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「この中国の方って男性?女性?」―—性別を名前から判断すること(中国の人編)

今回、性差という繊細な問題をあつかいますが、その良悪や功罪はとわないこととしています。不快におもわれたかたがいらしたらごめんなさい。

 中国のかたがたとよく接していることもあり、何度か題名にあるような質問をみみにすることがありました。

 そんなわたしは、おりにふれてかんがえていたことがあります。それは、ひとのなまえと性別の関係です。

 なまえからみえる性差(男性らしさとか女性らしさとか、社会における、性別にもとづいたみられかた、みかたをさします)の度合といってもいいかもしれません。

 たとえば、日本語では「花子」といったら女性、「太郎」といったら男性、という風に(一般的に)おもわれているでしょう。

 英語でもおなじように、たとえばアメリカのひとであれば(それが何「系」であれ)、「ジョージ」なら男性、「アグネス」なら女性というようになるでしょう。

中国のひとのなまえ

 ところが、です。中国のひとのなまえから性別を判断するのはとてもむずかしいのです。

 たとえば、もっともおおいといわれる「张伟」さんをみてみましょう。日本の漢字にすると「張偉」となり、よみは「ジャン・ウェイ」さんです。

中国の名前事情について、くわしい調査がなされています。たとえば「张伟」さんと同姓同名のひとは30万人ちかくいるそうです。

 しかし、ここから性別を判断するのはむずかしいです。性別をかくす、あるいは性差をもたないなまえといっていいのかもしれません。

 ほかにも名前に「男」とはいっているものの女性だったり、最近は男女ともに「梓(ズー)」という字が人気(友人もキレイな「音」だと言っていました)だったりと、名前をみただけでパッと性別を判断するのがむずかしいことがわかるとおもいます。

 このように、おなじように漢字をつかっているようにみえて、中国の漢字とひととの関係には、なにかおもしろいものがあるきがしていました。

 でも、ながらく中国にたずさわってきてはいますし、何度もしらべようとしたことはあるのに、このことは長年どこかよくわからないままにしてしまっていました。

 今回、留学先の授業で先生のはなしをきき、その疑問がすこしとけたので、わすれないようにかいておこうとおもいます。

 あわせて、中国の「姓」についてもすこしおはなしできればとおもいます。

女性と判断されることがおおいなまえ

 はじめに女性によくつかわれるらしい漢字を紹介します。

 先生によると、

妮、娜、媛、婷、婉、菊、梅、芳、芬、莉、俊、麗、愛、娟、雅、潔

などがおおいようです。

 おちついた、どこかやわらかいものがおおいですね。

 日本では「雅」は、福山雅治さんにつかわれていますし、「俊」も男性につかわれていることがおおいとおもいます。

 ですがやはり、わたしの経験からは、たしかに知人の中国の女性のなまえにつかわれていることがおおいですね。

 実例をあげますと、

呉暁莉、鄧麗君、金妮婭

 などです。

 ちなみに、「鄧麗君」は世界的に有名かつ偉大な歌手「テレサ・テン」のことです。

男性と判断されることがおおいなまえ

 つぎに男性によくつかわれるらしい漢字を紹介します。

 ふたたび先生によると、

虎、豹、大、高山、万里、海、宏偉、雄、飛、建功、弘業、杰、天、剛、剣、鋒、利、強、勇、勝

などが男性によくつけられるなまえだそうです。

 なんとなくですが、雄大なもの、強力なものがこのまれているきがします。

 実例をあげると、

王海涛、申小龍、胡一虎

 などですね。

 やはり、あかるさと、ちからづよさ(Masculinity)がもとめられています。

 ひとつ、参考にしておくといいかもしれません。

姓について

 ところで、女性のなまえにつかわれる漢字の例でもあげましたが、「女偏」の漢字がおおいことにきづくかとおもいます。

 そもそも、「姓」という漢字それ自体が「女偏」ですよね。

 これは、中国でもっともふるいタイプの姓が女性、とくに母親と関係しているからだ、といわれています。

 どういうことかといいますと、むかし、一族・ひとつの集団内でひとを区別するときには、そのひとがどの母親からうまれたかが重要だったそうです。

 これを「母系」ともいいますが、漢字をつくったひとたちは、そうしてひとをよびあうことで、たがいを区別していたわけですね。

 代表的な女偏の姓をあげると、

姜、姚、姒、嬀、嬴

などです。

 たとえば、ここ数年非常に人気のある漫画「キングダム」でえがかれている時代は春秋戦国時代(前771~221年)ですが、のちの始皇帝である主人公のなまえは「嬴政」で姓は「嬴」ですね。

 また、全国を統一したこの秦王朝は「嬴」一族が皇帝としておさめることになりますが、そのまえに滅ぼされた周王朝の一族は「姫」姓でした。

 姓と母親がおおきく関係していることは、中国の人間社会の特徴をかんがえるうえでも、おおきなきづきをあたえてくれるはずです。

 性別による役割の分担が、なまえのつけかただけではなく、なまえそのものの登場にも関係していたことがわかりました。

中国のひとのなづけかた

 漢字を表意文字とみる日本ではみおとされがちですが、そもそも中国では漢字は「音」でもあります。

 よくいわれるのは、「形」と「音」と「義(意味)」の要素が密接にかかわることで、漢字がなりたっている、ということです。

 ですから、名前をつけるときに、漢字の「形」よりも「音」つまり、きいてここちよいか、なども重要になってくるわけです。

 ここではこれ以上とりあげませんが、いずれにせよ、中国のなまえのつけかたと性差はひとつの重要なテーマであり、今回、あらためて長年かかえていた疑問のひとつをとけた気がしてうれしかったです。

 これから、メールの呼称にまよったときなども、おおいに参考にしていきたいとおもいます!





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