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#251 退職理由から考えるマネジメント研修の課題

いかがお過ごしでしょうか。林でございます。

先月、元横浜市役所で、現在コード・フォー・ジャパンのスタッフをされている石塚清香さんが、「地方公務員退職理由アンケート」を取られていました。

現役地方公務員と元地方公務員の方を対象に「地方公務員の退職理由」の傾向を分析し、「じゃあ、どうしようか」を考える目的で個人で作成されたアンケートで、6/18〜28の期間だけで、1,085件もの回答が集まったそうです。

アンケート結果を見ていくと、大変興味深い傾向が見えてきます。
私は民間企業で管理職の立場で仕事をしており、社内でも社員満足度調査を毎年行っていますが、全国の地方公務員と同じような傾向が見て取れる部分と、地方公務員ならではの傾向が出ていると感じられる部分が相対的に見えてきました。

地方公務員だけではなくて、民間企業でも同じような傾向がありそうだと感じた部分を中心に、私自身が感じている課題についても触れながら、ご紹介していきたいと思います。

企業のマネージャー育成における課題は、私の課題感のど真ん中であることもあり、特にフォーカスしていきます。


退職理由の傾向

まず、現役公務員の方を対象にした「退職を考えているか」という設問に対する回答状況です。

出典:地方公務員退職理由アンケート結果 P21
https://note.com/sa_ya/n/ndbd479df98a6

本設問の総回答数764に対して、「考えていない」と回答したのは205ということで、約74%の現役公務員の方は「何かしら退職を考えてはいる」ということが分かっています。

理由は「組織が旧態依然のままで変革が期待できそうにない」が464票で第一位「地方公務員を続ける意義を見出せなくなった」が332票で第二位、「異動先が不透明でキャリアパスの見通しが立たない」が310票で第三位、「マネジメント力のない上司の下で働きづらい」が279票で第四位、「業務内容に対する不満」が267票で第五位となっています。

出典:地方公務員退職理由アンケート結果 P26
https://note.com/sa_ya/n/ndbd479df98a6

第二位の「地方公務員を続ける意義」は、民間であっても「勤務先の職場で働く意義」と読み替えることができると思います。第三位の「異動先が不透明でキャリアパスの見通しが立たない」は、民間だと会社によりますかね。
周囲の民間で働く方を見ている限りでは、「異動先が全く不透明」というのは、民間では少ないケースのように感じています。

もちろん、これまでとは全く別の部署に異動する人もいますが、本人の成長目的で一時的に外の部署に行かせたり、部署内の新陳代謝を上げる目的で、異なる部署間での人材交流という面が強く、全員がジョブローテーションで数年おきに異動になる、みたいなことは行われていません。

全員無理やりローテーション、というのは、元々は幅広い業務経験を積ませて視野を広げたり、組織内に幅広い人脈を形成したりする目的で導入され、現在も運用されているのだと推察しますが、退職を考えている人が7割以上もいて、その理由の上位に「異動先が不透明」が来ているのであれば、このあたりは公務員の人事として見直すところかもしれませんね。

民間に勤務する私の感覚だと、アンマッチな人材配置は即退職に繋がるリスキーな選択肢なので、「全員を数年感覚で異動させていく」みたいな手段はかなり取りにくい、といった印象です。

いずれにせよ、給与や処遇面での理由というよりも、「本業として中長期的なキャリア形成も考えながらしっかりやっていきたいと感じているのに、それが叶わないと感じている」というのが退職検討の上位に共通した理由のようです。

組織マネジメントによる理由が大きい

で、もう少し私なりの分析に踏み込んでいくと、ジョブローテーション的な部分は現場のマネージャーだけではどうしようもない部分もあると思いますが、その他については基本的に「組織マネジメントの問題」だと見ています。

組織が旧態依然と感じているのは、現場管理職の行動で変化を起こせる部分がかなり大きいと思います。仕事の意義を定義するのも管理職の仕事だし、第四位は「マネジメント力がない」なんて直接的に言われてしまっているし、第五位の「業務内容に対する不満」も、アサインのミスマッチが起こっているか、上司部下のコミュニケーション不足に思えてならないのですよね。

