見出し画像

おかたいイルカやクジラの話を聞いてよ!!

イルカ、クジラが好きです。

自分のまわりにはイルカやクジラ好き多いです。

例えば、あのフォルムとか
例えば、見た目の可愛さとか
例えば、ショーでのパフォーマンスとか

イルカ、クジラの魅力って色々あると思うんですが、自分の一押しの魅力は

“歯”です。

は?

そう、歯です。

歯がたくさんあるとか
歯がまったくないとか
前も奥も同じ形だとか

そんなところが大好きです。

鯨類の “かたい話”というと捕鯨とか思い浮かびますが、今回は鯨類を主とした哺乳類の歯ー硬組織ーについて書こうと思うので、いつもよりちょっぴり話も硬めです。


歯についての話

まず、歯ってなんでしょうか?
歯とはいわゆる咀嚼器官の1つで、生き物によっては道具となったり、武器にもなったりします。

我々ヒトでは乳歯は20本、永久歯は28本生えてきます。(親不知含めると29~32本)

歯の本数は生き物によって変わってきます。
永久歯でみてみると、

イヌなら42本
ネコなら30本
ウマなら40本

といったように数が違います。

歯の種類も前歯や奥歯がありますが、細かくあらわすと、切歯・犬歯・小臼歯・大臼歯があり、これらを歯種といいます。

生き物の種によって、上顎や下顎の歯種の本数は異なりますが、左右側によっての差異は基本的に見られないため、片側の上下の歯種の数を式にして表すことができます。

例えばヒトなら
上の切歯2本、犬歯1本、小臼歯2本、大臼歯2(3)本。
下の歯も上の歯と同様に切歯から2本、1本、2本、2(3)本とあるため、片側だけで14(16)本あります。

両側では数は倍になるため、ヒトの歯の合計は28(32)本となります。

これをもっと分かりやすくするために分数の形で表します。
分子を上顎の歯、分母を下顎の歯として、前から順に切歯・犬歯・小臼歯・大臼歯とする。

するとヒトの歯は

2・1・2・2(3)/2・1・2・2(3)=28(32)

と表せますが、この様式を歯式と呼びます。
(歯式には他にも表記の仕方ありますが、比較的メジャーなもので紹介)

ではイヌ、ネコ、ウマも見直してみましょう。
計算式ではないので、歯の総数の求め方は、分子、分母の数を各々足して、その和を倍にしてだします。

イヌ
3・1・4・2/3・1・4・3=42

ネコ
3・1・3・1/3・1・2・1=30

ウマ
3・1・3・3/3・1・3・3=40

種によって、歯の数が異なることが分かります。
中には、ある歯種が0本の生き物もいたりもします。

アダムとイブ

人類の祖先なんて言われたりするアダムとイブ。
ならばもっと視野を拡げれば、哺乳類にもアダムとイブに値する種がいることになります。

そのご先祖さまから生息環境の違いやそれによる食性の違いにより種が分化してきた、つまり歯の形態や数にも違いが出来るようになったわけです。

このご先祖さまである原初の哺乳類は、トリボスフェニク型臼歯という臼歯をもっており、切断、噛み砕く、磨り潰すという歯の機能を一挙に備える形態をしています。

中心にあるのがトリボスフェニク型臼歯
歯の比較解剖学より引用

この原初のご先祖さまの歯式はというと

3・1・4・3/3・1・4・3=44となります。

この44本の歯の形を様々に変え、数も調整して現在の哺乳類達がいるわけですね。

ヒトの親不知があったりなかったりというのは、この進化の過程の途上にいるからだと自分は考えています。

親不知の先天的な欠損は一般的な事象として世間には受け入れられている雰囲気がありますが、実は他の永久歯の切歯、小臼歯においてもこの先天的欠損が出始めており、だいぶ昔(10年位前)にニュースになったりもしました。
これもまた進化の途中の傾向と考えるとロマンがありますね。
お子さんが永久歯生えてこないとなると親御さんは心配でしょうがないと思いますが。

哺乳類の歯において、形態の変化と歯数の変化(減少傾向)というのは重要なことだと思います。

草食動物は草を食べやすいように歯の形態が噛みちぎり、磨り潰せるように。

肉食動物は獲物を捉え、肉を切り裂きやすいように。

それぞれの動物の頭蓋骨から歯並びを見ていくと、その食性においてどんな風に機能するかが見えてくる気がします。

鯨類の歯

それでは鯨類の歯を、先にあげた歯式から見てみましょう。


バンドウイルカ
18~26/18~26

イッカク
1/0

シロナガスクジラ
0/0

ラプラタカワイルカ
50~60/50~60

どうですか?
先に上げた他の哺乳類と比べて違いがあります。

1つは歯種が4つあったのが鯨類では1つにまとまっていること。

もう1つは合計の本数自体に大きな差があること。

歯種をは1つ?

鯨類の歯の特徴が、この歯種の区別がないことです。
前の歯から奧の歯まで円錐形で同じ形をしています。

そのため、どこからどこまでが前歯で、ここは犬歯、それでこっちから奥は臼歯である。という判別はつきません。

この歯が全て相似な形をしている特性を“同形歯性”といい、我々の歯のように歯の形に違いがあるものを“異形歯性”と呼びます。

この同形歯性の特性をもつ哺乳類は、他にはアルマジロや一部のアリクイなどで極少数派です。

ちなみに鯨類の歯は生え代わりをしないため、抜けるまで生涯そのままです。(これを一生歯性と呼びます)

ピンからキリまで

そしてもう1つ。
歯の数です。

哺乳類の進化の歴史の流れとしては、ご先祖さまの44本を基に減らすものは減らしていくというミニマリスト的なムーブメントがみられます。

極端なものでは歯が全く無い0本の動物。
これには歯がないヒゲクジラ全種が該当しますが、他の哺乳類ではオオアリクイやセンザンコウなどの極少数が該当します。

そして少ないものもいれば多いものも。

減らすのは簡単です。
しかし増やして多くなるというのはかなり珍しく、知っている限りでは鯨類くらいになります。

何故、ご先祖さまの44本よりもさらに多く歯を備えるようになったかについては、昔調べてみましたが未だに分かりませんでした。

歯の数が一定ではない、18~26本というのも謎です。

ラプラタカワイルカの歯の数が、200~240本ととび抜けて多いというのは他に類をみない特徴ではないかと思います。(他のカワイルカも歯の数が多い)

カワイルカじゃなくてもイルカに属するものは歯が多いです。

鯨類の歯の特異性と歯を観ることについて

このように鯨類というのはかなり独特な歯の性質を持ったグループということが分かります。
(鯨類というくくりは大雑把かもしれませんが)

先にあげた事以外にも、咀嚼をせず餌を丸飲みするというのも変わっています。

なんとなくイルカ、クジラが哺乳類の中の異端児であるということが伝わったでしょうか。

博物館などで動物の骨格標本などを見る機会などあるかと思いますが、なかなか全てを理解して楽しむというのはハードルが高いです。

全部分からなくても、どこか一部分でもわかれば楽しい世界が待っているとは思うのですが、、、

その中では、歯というのはかなり入門しやすい部類なんじゃないかなぁと思います。

尖った歯、平べったい歯なんかはどんな役割をするか、その生き物の食性を考えながら観るとより楽しめると思います。

もし、この秋に博物館や科学館、水族館や同人に行かれる際は標本の、若しくは生体のお口の中に注目してはどうでしょうか?

新たな楽しさの発見があるかもしれません。

この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?