見出し画像

コラボ作品集《桜》 1

 
 
 
『桜吹雪く』

 
 穏やかな川面を、滑るように小舟がゆく。
 綿帽子に隠れた島田には、母の形見の簪がひとつ。

高砂やこの浦舟に帆を上げて

お母さんお母さんきっと……

 岸に立つ若者が手を差し出す時、一瞬の風が花を吹雪かせた。薄いその一枚が、娘の懐に仕舞われた筥迫に舞い降りる。

 娘は若者に、自分の手をそっと預けた。
 
 
 
 
 

 
 
 
 
 
 
 
☆俳句     kusabue
☆140字小説  吉田 翠
☆イメージ   悠凜
 
 
 
 
 
 

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?