#253 ハレーションは悪か?建設的なコンフリクトを恐れてはいけない理由
いかがお過ごしでしょうか。林でございます。
学生時代も仕事を始めてからも、様々な多くの人たちと色んなプロジェクトを経験してきました。
自分の性格的にリーダーのポジションを担うことが多く、いいチームとそうでないチーム、チームメンバーのモチベーション管理やエンゲージメント向上のようなテーマで、昔から考える機会を多く持ってきました。
学生時代に遡れば、中学生の時には、サッカー部のキャプテンとして当時県内で最弱だったチームを1年で県大会出場まで進めた経験が最初にありました。高校時代には学校祭で1〜3年生から成る50名程度のチームで、高さ5mを超える巨大カメレオン作りの責任者を務めたこと、大学時代には、100人を超えるESSという英語の部活での部長としての組織運営など、昔から色々な組織を責任者の立場で考えるきっかけが持てたことが、今の仕事にも活きているシーンがあると思っています。
そのうちの1つのテーマが「ハレーション」。
ビジネスシーンにおける「ハレーション」は、「この案件をこの組織に持っていくとハレーションが大きいだろう」みたいな感じで、業務や案件に対して、方向性の変更や不測の事態が発生した時に、大きな影響が及んだり、現場の抵抗感が強いと予想される、というシーンで使われる言葉です。
最近では、この「ハレーション」を過度に避ける傾向が見られるのでは?と感じることもしばしばです。なるべく揉め事を起こさないように、本当は言いたいことがあるのに言わなかったり、「みんなで仲良くやることがいいことだ」みたいな雰囲気が過度に認識されて、側から見るとちょっと不自然?と感じられる組織や取り組みって皆さんの周りにないでしょうか。
今日は、「ハレーション」をテーマに、私が普段感じていることを話してみたいと思います。
過度に注目される「意見を否定しないこと」
いつも揉め事ばかりの組織は面倒臭いしストレスが大きいので私も嫌ですが、建設的な議論が行われず、こんな感じでいいよね?的な感じで進む「なぁなぁ」で進むチームも大変いけてません。
よくあるのが、会社の研修などでグループディスカッションの時間になった時に、メンバーが色々と意見を出して、「こんな意見も出ました、あんな意見も出ました」でただ羅列して発表してしまうようなケース。「お互いの意見を否定しないことが大事です」というのが過度に浸透しすぎて、議論の深まりすらないのであれば、私はあまり議論する意味ってないと思うのです。
議論はキャッチボールですから、まずは相手の主張のロジックをしっかり理解しようと受け止める。相手の主張が何か、その根拠となっている事実やデータが何か。それらに対してどのような論拠をもって、その主張に繋がっているのか。この三角ロジックを誤解なく理解することがスタートです。
「お互いの意見を否定しないことが大事」を表面的に受け止めてしまうと、相手の主張だけを聞いて、「ん?その主張は私はちょっと違うと思うけど・・」というモヤモヤを抱えたまま、「なるほど、そう考えるんですね。一方私はこう考えます」みたいな感じで、自分も別の主張を繰り出す、みたいな感じになってしまいます。
これって、表面的には「否定してない」し、みんな意見を言っているから、「ハレーションがないいい議論」みたいな感じに誤解しがちですが、ただ表層的な主張の部分を浅くなぞって終わっているだけの「中身のない議論」ですね。
マッサージでいうと、「そうそう、そこが凝ってるんです!」てところにグッと力が入っていかない、全身を満遍なく優しく撫でられて終わってしまう感じです。15分ツボを押されるのと、2時間ただ撫でられているだけって、後者の方が時間は長くても苦痛ですよね。「ハレーションを過度に避ける表面的な議論」に対しても、同じような苦痛を感じるのです。
いい議論というのは、「主張が違う」と感じた時に、「何を根拠にしているのか」を明らかにして、その根拠となるデータがそもそも合っているのか。あるいは、データなく思い込みだけで議論しているのかを明らかにする作業が必ず伴います。
同じデータに対しても、論拠や前提が異なれば、最終的な主張が異なるので、お互いどの部分に対する前提や論拠が異なるのか、という論点を炙り出し、そこに対してお互いの意見を述べる。これがマッサージでいうツボであり、同じツボを見つけている状態でないと、議論は噛み合うわけがありません。
コンフリクトがあるから、いいものが生まれる
お互いの主張だけをなぞりあっている過程では、いい結論に辿り着くわけが有りません。特にビジネスシーンにおいては、利害関係の異なる関係者の主張が一致することなんてないのが普通です。100%正しい正解なんて存在せず、あらゆるトレードオフの中で、最も大きな全体最適を見つけることの繰り返しです。
私が勤務するIT業界でよくある話は、「技術者の正義 vs 顧客の要求」のトレードオフですね。これは、海外でも国内でも、プロジェクト問わず毎回直面する課題です。恐らく、IT業界以外でも、何らかのモノやサービス作りに携わっている人は直面する課題かと推察します。
お客さんにとっていいものを提供しようとすると、当然コストは嵩む。また、お客さんの要望通りに作ってしまうと、全体としての設計に整合性に矛盾が生じる。
お客さんの要望には出来るだけ答えたいけど、無理してまで答え続けると、技術者側の体力と精神が持たなくなり、結果的にその事業の持続性が失われてしまう。
このような議論では、必ずコンフリクトが起こるわけですが、コンフリクトがあるからこそ、当初は至っていなかった考えや行動に着想し、チームのレベルが上がるのです。「ハレーションを起こすのが嫌」だからと、顧客の要望に際限なく応えていくと、「思考停止したチーム」が出来上がってしまうだけです。
だから、意見の相違があるのは当然だし、一定のコンフリクトがある状態をむしろ歓迎するスタンスが大切。
ただのギスギスした組織にならないために
とはいえ、ただコンフリクトだけが先行する組織は居心地悪いし、心理的安全性も同時に担保されていないと、健全なコンフリクトは生まれません。
ここで大切になってくるのが、マネージャーの強力なリーダーシップですね。
リーダーシップは、全員が発揮するのが大切。でも、組織の方向性を定義する役割にあるマネジメント層は、より強力なリーダーシップの発揮が求められます。
私が特に大切だと思っているのは、2つです。
1つは、「全員で仲良くやろう!健全なコンフリクトを歓迎しよう!」というメッセージを発信し続けること。
チームメンバーがお互いに「健全なコンフリクトにより、より良い成果を生み出すために、この人はあえて反対意見を述べている」という感覚が持てないと、ただ「反対されている」と感じて、論理よりも感情が先に動いてしまうので上手くいきません。だから、全員で仲良くやろう!メンバーが全体最適を常に意識しよう」という雰囲気を常日頃から作っておく価値観を発信することが大切。
もう1つは、「業務外の雑談を増やす」こと。
立場は異なれど、お互い人間ですから、やはり「一緒に食事する」ことを通じて「業務外の価値観を共有する機会」ってめちゃくちゃ大事です。
日中の打ち合わせの場で、どんなに厳しい言葉を言っていても「この人はこういう事情でこういう言い方をしているな」とか「あ、今この人は、自分のメンバーを守るためにこういうスタンスを取ったな」みたいなのも含めてお互いに理解できてくると、これは本当に強い。
真の信頼関係って、表面上の言動だけに惑わされない、こういう人間関係なんだと感じます。
そのためには、業務外の顔を知ることが大事でランチでも何でもいいので、食事の時間を持つことってとても意義があります。
それでは、今日もよい1日をお過ごしください。
ここまでお読みいただき、ありがとうございました!
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