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星のや竹富島 | ここにしかない贅沢

バスに揺られて(星のや竹富島へ向かう道は補装されていない自然ありのままの道のため、本当に揺れる。秘境へ向かっている感じがわたしは好きだ)たどり着いた星のや竹富島。

南風になびく、ヨーガンレールの制服が涼しげで、さっきまで感じていた暑さをいつの間にか感じなくなった。

チェックインは客室で、ということでカートに乗って移動した。施設のなかにあるグック(石垣)はひとつひとつ手積みで造られたらしい。石灰岩が積み上げられたグックは、雨が降るたび、風が吹くたび、少しずつ少しずつ、強固になっていく。一切のセメントを使っていないのに、ビクともしない。このグックと、真緑に生い茂ったフクギの木が、これまでずっとこの島の家々を台風から家を守ってきたのかと感じた。

客室に着いた。島の建築基準と、伝統的な造り方に沿って造られた赤瓦の建物。まるで時が遡り、いつかの島に来たような、そんな気持ちに一瞬で引き込まれた。一棟ずつ建つ客室はすべて南風が存分に取り込まれるように建てられている。

大きな窓と、高い天井、そしてちょうど良い明るさ。その全てが、わたしたちを別世界へいざなってくれた。チェックインを済ませて、しばし横になった。ただただ南風に吹かれ、目を閉じると、自分が何者であるか、忘れてしまうようなそんなひとときだった。

そのあとラウンジでジーマミー豆腐のふるまいや、三線の演奏を楽しんだ。

夕刻になり、西桟橋へ行き、夕陽を眺めた。石垣島と竹富島を結ぶ連絡船は夕方には最終便を終えるので、陽が沈むこの時間には島の人々と島の宿に泊まるひとしかいない。八重山を覆う空の赤のグラデーション。これは泊まらないとみることができない、とっておきの贅沢な景色なのだと知った。

ここに流れている時間が普段の生活のなかで感じるものと同じだとは到底思えなかった。時間の軸はこの世界に、過去に、未来に、いくつもあるような気がしたし、そうであることをほとんど確信した。

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夕食はダイニングで。島の食材をふんだんに使った「島テロワール」。ここでしか味わうことができない美食が竹富島にはある。本州と気候が違うからこそ、農耕には適さない土壌のため食物の栽培が難しい地であるからこそ、だからころ、味わえるとっておきの食事がここにはある。

わたしたちはグラスを傾け、今ここにあるわたしたちを祝った。必要な灯りだけが用意された星のや竹富島だからこそ、大事なことだけが見えるような、そんな気がした。

夜は満点の星空だった。そういえば新月だったのだ。余計に星々が美しく見えた。生ぬるい風が、この夜は永遠に続くような気分にさせた。

星のや竹富島を一望できる、見晴台まで歩いた。そこから眺める景色に、島がここにあり続けたことを強く証明する力強い光を見た。客室からこぼれた灯りの、小さな星の、輝きのひとつひとつは小さいのに、絶えることはあるまい、と力強く光っていた。

翌朝、早起きして朝日を見る予定だったのだけれど、見事に見逃した。夜更かしをしたせいで朝寝坊をした。でも、まあいいか、と思った。また帰ってくることを心のどこかに確信していたから、のような気がする。

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すべてを書ききることはできなかったが(思い出が多すぎる)こうして、これがわたしたちの記念すべき初めての旅となった。まだ石垣島での仕事を残した彼と、空港で別れを告げ、冬の寒さが残る本州へわたしは帰った。

竹富島は近くて遠い、遠くて近い、わたしの帰る場所。あの島にいた時間を思い出すと、なんだか今でも不思議な気持ちになる。夢の中にいたような、夢の中にしか本当はないような、そういう場所である。

歩けば歩くほどに、聞けば聞くほどに、目を開けば開くほどに、そこには先人たちの想いや知恵が隠れている。人の想いがつなぐ島。わたしはこれから先も、何度でも、何度でも竹富島に訪れるだろう。

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昼から夜に、夜から朝に、変わっていく時間帯が一番好きな島の景色。これは昼から夜に変わっていくときのこと。

昼から夜へ向かう


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