基本的に、どんな仕事であれ、「楽しくない仕事」や「理不尽な仕事」というのは一定存在しているし、業務内容だけを見て100%全てのプロセスでやり甲斐がある、みたいな仕事はないと思っています。

最先端AIを駆使した仕事でも、地球環境保全に寄与するダイナミックな仕事でも、必ず面倒臭い事務手続があったり、気が合わない取引先の一つはいるでしょう。
利害関係の異なる人間同士が協力して何らかの成果を上げていくのが仕事なので、「調整」が不要な仕事はないですし、その思うようにいかないものをどう乗り越えていくか、というところに仕事の本質があると考えています。

そうなるとどんな仕事でも「業務内容に不満がある」のは当然で、それが「退職理由」に繋がるとすれば「やってることは大変だけど、一緒にやれてる仲間が好きだからやれてる」みたいな要素が弱いと思うんですよね。

マネジメント意識の少ない管理職問題

私が一番ヤバいと感じた点は「部長以上」「部長」「課長」でも「組織が旧態依然のまま」や「地方公務員の意義を見出せない」という理由が上位になっていることです。(下図赤枠内)
いやいや、旧態依然な組織を変えたり、仕事の意義を作るのが、マネージャーのど真ん中の仕事だから!と。

出典:地方公務員退職理由アンケート結果 P31
https://note.com/sa_ya/n/ndbd479df98a6

そのように答えた方自身をどうこう言うつもりはなく、ここに組織のマネージャー育成の構造的な欠陥がよく表れていると感じます。
そして、これは公務員だけではなく、民間でも一定見られる傾向ではないか?と。

特に、年功序列の企業では「ある年齢に達した人を順に管理職候補にしていく」みたいなことが一般的だと思いますが、30過ぎてからプレイヤーとして能力発揮している人の中から管理職候補見つけて、社内でマネジメント研修を数回やって・・では、なかなか管理職の育成はできないです。

欧米では、若い頃から、将来の幹部候補、マネージャー候補を見出して、実務の中でマネジメント経験させて研修も受けさせて、30代には役員にしていくみたいな組織も少なくないですよね。
日本でも民間では進んでいるところもある印象ですが、いわゆるJTCではまだまだ一般的になっていないと感じます。

プレイヤーとして能力発揮できる力とマネジメント能力はまた別だし、ある程度プレイヤーとして成功体験を積んできた人が、管理職になってからの数回の管理職研修で何が変わるのか、疑問が大きいです。まだ、思考がある程度柔らかいうちにマネジメントについては学んだ方がいいですよね。
会社の未来のことを仲間で議論する機会も、私は管理職任用試験を受けるタイミングで真剣に考えましたが、多少の経験の差はあれ、もっと若い頃から議論を深めておいてもいいんじゃないかと考えます。
というか、先が長い若い人ほど、真剣に考えられる側面もあると思うのです。

また、マネージャー研修は、本来他社とセットでやる方が効果的だと感じます。管理職の重要な仕事の一つは、外のリソースを上手く活用したり、外と調整することで、自分のチームの仕事がよりスムーズに進むのを支援することですから、外とのコミュニケーションを主軸に置いた研修の方が良いはずです。
外のマネジメントスタンスを知ることで、自組織のマネジメントの課題も自ずと見えてきますよね。

MBAなんかは、そのような機会の代表例だと思いますが、自分の会社の中だけで行うマネジメント研修ではなく、業界横断で、他業界横断で、行政と民間をクロスさせて、とかのほうがワクワクしてくると思いませんか?

組織が元気になるには、現場管理職が元気になるのが最も効果的で、マネジメントのワクワク感を醸成する試みが、今一番必要なことでは?と考えています。

それでは、今日もよい1日をお過ごしください。
ここまでお読みいただき、ありがとうございました!

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