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ニーチェ霊解

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2024年5月の記事一覧

ニーチェ 「人間の存在と目的」

ニーチェ 「人間の存在と目的」

人間とは何か?人生の目的とは何か?は、以下の言葉に集約されています。

人間は、「超人を目指して飛ぶ一本の矢」であるべきだとニーチェは述べています。人間の存在と目的は切り離せません。超人とは、駱駝から獅子、そして子供へと変化を遂げた、新しい価値を創造する無邪気な存在です。

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人間とは乗り超えられるべきあるものである。あなたがたは、人間を乗り超えるために、何をしたか。およそ

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荘子、臨済、ニーチェにおける美しい人

荘子、臨済、ニーチェにおける美しい人

人間を極めると、光を纏ったしなやかで美しい存在に変容することが分かります。その存在は、法身、超人、神人などと呼ばれます。また、人間を極めると、美しくなるだけでなく、喜びや笑いのある遊びの世界にも入ることができるのです。

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君たちがもし一念を静めることができたら、そのまま清浄法身である。君たちの一念不生がつまり菩提樹への登攀であり、この三界に在って神通無碍、意のままに化身し

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ニーチェの読書術

ニーチェの読書術

現代は「『労働』の時代、すなわち、あらゆるものを即座に『片づけ』、古い本も新しい本もすべて片づけようとする、性急な時代、不作法に汗をかくあわただしい時代」ですが、文献学者ニーチェは私たちに「ゆっくりした読み方」や「言葉の金細工の術」を教えてくれます。

ニーチェは、彼の著作を「性急に片付ける」読者ではなく、「ゆっくりと、深く、後にも前にも気を配りながら読む」忍耐強い「完全な読者」を求めています。

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ニーチェ「永遠回帰と超人」

ニーチェ「永遠回帰と超人」

『ツァラトゥストラ』がニーチェの主著であり、彼の哲学のすべてが含まれています。この主著のテーマは永遠回帰です。

永遠回帰こそがニーチェ哲学の最重要テーマです。永遠回帰とは、すべてのものが寸分たがわず同一の姿で永遠に回帰することです。同一のことが無限に繰り返されることです。

しかし、その啓示を受けたとき、ニーチェは恐怖を感じました。なぜなら、偉大な者だけでなく、ニーチェが吐き気を催すほど嫌いな「

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ニーチェ「運命愛と救済」

ニーチェ「運命愛と救済」

ニーチェの哲学は「肯定の哲学」ですが、彼は運命をも肯定します。それが「運命愛」として表現されています。

運命愛とは、文字通り運命を愛することです。過去・現在・未来の出来事は偶然に支配されていますが、意志によって、「わたしがそれを欲した」と捉え直し、必然の出来事に変換します。これにより、運命・偶然に翻弄されることがなくなります。

運命愛は『ツァラトゥストラ』の「三様の変化」と密接に関係しており、

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ニーチェ「不倶戴天の敵」

ニーチェ「不倶戴天の敵」

ニーチェの宿敵であり、不倶戴天の敵であるのは、重力の魔と善人・同情です。

重力の魔は、「最高最大の悪魔」とも言われ、人間の足を下へ、深みへと引きおろすものであり、人生を重く感じさせる霊です。ニーチェは、重力の魔を舞踏と笑いで撃退します。

また、もう一人の敵である善人・同情に対しても、鋭い心理分析を行い、同情を殺す勇気、同情を超えた高みがあることを示します。ニーチェは、同情の克服を高貴な徳の一つ

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ニーチェ「一切は滅びるに値する」

ニーチェ「一切は滅びるに値する」

「我々は、信仰も迷信も持ち合わせていない」と胸を張る現代人の無信仰の主張は、「一切は滅びるに値する」という生や存在の否定に帰結します。

しかし、ニーチェの「神の死」の宣言は、ニヒリズムと結びつくことなく、むしろ生を肯定するものになります。

ニーチェは、「汝なすべし」と義務を強制してくる存在(宗教的な教義、道徳的な規範、社会的な慣習)を否定しただけであり、何でも科学で説明しようとする痩せこけた科

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ニーチェ「嫉妬と復讐」

ニーチェ「嫉妬と復讐」

平等を説く者の心の中には、嫉妬や復讐心、他者を支配したいという欲望が隠れています。プライドが高いことも彼らの特徴の一つです。

ニーチェは嫉妬や復讐と戦った哲学者ですが、彼が追求した「超人」は、嫉妬や復讐心を持つような小さな存在ではなく、他者のどんな大きな幸福であろうとも、妬まずに見ることができる太陽のように大きく豊かな存在です。

