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【36】「書けない人」はなにが問題なのか。

さて、「書けない」という状況は、読み書きを習ったことのある人であれば、ほぼ全員が感じたことがあるのではないでしょうか。

小学校の作文に始まり、日記、手紙、ブログ、SNSへの投稿まで、
「書けない」という悩みは、「文章」が大きな役割を持つ現代では深刻な課題です。


事実、2018年の、OECDによる 生徒の学習到達度調査(PISA)において、
日本の子どもたちは
” 読解力の自由記述形式の問題において、自分の考えを他者に伝わるように根拠を示して説明することに、引き続き、課題がある ”
(出典:https://www.nier.go.jp/kokusai/pisa/pdf/2018/01_point.pdf
と報告されています。


しかし、なぜこれほど多くの人が「書けない」で悩むのでしょう。

そこで、様々なシーンでつぶさに「書けない」を観察すると、そこにはいくつかの段階が存在することがわかります。

それが、以下の事項です。

レベル1.書きたくない
レベル2.考えてない
レベル3.知識が足りない
レベル4.表現力、語彙力が足りない
レベル5.「惹きつける文章」を書けない

なお「レベル」という表現は、書き手の文章のレベルを示しているのではありません。

ひとつ下のレベルをクリアすると、やっと次のレベルの話に取り組める、という「書き手の発達の段階」を示しています。


「書く」は一気にレベルが上がるのではなく、段階的な発達をします。

したがって、上から順を追って見ていただき、「書けない」と悩んでいる方は自分がレベルいくつで止まっているのかを判断していただくと良いと思います。


レベル1:「書きたくない」人たちへ。

「そもそも、書きたくないのに無理やり書かされている」との状況は各所で見受けられます。
例えば、以下のような場合です。

・会社の指示だから
・お金もうけのため
・キャリアアップに「発信が重要」と聞いて

ただ、全否定はしませんが、子供はともかく、
大人が「書くのは嫌いだけど、仕方なく書く」のは、あまりおすすめしません。

なぜなら「書く」はスポーツやプログラミングと同様に、それなりのレベルで行うには「長期間の練習が必要な技能」だからです。


正直、大人が真面目に取り組んでも、それなりの成果が出るようになるためには、数年かかります。

プログラミングの初心者が、実務レベルで使えるようになるスキルを身につけるためには何年も地味な修練が必要です。
ですから、ほとんどの取り組みは無駄になる。

同様に、最低限「メールが書ければ良い」「チャットができれば良い」という人に、無理やり記事を書かせても、おそらく時間の無駄です。


「SEO対策のため」と無理やり記事を大量生産している人も見受けられますが、長期的にはGoogleがそのような記事を上位に留める可能性は低いため、費用対効果は合わないでしょう。

もちろん「無理やり書いた記事」がバズることもほぼありません。


そして、本質的に、「書きたくない」は、上で紹介した「国語力」、あるいは「文章術」の範囲の外にあるため、その枠組では解決が不可能です。

「書くのが楽しいかどうか」は、才能や性格、環境、状況に依存するので、あまりコントロールできないからです。


もちろん、だからといって「発信するな」と言っているわけではなく「書く」以外にも、動画や絵画、写真など、表現手法はいくらでもあります。

もし、いくつか記事を試しに書いてみて、「私にはどうしても書くことが楽しめない」と、行き詰まりを感じるなら、動画や絵画で発信するなど、代替手段を考えたほうが良いでしょう。



レベル2:「考えてない」人たちへ。

書くのが少しでも楽しい、と思った方は、次の段階に進めます。

少し前、雨宮紫苑さんが次のような記事を書いていました。

「なぜ」を知りたい人間にしか、文章は書けない。

文章を書けない人はきっと、自分がなぜそう思うのか、その理由に無自覚だ。
だから、ことばで説明しようとしても、「だってなんとなくだし……」となってしまう。(中略)

もしわたしがAちゃんのように「書けない」状況だったら、「それはなぜか」を考える。考えて考えて考えまくる。

書けないことで困っている人、苦手意識をもっている人は、テーマに対して「なんで自分がそう思うか」をじっくり考えてみることをおすすめしたい。
そうすればしぜんと、自分が伝えたいことが見えてくると思う。

