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ハードワーク信仰から抜け出した話

こんにちは、プレティア・テクノロジーズの牛尾です。ARクラウドという世界中に拡張現実(AR)コンテンツを届けるためのプラットフォームを開発しています。

みなさん、ハードワークしていますか?
今日はぼくが創業以来向き合い続けてきた「ハードワークとは」というテーマについて書きたいと思います。

これについて書くにあたっては、正直思い入れが強すぎて情緒が大変になっています。ですが大好きな漫画『パリピ孔明』の一コマを思い出しつつ、心の内をさらけ出してみようと思います。

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※対象読者
・ハードワークな職場へ転職しようと考えており、不安を感じている人
・創業〜3年くらい経つ経営者
・スタートアップではたらいている社員
・コンサル・投資銀行・弁護士・監査法人・官僚等いわゆるハードワークとされる職場に勤めている人

スタートアップにおけるハードワーク信仰について

まずスタートアップで働くことは、一般的な会社で働くことよりも「しんどい」と言われています。

そのイメージはどこから来るのか?いくつかの背景があると思います。

・Microsoft創業者のビル・ゲイツ氏は「創業期には大きな犠牲をともなう」「休暇が必要だとは思わなかった」と語っている
・Y Combinatorポール・グレアム氏のエッセイ『ハッカーと画家』では、生産性の高いエンジニアが人よりも長時間働くことで、何倍も差をつけられることを説いている
・Teslaイーロン・マスク氏の名言「週100時間働け」※正確には初出とされるインタビューでは「壮大なビジョンを成し遂げるためには地獄のように働く。80-100時間くらいかな」というニュアンス
・SoftBank孫正義氏の留学中のエピソード「食事と睡眠以外のすべての時間を勉強に使っていた。5分だけ発明に費やした」

上記の他にも、いわゆる起業家の成功譚には「成功するためにはハードワークがつきもの」という主張を支えるエビデンスが数多く見つかります。

一方、「ハードワークしたからといって成功するわけではない」というのも十分理解されていると思います。しかしこうした伝説的な成功者の言っていることを目の当たりにすると、やはり「ハードワークしたほうが成功確率が上がる、だからやろう」という心理は働いてしまうでしょう。

ハードワーク信仰に対する修正

最近になって、いわゆるハードワーク信仰に対し修正的な見方が入るようになりました。働きすぎた人たちの身に起きた悲劇がセンセーショナルに報道され、政府により「働き方改革」も推進されるようになりました。

それらを背景とし、著名な成功者から、寝食を忘れてハードワークするというイメージを覆すような発言が相次ぎます。

・ハードワーカーで有名なAmazonジェフ・ベゾス氏は「8時間眠ると1日ずっと調子よく過ごせる」と発言
・USの有名VC・Andreessen Horowitzのマーク・アンドリーセン氏は、睡眠時間について「7時間半ならそう問題なくやれる。7時間だと落ち始める。6時間は最適以下。5は大問題。4ならゾンビだ」と発言
・台湾のIT担当大臣オードリー・タン氏は「8時間睡眠は必須」と語っている
・ANRI佐俣アンリさんはstand.fmで「(労働時間に)より制限のある中で最高の結果を出すやり方が求められている」「尊敬している、成功した経営者たちのルールを今やるとアウト」と議論している

睡眠が大事、という文脈が多めな気もしますが、まっとうに8時間寝るならたぶん一日に働けるのは10-12時間くらいで、イーロン・マスク氏の週100時間よりはずっとリーズナブルです。子供がいればもっとずっと制限されるでしょう。

コンサルティングファームや投資銀行等、ハードワークで有名な業界に勤める友人たちも、口を揃えて「最近の若手には全然働かせることが出来ない」と言っています。働き方改革や、過度なハードワークを嫌う人材の流出が当然影響しています。

How: そもそも「良いハードワーク」と「悪いハードワーク」がある

さて、では現代においてハードワークは完全な悪者になってしまったのでしょうか?

