【53】noteの有料マガジンを1年以上運営してみて分かったことを書く (1)コンテンツの作り方

本マガジンの運営が始まってから、1年ほどが経過した。

「教科書」と銘打っているが、どちらかと言えば、本マガジンは「理論」や「一般論」の公開を目的としていない。

むしろ我々がメディア運営やライティングの仕事をどう「実践」しているかについて記述しており、メディア関係者や、ライターを読者として想定している。


noteマガジン開始の経緯

本マガジンを開始する構想は数年前からあった。しかし想定する読者層が極めて限られていることが理由で、Books&Appsには掲載していなかった。


Books&Appsはテクニカルなメディアではない。あくまでもオピニオンを通じたエンタテインメントを主としたメディアである。
したがって「メディア運営/ライティング」という狭い領域の記事を掲載することには向いていないと判断した。

かと言って他のプラットフォームにコンテンツを掲載するメリットはない。
コンテンツは集客の効率という観点からは、1箇所に集約したほうが良いからだ。


しかし、すこし前からnoteでは「有料コンテンツ」が一般的になってきている。

となれば、話は変わる。

Books&Appsでは読めない専門的な内容の記事を、マガジンとして運営することは、そこそこ合理的だろう。


特に「有料」で運営することには収益以外のメリットもある。
それは「プロ」だけに対して発信できる点だ。つまりフィルタリング機能である。

プロの方々向けのマガジンであれば、彼らはこれを経費にできる。
また、彼らは文献に対して費用を惜しむことはあまりない。

BtoC向けであれば、数百円と言う金額でもそこそこ重たいが、むしろBtoB向けは「安い」値付けは逆に信頼感を損なう。


また、このnoteのコンテンツは、弊社では社内向けに「教育用の資料」「標準化資料」として公開されており、メンバー間で共有されている。

したがって事実上、このnoteが弊社のBooks&Appsというメディア、および当社が他社のオウンドメディアを運営する際のマニュアルの一つとなっているので、そういう意味でも、マガジンの運営に投資する価値はある。


そこで今回は、noteを企業のPRのとしての利用や、ライターのポートフォリオとしての利用を考える方向けに、noteの利用方法について記述する。


特に、自分自身で運営してみて、ある程度汎用性がありそうな、以下のポイントについて、我々なりに持っているノウハウを何回かに分けて、書いてみたい。

今回は【コンテンツについて】である。


【コンテンツについて】

1−どんなコンテンツが売れるのか
まず核心の「どんなコンテンツが売れるのか」という話だ。

マガジンを運営する上で知っておかなければならないことは面白さ/質の高さと、お金が出るかどうかは無関係だということ。

「モノが良ければ売れる」と言う職人気質の方々にとっては馴染みがない感覚だろうが、これはマーケティングの観点からは常識である。


面白さと質の高さに関係があるのは、購読の継続率である。コンテンツの質は言うなれば、購読を継続してもらうための必要条件に過ぎない。

したがって「買おうかな」と思っていただくことと、「継続しようかな」と思っていただくことは、全く別である。


話を戻そう。「どんなコンテンツが売れるか」である。

参考になるのが、フォロワー数がnoteの中でもトップ層に位置する方々の情報だ。
とはいえ、売上を公表することはnoteの規約で禁じられているので、有料会員数を公開している方々から推測するしかない。

例えばユーザーローカルのnoteフォロワー数ランキングを見ると、上位陣の顔ぶれが並んでいるが、実は最もフォロワーを集めている「けんすう」氏でも8万フォロワー。Twitterなどに比べると、かなり少ない。