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わたしの哲学は、復讐や遺恨の感情と戦闘

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ニーチェ「極限的な肯定」

ニーチェ「極限的な肯定」

ニーチェは、苦悩や罪、過去にあった一切のことに対して「肯定」します。彼はその肯定を「巨大な無際限の肯定」「到達しうるかぎりの最高の肯定」「極限的な肯定」と表現しています。

さらに、「永遠の然り」「何一つ無用なものはない」とも述べています。

しかし、ニーチェの「肯定の哲学」は、すべてのものを肯定するわけではありません。彼は、「よろず満足家」ではなく、選り好みの強い人間です。

また、自分自身およ

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ニーチェ「流転と破壊の哲学」

ニーチェ「流転と破壊の哲学」

ニーチェの哲学は、不変や不動ではなく、変化と運動の哲学です。

彼は氷のように冷たく静止しているものではなく、むしろ太陽のように熱く、自らの力で動く存在を重視しています。

彼は、ヘラクレイトスの流転と破壊を肯定する哲学、そして生成の哲学に最も共感していました。

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唯一なもの、豊かなるもの、動かないもの、満ち足りたもの、移ろいゆかざるものについての目眩病の如き教えの総てを

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ニーチェ「七つの悪魔」

ニーチェ「七つの悪魔」

ニーチェは、「おまえはおまえの悪魔を大きく育てるがいい」「君らの善い人々のもつ多くの点が、わたしに嘔気をもよおさせるのだ」「善人たちに悪と呼ばれているものが全部集まって、そこから真理が生まれるのだ」と述べています。

ニーチェは大学の教師を辞めて正解でした。こんなことは市井の哲学者だからこそ言えるのであって、大学の教師は心の中でそう思っていたとしても決して口に出して言えません。唯一の例外は、中島義

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ニーチェ 「超人とは何か」

ニーチェ 「超人とは何か」

ニーチェは「超人」を厳密に定義していませんが、様々な比喩を用いて説明しています。さらに、超人の対極にある存在も様々な比喩を用いて提示しています。

ニーチェは、超人とその対極である存在を対比させることによって、「超人」という存在をイメージしやすくしています。

超人のイメージには、太陽、大海、稲妻、無邪気な子供、徳や価値の創造者、破壊者、踊る神、哄笑する者、鷲と蛇、龍、高貴な者、勇敢な者、英雄、孤

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ニーチェ 「百倍も洗練されて」

ニーチェ 「百倍も洗練されて」

子供は超人の象徴ですが、駱駝から獅子、獅子から子供への変化を経験し、「より子供らしく、と同時に百倍も洗練されて」、「別の人間」として生まれ変わった子供が超人の象徴なのです。その子供の無垢は「第二のより危険な無垢」となっています。

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小児は無垢である、忘却である。新しい開始、遊戯、おのれの力で回る車輪、始原の運動、「然り」という聖なる発語である。

創造という遊戯のためには

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ニーチェ哲学の真髄

ニーチェ哲学の真髄

ニーチェの主著は『ツァラトゥストラ』ですが、他にも初めは『力への意志』というタイトルでしたが、後に『一切価値の転換』というタイトルに変えた理論的な主著を計画していました。

これらの主著のタイトルから、ニーチェの哲学が、『ツァラトゥストラ』の「三段の変化」に凝縮されていることが分かります。

「般若心経」は仏教の教えを超コンパクトに要約したものですが、同様に「三段の変化」もニーチェの哲学を超コンパ

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