見出し画像

【映画レビュー】怪物

「怪物」見てきました。

昨日は休みだったのですが、台風が近づいていて雨風がすごかったです。

「怪物」の公開日じゃなければ間違いなくずっと家にいましたが、映画の中でも台風が来るシーンがあって…ずぶ濡れになりながら無事に帰って来て考えると、昨日見るべき映画だったなと思いました。

さて、感想ですが…

やはりカンヌの脚本賞作品の感想をさらっと書くのは難しいです。

見終わって一晩経って、じっくりと考えたこと書きます。(長いです)

最初の自分の感想は、メッセージ自体は非常にシンプルだなと思いました。

タイトルにもなってるし何が怪物なんだろう?ってところがテーマなのかなって思って見ていましたが

やっぱり、偏見だったり、思い込みから来る善意だったり、決めつけることだったり、違いを認めないことに対する同調圧力だったり、すれ違いに対する無気力だったり、

そういうことだよなって思いました。

でも、なんというか、それはもうすごく多彩にいろんな場所で日常的に訴えられていることでこんなに凝り固まった“怪物”ってまだいるのかな?って思った反面(いるのかもしれません)

やっぱり描き方がすごいなって思いました。

真実じゃないものの剥がれ方の過程が2時間のストーリーとして巧みだったし、

そこに漂う詩性というか、余白のデザインが芸術的だなと思いました。

あとやはり、ラブストーリーとしての愛おしさがちゃんとあるのが坂本裕二!!って感じで好きでした。

今回、脚本賞で話題になっているので坂本裕二さんに注目しがちですが、俯瞰して考えると是枝監督のエッセンスっていうのもやっぱり圧倒的にあって。

子供の純粋無垢さを描く緊張感だったり、家族の歪みからくる孤独とアンモラルなところにある温もりだったり、みたいなものは健在で是枝作品としてももちろん楽しめました。

そして、全てを包みこんでいるのが坂本龍一さんのとてもミニマムな音楽っていう。。。

やっぱり音楽の影響って凄くて、坂本裕二さんも、是枝監督も、世界全体が抱えてるLGBTQ +なテーマも、坂本龍一さんの深い思想から来る音に包まれると静謐で成熟した空気にまとまるというか。

やっぱりこの3人が集まった化学反応がこの映画の一番の見所だと思います。

日本の3人の天才が、この時代の中で真ん中にあるテーマについて「共作して表現した」っていうのがこの映画の味わいな気がします。

一人の思想じゃなく、3人の思想の化学反応としての一つの作品。

余韻も含めた、メッセージ。

多分その、クリエイティブの在り方が新しくて、次の時代のヒントっぽいなって思います。

この映画は誰かと語り合うことで味わいが深まっていく作品だと思います。

そもそもそも一人で完結させるものじゃないというか。

個人的には、「他者理解」とか「違いを認める」とかみたいなことよりも「自分自身を深く知ること」とか「そして自分自身を深く受け入れること」とか「それを自分なりに表現すること」

が“怪物”との折衷案あるいは打開策なのかな、とか思いました。(僕にとってのラストは、そういうメッセージでした)

この作品に限らず何かを体験すると必ずいろんな視点があると思いますが、まず自分の感想を捕まえて、さまざまな意見と共創しつつ、また自分の考えを深めていくっていう繰り返しが大事なんじゃないかなと…この作品を見て一番強く思ったのは、そういうことでした。

時間が経てば、また感じ取れるものが変わりそうな気がします。

以上です。駄文長文を失礼いたしました。おすすめです。

この記事が参加している募集

映画感想文

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?