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【今でしょ!note#49】 社会保障制度の成り立ちと変遷 (3/3)

おはようございます。林でございます。

全3話でお届けしている「社会保障制度の成り立ちと変遷」シリーズの最終話です。

第一話では、戦前の社会保障制度の誕生から、高度経済成長下で実現した1961年の国民皆保険・皆年金、1973年の福祉元年における高齢者の医療費無料化、高額医療費制度の導入について説明しました。

第二話では、1975年以降の高度成長終焉後における、老人保険制度の見直し、1985年の基礎年金の創設、バブル崩壊後の共働き世帯の増加などの家族形態変化に応じた社会保障制度の再構築の流れについて説明しています。

第一話、第二話を読まれていない方は、ぜひご覧になってスキしておいてください!

今回は、2000年以降の現在に続く社会保障制度の変遷について見ていきます。


3-1 経済基調変化と構造改革

バブル経済崩壊で低迷した日本経済は、自律的回復軌道に乗ったかのように見えましたが、1997年の財政構造改革法が成立し財政赤字是正を進めようとしていたところで大手金融機関の破綻が相次ぎ、企業・家計の不安感が高まったことから、経済活動は収縮します。
財政再建策はいったん棚上げされ、景気刺激策がとられたものの、景気は回復せず、日本の財政赤字はますます悪化することになりました。

「構造改革なくして成長なし」との考え方のもと、2007年度からの5年間で1.1兆円の社会保障関係費削減の方針が打ち出されます。
一方、人件費負担に悩む企業は正規労働者から非正規労働者への代替を進め、雇用者比率における非正規雇用割合が3割に達するなど、社会保障の枠組みから外れる層の問題が顕在化。2008年のリーマンショックによる低迷もあり、財政構造の悪化は更に進行しました。

3-2 医療費自己負担の段階的引上げ

経済状況の悪化により保険料収入が伸び悩む一方で、高齢化等に伴い医療給付金が伸びたことから、医療保険財政は大幅に悪化します。これを受けて、医療関係制度の抜本改革の検討が進められました。

2003年には、サラリーマンの本人自己負担は 3 割に引上げられ、国民健康保険と同じ給付率となります。高齢者医療制度についても、高齢者自己負担を1割、現役並み所得の場合は3割とされますが、1973年に老人医療費が無料化されてから1割負担になるまで30年を要しました。

老人保健制度は、2008年に後期高齢者医療制度に代わり、後期高齢者を被保険者として保険料を徴収し医療給付を行う独立した医療保険制度になりました。

また、急速な高齢化の進展等により、 2006年当時の国民医療費の約 3 分の 1 を 75 歳以上の老人医療費が占めるようになり、2025年には国民医療費の半分弱を占めるまでになると予測されました。そのため、中長期的に医療費適正化を図る観点から、2006 年の医療保険制度改革において生活習慣病の予防や平均在院日数の短縮など、医療費適正化が推進されます。

3-3 政権交代と社会保障

2009年8月に実施された総選挙の結果、民主党政権に代わります。
新政権下では、社会保障費の自然増から毎年2200億円を削減するとした方針は廃止され、後期高齢者医療制度の廃止、子ども手当の支給などが行われました。

より一層進むと予想された少子高齢社会の中で、子育て世代からの教育費などへの経済的支援を求める声が強くなってきたこと、他の先進諸国と比べ、子育て関連の経済的支援の手薄さが問題視されたことから、2010年に「子ども・子育てビジョン」が閣議決定されました。子ども手当は、その流れで誕生した中学校終了までの児童を対象にした支給です。

3-4 年金記録問題

年金記録の誤りにより、本来受給できるはずの年金額が支給されないという「消えた年金問題」は、2007年以降大きく報道され、国民から極めて大きな批判が起きました。
これは、誰のものか分からない年金記録5095万件の存在が発覚した問題です。
1988年に紙台帳による記録からオンラインによる記録へ移行し、1997年に「基礎年金番号」への統一した際、結婚前の旧姓の記録が残ったままだったり氏名の読みや生年月日が誤っていて入力されたりと様々な理由により納めたはずの年金記録が残っていないことが多数発覚し、杜撰な年金記録の管理の実態が明らかになった出来事です。

実際に記録が解明したのは3000万件ほどで未支給額が2兆7000億円だったことが分かりましたが、2000万件は解明困難ということで未解決のままです。
ということは、消えた年金の総額は4兆円に上ると予想できます。

社会保険庁は、2004年にはグリーンピア問題も起こしています。
これは、年金財源を使い、1980年代までに総額2000億円をかけて全くペイしない年金福祉施設を全国13箇所に作り、うち9箇所は歴代厚生労働大臣経験者の地元に巨額の建設費を落とし、天下り先にしていた年金の無駄遣い問題です。
建設費2000億円だけでなく、借入利息や管理費で総額3800億円を政治家、天下り役人が溶かしたのです。
グリーンピアの他にも、年金積立金の運用や住宅融資を手掛け、トータルで4兆円を超える損失を出しています。

その他、年金保険料の着服も発覚した社会保険庁は2010年に解体され、年金業務は日本年金機構へと引き継がれました。

直近の課題は「社会保障を支える人材の確保」

2022年に公表された厚生労働白書では、「現役世代が急減していく人口構造を踏まえた医療・福祉サービスの提供の在り方」についてはじめに言及されています。

https://www.mhlw.go.jp/wp/hakusyo/kousei/21/dl/zentai.pdf

こちらを題材にした記事はまた別途まとめておきますが、社会保障の担い手である医療・福祉分野の就業者は2021年で全産業の13.3%で、8人に1人となっています。それでも、2040年の人口構造を踏まえた必要人員1070万人に対して、楽観シナリオに基づいたとしても96万人の就業者が不足する予測が立てられています。

そもそも、高度成長期の人口ピラミッドや経済構造を前提とした社会保障制度が、現在も維持できるほうが無理な話です。
しかし、団塊世代が全員後期高齢者入りするのは2025年となり、政権もこのボリュームゾーンの支持は当然意識するでしょうから、直近で年金支給年齢のさらなる引き上げや、社会保険料の負担対象の見直しなど、社会保障制度に抜本的な変更が入ることも考えにくいです。

そうなると、やはり自分で知識を身に付けて、国の制度にできるだけ依存しない形で自衛していくしかありません。
現在の国民皆保険・年金の仕組みを理解して、真に必要な対策は何かを考える記事も別途どこかでまとめておきます。

それでは、今日もよい1日をお過ごしください。
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林 裕也@30代民間企業の育児マネージャー
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