これが何を意味しているのか。
つまりnoteというのは「マニア向け」のサービスなのだ。
もう少しあざとい言い方をすれば「インテリ向け」。

結局の所、文字を読みたい人はそう多くはない。Youtubeのほうが本質的にはユーザーの裾野は圧倒的に広いのである。

そしてこれは、本質的に「本を買う層」とほぼ同一である。つまり「本で売れているもの」がnoteでも売れる蓋然性が高い。


では、どんな本が売れているのか。アマゾンのランキングを見てみよう。

スクリーンショット 2020-09-01 22.10.12

一目瞭然だが、売れているのは「ライトノベル」「ビジネス書」「ハウツー物」「写真集」である。

この時点で「エッセイ」「小説」は売り物としては厳しいことがわかる。
noteは「ライトノベル」や「写真集」をメインのコンテンツに据えていないだろうから、結局の所、noteで売れるのも「ビジネス書」と「ハウツー」ということになろう。


これは、実際のnoteの有料会員の数値を見ればすぐに分かる。

引き合いに出すのは大変恐縮なのだが、例えばbar bossaのマスターである林さんという方。

57000人のフォロワーがいる。なんとnoteの全フォロワーランキング30位という、noteで大変成功している方だ。


そして実は、林さんは「noteではじめる 新しいアウトプットの教室」という本(prime会員ならタダで読めます)のなかで、購読者数を公表している。

スクリーンショット 2020-08-31 0.07.35

上のように、月額300円のマガジンで、1000名の購読者を集めていると述べているが、売上にすれば約30万円/月だ。

これは結構凄いことであり、印税換算すると「本」を出すよりもnoteのほうが遥かに稼げる可能性が高いと言ってよいだろう。


しかし。
単純に比べると、身も蓋もないのだが、実は本マガジン(webライターとメディア運営者の、実践的教科書)の売上のほうが大きい。

私のアカウントはフォロワーが1300名ほどで、林さんの1/50である。が、それでも現時点では、売上はこちらのほうが大きいのだ。


これが何を意味するか。
要は林さんほどのフォロワーを抱えている方でも、「マガジンの扱うジャンル」が売上を上げにくいものであるため、収益性がそれほど高くないのである。

もちろん、林さんは「小説家になりたい」と表明しており、マガジンの内容はエッセイや日記が中心、そしてなにより「特に儲けようと思っていない」だろう。実は私も林さんの文のファンである。


でも、読者が「お金を出すかどうか」はそれとはあまり関係がない。
それが商売というものだ。

そもそも「エッセイ」や「小説」は村上春樹クラスとの競合になるので、お金を出してもらうのはかなり難しい。
しかも、読む前に「面白さ」を判断するのが難しい上に、安価なエンタテインメントが他にたくさんある。

だから、純粋な文学やエッセイで「売る」ということを目的とした場合には、不利である。


では「売れる」のは何か。
それは、身も蓋もないが、Amazonの傾向から分かる通り「金銭的にすぐに回収が見込めそうなネタ」である。

単純に言えば「マーケティング」「集客」「投資」「転職」「SNSのハック」などのネタ。

もしくは少し前に「noteで稼ぐ方法」などの情報商材が乱立したが、これも結局「金銭的に回収がすぐに見込めそうだった」からである。
(現在それをやると、運営からBANされるし、評判が傷つくので辞めたほうがいいが。)


結局、回収が見込めそうなネタであれば、人はお金を出す。それは「消費」ではなく「投資」であり、心理的に別会計なのだ。
だからビジネス書や投資本は、相変わらず売れるのである。

例えば、広瀬隆雄さんという方が、投資情報を扱うMarket Hack Magazineという有料マガジンを発行している。月額2100円と高いが、こちらの方は「金銭的な回収が見込めそう」なので、遥かに売上は大きいだろう。


2−ビューを集めるコンテンツと、購読者を集めるコンテンツは別
では、次の話題だ。

私はPR記事をよく書く。その経験から言うと「ビューを集めるコンテンツ」と「買ってくれる人を集めるコンテンツ」は全く別である。


例えば数百、数千も「いいね」を集めた記事なら、さぞかし有料会員もたくさん入ってくれるのだろう、と思う方が多いかもしれない。

でも、そうではない。
下は、実際の本マガジンの実際の全期間のビュー数のスクショである。

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ビジネスマガジン「Books&Apps」の創設者兼ライターの安達裕哉が、生成AIの利用、webメディア運営、マーケティング、SNS利活用の…

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