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二桁の暗算が完璧に出来るようになる本は必要なのか

つい最近、気晴らしに本屋さんに寄ったところ、店頭の宣伝ブースに置かれていた本があった。
その名も
『小学生がたった1日で19×19までかんぺきに暗算できる本』
である。


表紙には
『算数の計算力がぐーんとUP!』
『中学受験、脳トレにも!』
更に帯には
『5秒でパッと解ける!』
などという謳い文句が綴られている。この表紙を見た時点で中学受験を経験している偏差値70経験者の私にはツッコミどころが満載で、あまりにも無用の長物な参考書だと思ってしまった。使えるとして脳トレくらいだろうか。あまりにも参考書としてはおすすめできない。
その理由は以下の2つだ。

① 算数の計算力を上げるにはあまりにもハードルが高く不向きであること

② 中学受験において不必要なスキルであること

これについて、本書の内容をざっと試し読みした内容と、前述したこの参考書がおすすめできない理由がどういうことなのかを順番に説明していこう。


本書の内容である二桁の暗算が簡単にできるようになる仕組み

本書では、二桁の暗算が簡単にできる仕組みとして、お土産算なる方法を用いている。
例えば14×17という式があったとする。
この場合、計算しやすいように17を10と7に分け、分配法則の容量でそれぞれ14を掛けてから足す方法を取る。

 14×(10+7)
=14×10+14×7
=140+98
=238

というような感じだ。
これを暗算で出来るようになれば二桁の計算を簡単に暗算で出来るようになる、というのが本書の大まかな内容である。

これらを把握した上で、何故この参考書が不必要なものだと判断したかを説明していこう。


①算数の計算力を上げるには不向き

まず大前提として、算数、数学における基礎は一桁の四則計算である。そしてそれができて初めて桁が増えたときにも対応していけると私は考えている。
だがこの参考書は、二桁の暗算をするために、数字を計算しやすいように分け、その後分配法則を使って先にかけてから足す、という方法をとっている。
つまり、四則計算が素早くできることを前提とした参考書なのである。
要は四則計算なんて早くできて当然だよね!と言っているのだ。四則計算が遅い人間はここで門前払いされるだろう。
なぜならそれが早くできなければ暗算できても答えを出すまでに時間がかかってしまい、結局普通に計算するのと速度がなんら変わらない、という結果になるからである。
この時点で本書には計算力を上げるため、と言いながら、これを使って学習するために必要な子供のスペックというものが事実上存在してしまっていることになる。これでは小学生というくくりになっているにも関わらず、四則計算が早くできる、という枕詞があっても不思議ではない。

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