結局のところ文章は、「わたしはこういう理由でこう思います」に行き着くのだから。

一言で言えば、「なぜ」を追求しないと、自分の考えがまとまらない、結果的に「書けない」となると雨宮さんは主張しています。


あるいは、FPの中嶋よしふみさんも、同様の主張をしています。

漫画「ドラゴン桜」の国語教師に学ぶ、読まれる文章の書き方。

ドラゴン桜では優先席の課題に先立って、国語教師の芥山が生徒を町に連れ出します。そこで英語や中国語、韓国語で書かれた駅の標識を見せて、なぜこのような標識があるのか? と問いかけます。生徒がそりゃ日本に来る外国人が増えたからにきまってるじゃんと答えると、ではなぜ外国人が増えたのか? と更に問いかけます。

なぜなぜってそんなのどうでも良いと生徒が答えると、「だからあなたはバカなのだ!」と指摘されてしまいます。

駅の標識のように、表に現れる現象は誰でも目に入ります。ニュースを見れば何が起きてるかも分かります。今ならコロナウイルスが原因で様々な問題が起きている事は小学生でも知っています。

ただ、そこからさらに深掘りしてなぜ? と考える事がキャッチボールのスタートです。

彼らの「突き詰めて考えないから、書けないんですよ」という主張には、一定の説得力があります。


ひどい言い方をすれば、ドラゴン桜の登場人物のように
「理由なんて、どうでもいいじゃん!」と言ってしまい、
「だからあなたはバカなのだ」
と指摘されてしまうような人には文章が書けない、というわけです。

確かに、記事を書く行為は、実質的には「屁理屈をこねる」のに近いので、
「理屈なんてどーでもいいよー」という人は、記事を書くことができません。


余談ですが、文科省の文化審議会答申において、「書く力」についての具体的な目標は以下のようになっています。

(4)「書く力」について
1)自分の考えや意見などを正確に伝える論理的な文章を書くことができる
①客観的な根拠や理由に基づいて,自分の考えや意見を書くことができる。
②読み手が理解しやすい構成を意識して,文章を書くことができる。
③事実や根拠などを明らかにした論理的な文章を書くことができる。
④単なる感想文ではなく,思考,分析,判断を伴う小論文を書くことができる。

2)伝統的な形式や書式に従った手紙や通信などの文章を書くことができる
①自分の気持ちなどを正確に相手に伝えられるように書くことができる。
②社会生活に必要な実用的な文章をそれぞれの様式に従って書くことができる。
③社会的な関係を踏まえた適切な敬語などを用いて書くことができる。
④言葉を適切に使い分け,その場にふさわしい言葉を用いて書くことができる。

3)様々な情報を収集して,それに基づいて明確な文章を書くことができる
①本やインターネットなどから的確な情報を収集して,文章を書くことができる。
②収集した情報を正確に分析し,分かりやすい要約文にまとめることができる。
③会議や集会などで,分かりやすく説明するための資料を作成することができる。

上の中で「書く力」の目標は3つあります。

・自分の考えを書ける
・手紙、メールを書ける
・情報のまとめを書ける

自分の考え方や意見がなくても、「メール・LINE・SNS」や「まとめ記事」「Wikipediaの記事」は書けます。

しかし、「自分の考え」が入っていない記事は、ニュースや辞書と呼ぶべきものであり、悪くすれば三文ライターの書く「情報の寄せ集め」に過ぎません。


そして、これは「文章力」以前の問題であり、文章術で解決ができません。なぜなら、それらに対しては別途、「意見を持つ」訓練が必要になるからです。

ではどうやって「意見を持つ」のか。

これは、これだけで一本の記事になるくらいのボリュームがある話ですので、また別の機会に書きます。


レベル3:「知識が足りない」人たちへ。

「意見を持っていて、それを書きたい」人は、次のレベルに進めます。

前述した2点は「書く力」ではなく、その前提条件に課題があるケースでしたが、ここからは「書く力」の核心の話です。

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