実は2017年のハーバード・ビジネス・レビューの論文でも「場当たり的な応援要請は、人々の労力や時間を消耗させる最たる要因である」ということが示されています。事後対応が主となるカスタマー・サポートのような部門や、緊急対応の多い官僚業務に携わる人びとが、精神的に消耗しやすいことからも明らかでしょう。

一方、休日も含めて息をするように仕事をし、やりがいを感じている人びともいます。彼ら・彼女らは、ハードワークによってプロジェクトを成功させ、キャリアアップを達成しているように見えます。

この違いはどこからくるのか?

過去数年、自身の身の周りで起こったことを総合し思い至ったのは、ハードワークについては良いものと悪いものがあるのではないか、ということでした。

#いいハードワーク
・自発的である
・自分に決定権がある
・人助けであっても、費やす時間が決まっている
・睡眠時間を犠牲にしない
・質(成果量・集中力・学習量)に注意を払う
#悪いハードワーク
・場当たり的である
・やらされている
・他人の尻拭いを長い時間をかけてやる
・睡眠時間を削って夜ふかししてやる
・量(働く時間の長さ・使うリソースの多さ)に注意を払う

良いハードワークを息をするように続けられる人は伸びます。
逆に、悪いハードワークをやり過ぎると、高い確率で鬱になったり身体を壊したりします

この点、自分も悪いハードワークをそうとわからずに推し進めてしまっていた時期があったと反省しています。

振り返ると、自分は仕事を苦行にする天才だった

さて、自分の会社のことはどうか。以下がどのように私が働いていたかという一例です。

・自らプライベートの時間や睡眠時間を捧げて仕事をする
・「お客様が求めているなら」長時間でも働く
・1週間のタスクをきっちり詰めて、いつまでにこれをやる、というのをガントチャートばりに定義する
・「神は細部に宿る」と細かい仕事についても徹底的にやる
・「優れたビジネスパーソンになりたいならハードワークは必須」と何度も発言する
・自分自身がハードワークをしているというアピールをしてしまうことで、周りにも同じやり方を無意識に促す

簡単にいうと、自分の「すべき」を周囲に押し付けていました。結果、周囲から考える余白を奪い、拘束し、精神的にキツい思いさせてしまっていたと思います。

ぼく自身は、自分のビジョンのために働いていた、「自発的」という要件を満たしていたからよかったのでしょう。ですが周囲にとっては必ずしもそうではない部分があったと思います。

Who: ハードワーク「していい人」と「してはいけない人」もいる

もうひとつ、ハードワークから恩恵を受けられる人と、そうではない人がいることにも気が付きました
下記はいろんな人を見てきて思う、ハードワークの適性についてです。

#ハードワークしていい人
・体力がある人
・ストレス耐性が高い人
・私生活で自分のストレスを緩和できる人(趣味等で習慣的にストレス解消ができる、暮らしの不便が少ない、心理的安全性の高い同居人がいる等)
#ハードワークしてはいけない人
・体力があまり多くない人
・ストレス耐性があまり高くない自覚がある人
・私生活にストレス要因がある人

ハードワークを量的(長時間、身体的な負荷が大きい)と質的(深い集中力を要する、複雑性が高い)なものとに分けたとしても、やはりいずれにおいても人によって向き・不向きはあると感じます。

逆に言うと、体力・ストレス耐性・環境や習慣が備わっている人は、適切な範囲でハードワークしていいと思います。

自分に関しては、ベースの体力値・ストレス耐性値がおそらく大きいほうでした。「仕事が趣味」と公言しており、楽しんでやれる部分が多いため、仕事から感じるストレスもましだったのでしょう。

同じ見方を他人にも適用し、同じようにハードワークを求めてしまったのが根本的に間違っていたと思います。

What: ハードワーク「していい仕事」と「してはいけない仕事」もある

さらに、ハードワークの精神的負荷を左右する要因として、「報われるかどうか」も大きいと感じています。
下記はぼくの考えるハードワークに向いている仕事・そうでない仕事の一例です。

#ハードワークしていい仕事
・頑張ることでキャリアアップにつながる(向いているのでスキルが身につきやすい、昇進する、履歴書に書ける等)
・頑張ることが経済的な成功につながる(給与が上がる、会社が伸びてSOの価値が上がる等)
・頑張ることで感謝される
#ハードワークしてはいけない仕事
・成長実感が得られにくい
・やっても経済的なリターンが少ない
・やっても感謝されない

