」労働者の割合は、「35〜64歳の男性」および「45〜64歳の女性」で相対的に低くなっています。
それぞれ、なかなかレンジが広いなと感じますが、仕事でも中堅以上の立場になり、それなりに責任が伴うところに、35〜54歳くらいまでであれば子育て、それ以上になると親の介護なども重なったりしていることが要因だろうと推察します。

男女別・年齢階級別にみた働きやすさに対する満足感
https://www.mhlw.go.jp/wp/hakusyo/roudou/19/dl/19-1-2.pdf

で、この「働きやすさの向上」のために、何が重要なファクターなのか?というところが、自身の企業内の管理職という立場からの観点でも、個人としての人生設計という観点でも関心が高いところです。

男女別・年齢階級別にみた働きやすさの向上のために重要な雇用管理

上図がそれを示したものになりますが、ちょっと細かいので解説を入れます。

まず、男女別・年齢階級問わず、「職場の人間関係やコミュニケーションの円滑化」が最も多く、次いで「有給休暇の取得促進」「労働時間の短縮や働き方の柔軟化」が高くなっています。また、「15~34歳」「35~44歳」の女性は、「仕事と育児との両立支援」も重要と考えており、この傾向は、女性ほどではないものの、「15~34歳」「35~44歳」と相対的に若い男性においても見られます。

近年では「人手不足」の進行も、労働者の長時間労働を助長し、休暇取得日数を減少させる等、「働きやすさ」を毀損する要因と分析されています。下図の通り、企業の人手不足感は大企業・中小企業問わず、2013年に「過剰感」から「不足感」に転じた後、「不足感」は増加の一途を辿っています。

企業規模別等でみた雇用人員判断 D.I. の推移

改善の余地に溢れている「働きやすさ」

ここからは私の見解が中心となりますが、男女・年齢関係なく最も重要視されている「職場の人間関係やコミュニケーションの円滑化」については、職場の「マネジメント」に依存する部分が大きいと感じています。

職場の人間関係やコミュニケーションの円滑化

人の悩みのほとんどは人間関係と言われるように、基本的にはチームで取り組む前提である仕事において、一緒に時間を過ごす人間関係がギクシャクしていたり、お互い話しにくい雰囲気では、いくら休みが多めに取れたり、残業が少ないといっても「働きにくい」と感じるのは、理解できるところです。

そして、どの職場においても、組織の雰囲気を決定付ける人が存在する、というのが私の考えです。明るいメンバーが集まれば明るくなる、という要素ももちろんあるとは思いますが、組織の文化や雰囲気に影響力を持つ人が管理者側に存在しているケースがほとんどだと感じています。

個人的にも、組織長や部長等の上位管理職の人間性や雰囲気によって、同じメンバー構成であったとしても、ガラッと価値観や人間関係、メンバーがストレスを感じるポイントが変わる、ということを経験してきました。

だから、管理者側としては、自分の一挙手一頭足が職場の人間関係や雰囲気、すなわちメンバーにとっての働きやすさにいかに直結しているかという自覚を持つ必要があります。ただ、残念ながら、上司にも当たり外れがあり、メンバーの立場にとってはここが運頼みになってしまっている現場が多いのが現実。ここが、「改善の余地に溢れている」と感じる所以ですが、「こうすれば良い」の即効薬はありません。

ただ、全くの無策かというとそうではなくて、自分が「働きにくいな」と感じることを言葉にして、同じように違和感を感じる仲間を地道に増やしていくことはできます。時間はかかりますが、「働くとはそういうもの」と自分で自分を無理して納得させるよりも、違和感は違和感としてそのまま受け入れる。そして「おかしくないか?」と言ってみる。少しずつではありますが、確実に変化をもたらすトリガーにはなるはずです。

仕事と育児との両立支援

もう一つ、厚労省のレポートから改善の余地が大きいと感じたポイントが「仕事と育児の両立支援」です。

自分が現在、その当事者にいるから、というのが大きいとは思うのですが、これまでの一般的な議論では「育児との両立」に関する「働きやすさ」の焦点は、「女性の働きやすさ」に置かれていた傾向があります。
一方で、「15〜44歳の男性」が働きやすさ向上の要素として「育児との両立」を取り上げる傾向が増えていることには、物凄くリアリティを感じます。

私の周囲にいる同世代以下の男性であれば、保育園の送り迎え、ミルク、オムツ替え、ご飯、お風呂、寝かしつけなどを担うことは、当たり前の感覚です。
だから、女性も自分と同じように働いている家庭であれば、社会的な見えない価値観により、仕事の都合で妻の方にどうしても育児や家事の比重が拠ってしまうことに対して、罪悪感を感じる夫も多いのではないか?と感じています。

自分は3歳と1歳の子どもがいるので、保育園から帰宅後の食事〜お風呂〜寝かしつけまでの一連のバタバタ時間に、できるだけ自分も家にいたい気持ちがあります。あえて空気を読まずに帰宅して、どうしても仕事が残った場合はテレワークで子どもが寝た後にやるようにしてますが、「あえて空気を読まずに帰宅する」と感じてしまっているところ自体に見えないハードルがある。本当に「働きやすい職場」であれば、そんなことイチイチ気にしなくていいはずです。

ましてや、定時で帰ること自体、上司より先に帰ること自体に抵抗がある、みたいな話も世間ではまだあると聞きますから、ここは改善の余地しかないな、と。

ただまぁこれも即効薬=何かの制度が必要、というのではなく、そういう価値観の人をマジョリティにしていくしかないんですね。
時間が経てば人口構成比率が変わり、自然体で改善されていく面もあると思いますが、有限な人生の貴重な時間です。とても悠長には待っていられません。

変化を加速するためには、「働きやすさの向上」をテーマに職場で議論する機会を作ったり、こうして自分の違和感を発信して、共感の輪をちょっとずつ増やしていくしかないのかな、と思ったりしています。

こういう話を色んな現場に行って共有したい。
必要があれば飛んでいきますので、ぜひお気軽にお声がけください。

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