見出し画像

#195 すべての人間は芸術家である

いかがお過ごしでしょうか。林でございます。

今日は、ドイツのアーティスト、ヨーゼフ・ボイスが提唱した概念「社会彫刻」の考え方に基づき、話をしてみたいと思います。

以前解説した「自分のモノサシを持つ」ことの重要性とも通ずる話になりますが、ここでの考え方は「すべての人間は芸術家である」ということです。

日本では戦後の高度経済成長、バブル崩壊以降の低迷期を経験し、世界では人類史で初めてと言っていいほどの「全地球規模での経済成長」が進展しつつある現代です。
私たちは「売上・利益」や「生産性」、「資本回転率」などの数字で計測されるものを追い求め、あらゆるものを計測可能な指標とするのが良いことだ、という価値観が刷り込まれています。

「アーティスト」や「芸術家」と聞くと、そういう世界とは別の、「世界のごく一部の人間」を指す言葉であり、「自分には関係がない言葉」というように感じている方も多いと思います。

しかし、冒頭ご紹介したボイスの「すべての人間は芸術家であり、芸術家であるならば、それに相応しい美意識を持つべし」という考え方は、このような時代だからこそ、より重要な価値観になりつつあると考えます。

なぜ、私たち全員が芸術家マインドを持って、それに相応しい美意識を鍛えていく必要があるのか。最近読んだいくつかの本の考え方もご紹介しながら、解説していきます。

論理と分析だけでは立ち行かない世界

自己実現、自己表現欲求の高まり

ビジネスの世界では、これまで「論理」や「分析」が最重視されてきました。過去のデータに基づいて分析し、そこにロジックを組み立てながら会社の戦略を立てたり、日々の意思決定を行ったりということが当たり前だったと思います。

確かに、「論理」や「分析」といった手法が有効な面もある一方で、いよいよそれだけでは戦えなくなりつつあるのが、ちょうど現代な気がしています。
先進国ではモノが飽和し、人々は「物理的なモノを獲得する目的」よりも「より自分らしく日々を過ごしたい」とか「自分の強みを活かして生計を立てたい」というような、より個人の自己実現、自己表現欲求を満たしたい、という世界に変化しつつありますね。

「論理」や「分析」ツールを使いこなすコンサルタントが増えてきたように、「論理」と「分析」によるアプローチが得意な人は相対的に過去より増えてきました。「論理」や「分析」は、基本的に「過去のデータ」をインプットにして、そこに何らかの洞察を加えてアウトプットをするということですが、同じような手法を学んだ人が同じデータをもとにアウトプットしようとすると、同じような正解が導き出されます。

しかし、これは「自己実現、自己表現欲求」を満たすことにより価値を置く人が求めているものとは真逆のものです。
「自己実現、自己表現」では「自己」に価値の主眼が置かれていますから、他と同じような、大衆化された正解ではなく、よりユニークで「その人ならでは」のオリジナリティにより高い価値が認められるからです。

技術進歩にルール制定が追い付かない

また、AIに代表される各技術進歩は、これまでに類を見ないほどのスピードで進んでいます。私は2009年あたりに就職活動をしていましたが、毎日大阪の御堂筋通りを歩きながら「外出先から企業からの選考の連絡を簡単に見れたらいいのに」と思っていました。

ちょうどそのタイミングが日本でもそれまでのガラケーからスマホに置き換わりつつあり、それまでのガラケーだとかなり見づらかったyahoo mailがスマホで一気に見やすくなって驚いたのを今でも覚えています。
まさしく、毎日不便に感じていて、こうなったらいいな~と考えていたことが、実現された瞬間でした。
あれからまだ15年程度しか経っていないのに、今では場所を問わず働くことも一般的になり、議事録や資料も機械が作れるようになりました。
一時期、ブロックチェーンやDLT(分散台帳技術)関連の仕事にも携わっていましたが、このような技術も半年、1年といったスパンでできることがかなり変わっていくため、全くルール整備が追い付かないんですね。

で、そうなると「何が良くて、何が悪いか」の判断基準を、時間をかけて誰かが作ったルールに求めることができなくなります。そこで、自分自身の価値観や美意識に基づき、判断・決定していくことがより重要になってくるのです。

リーダー、全ての人に求められる美意識

こちらの記事でも触れていますが、リーダーには言葉や行動で人をワクワクさせて、自分たちの活動に「意味」をもたらす力がより重要になってきています。

これに加えて、リーダーが「より人々の共感を得る美意識」を鍛える、ということは、ビジネスを引っ張っていく上でもより重要です。

正解がルールブックに書いてあるとは限らない現代において、この事業を進めるべきか、やめるべきか、を決める際に、「どれだけ社会に対してGoodな価値をもたらすものであるか」を自分の頭で考えて、より共感できる方針を掲げて進もうとしているところに人が集まってくるからです。

そして当然、美意識が求められるのはリーダーだけではなく、全ての人です。自らの頭で「物事の良しあし」を考えて、自らの行動を決めていかないと、他人に自分の人生を委ねて「生きているけど、生きていない状態」と同じだからです。

健全な美意識を鍛えるためには、様々な人の営みを理解するため自分の周囲の環境以外の人と話し、自ら色んな世界を見る活動が必要です。しかし、2023年の日本人のパスポート保有率はなんと17%。2018年度文化庁の「国語に関する世論調査」では、「1か月に本を何冊読むか」という質問に対して「1冊も読まない」と答えた人が全体の47.3%に上っています。

このように、自らの美意識を高め、世界を知ることの重要性を理解している人が多いとは決して言えない状況にあるのは、外見的な暮らしは豊かになっている一方で、内面はスカスカの人が増加しているということです。
これは、とても危機的状況にあると思います。

全員が社会彫刻を担う芸術家

私たちの生活の過ごし方や、取り組むプロジェクトを「作品」と捉える視点が重要です。
教育活動、経済活動、政治活動、環境保護活動も含めた、日々の全ての私たちの行動が積み重なり、100年後、200年後の世界を作りあげていくのは事実で、その意味で私たちは全員が社会彫刻を担う芸術家です。

そのように考えると、「オッサンが駅員を殴った」とか「客が汚い言葉で従業員を罵倒した」みたいな話が、いかに美意識の欠如した、レベルの低い話なのかと考えさせられます。

世界はロクでもないものだと知りながら、それをどうより良いものに変えていけるかを諦めずに考え続けること。希望を失わないことが大切です。

自分が社会の芸術家の一人として、いい作品を作ろうと思えば、自ずと日々の過ごし方が変わってきます。
自分たちの日々の行動は、大小あれど全て未来の世界に繋がっています。
せっかくなら、後世に誇れる日々の過ごし方を心がけていきたいですね。

それでは、今日もよい1日をお過しください。
ここまでお読みいただき、ありがとうございました!

もし面白いと感じていただけましたら、ぜひサポートをお願いします!いただいたサポートで僕も違う記事をサポートして勉強して、より面白いコンテンツを作ってまいります!