要は精神的・物質的・感情的とを問わず、何らかの報酬があることが大事なのだと思います。

ただ注意が必要なのが、「ハードワークしてはいけない仕事」をあまりにも避け続けると、経済的な成功も望めないしキャリアにもマイナスになる点です。理由は、この類の仕事が実はキャリアアップに不可欠な「信頼」醸成につながるからです。

逆に、仕事を選り好みし、めんどくさいことを他人に押し付けてばかりの人が信頼を得られるはずもありません。そんな人ばかりの会社は、顧客に満足にサービスを提供することができず、崩壊するでしょう。

よって一定数は絶対的に発生する「ハードワークしてはいけない仕事」については、そもそも「仕事を面白がれるスキルを持つ(例. やり方を工夫して成長実感を得る等)」ことや、「チームで分担する」「費やす時間を制限して取りくむ」等でコントロールしていくことが重要です。このあたりは先程ご紹介した論文や同じくHBRの『バーンアウトに打ち勝つ処方箋』に詳しいです。

ハードワークをコントロールするため意識していること

ぼく自身はというと、いまだに控えめに言ってハードに働いていると思います。そんな中でも、週末はキャンプに行ったり運動したり、家族や友人と過ごす時間を創業期よりも多く持ったり、自分の心身をケアしながらハードワークする習慣を少しずつ体得していきました。恩師である故・瀧本哲史先生の推してくださった『メンタル・タフネス』を早い段階で読み実践していたのも、非常に役に立ちました。

ただぼくのような立場にとってもっと大事なのは「大切な社員のハードワークをどう健全に保つか」という問いです。近年は、基本は強制せず、あくまでハードワークをしたいときに正しくしてもらえるよう、考えて組織設計やコミュニケーションをするようになりました

以下はぼくが実践している(と思っている)例です。

#「いいハードワーク」をしてもらう
・四半期の目標と優先順位だけを合意し、過程は見ない
・「この時間にこれをやって」等のスケジュールは縛らない
・仕様を細かく決めず、提案してもらう
・みんなが質のいいハードワークができているかに注意を払い、生産性が落ちていれば適切なサポートをおこなったり、休息を勧めたりする
・自分自身のハードワークは「それはそれ」と区別し、他人に強制しない
#ハードワークを「してもいい人」か見極める
・その人のベースの体力・ストレス耐性によって仕事の難易度・物量を変える
・同じ人でも時期によっての好不調を考慮する
・プライベートが大変で(家族の病気等)、仕事に影響している人に対して思いやりを示し、場合によっては計画を修正する
・趣味を奨励し、一緒にキャンプやサーフィンに行ったりする
#ハードワーク 「していい仕事」を任せる
・メンバーの昇進やキャリアアップにつながる配属をする
・そもそも評価されやすいよう、その人に向いている仕事を任せる
・スキルレベルに対してちょうどいいハードルを敷き、伴走しながら自力で達成してもらう
・成果に対してきちんと昇進・昇給で報いる
・SOや賞与を提供し、会社の成功と社員の成功を一致させる

おわりに

スタートアップはうまくいくか不確実だからこそ、本質的に試行錯誤ゲームであり、試行回数が稼げるほど成功確率が上がります。この点は、質的なハードワークだけではどうしても限界があり、時間をかけて数をこなすことが有利にはたらきます。

またスキルの成長についても、試行錯誤を通してどれだけ学習を積むかに依存します。やはりやればやるほどスキルは磨かれるのです。

ゆえに会社であれ個人であれ、試行錯誤量の土台となるハードワークは、正しく使いこなせば事業成長・キャリアアップにつながる武器になります。ただ使い方を間違えれば、心身の健康を損なう恐れのある諸刃の剣と言えます。

だから、やるなら正しいハードワークをすべきです。そしてリーダー層は、やらない選択肢が尊重されるような職場環境をつくらなければなりません

多くの方が、心身健康に、やり甲斐を感じながらものごとに打ち込めることを願っています。それがプレティアのミッション「共に達成する喜び」に溢れた社会像です。


プレティアも様々な試行錯誤・失敗を積み重ね、正しいハードワークのやり方を追求してきました。

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