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レビュー / 映画『21世紀の資本』700P超の有名経済書がまさかの映画化 ★4.0

映画というかお勉強動画。でも700ページ超もある原作、読まねばと思いつつずっと手が出せないでいたので、その内容がこうして映画で手軽に知れるのは本当にありがたい!

【あらすじ】
2014年に日本でも発売され一大ブームを巻き起こした経済学書「21世紀の資本」。フランスの経済学者トマ・ピケティが出版し、史上最も重要な経済学書として世界中から称賛を浴びた。しかし、700ページという超大作のため、完読が難しいというのも有名な話である。そこで著者のピケティ自身が監修から出演までこなし、一般の人も五感だけで理解できるよう完全映画化!著名な経済学者とともに、本で実証した理論を難しい数式など一切使わずに映像で表現した。

現代の資本主義がいかに格差を生み出しているかというお話。今の社会は18世紀のヨーロッパと同じくらいの格差社会らしい、ということを知ってびっくりしたし、今の社会に対する違和感を叫んでいいんだっていう勇気になったな。

作中に出てきたヒトラー下のドイツがトランプ大統領を出現させたアメリカとめちゃめちゃ似ていてぞっとしたね……40年経っても、そしてホロコーストという大惨事が起きてもなお、同じことが繰り返されてしまう。社会の構造がそうなっちゃってるんだよね。格差による貧困や苦しみをスケープゴートのせいにして、彼らさえ排斥すれば問題は解決するのだと思い込む。当時はそれがユダヤ人で、現代では移民で。問題はそんなに単純であるはずがないのにね。でも教育も生活の質も担保されていない人たちにとっては、そういう安易な解に飛びつくより仕方がないのかもしれないな。。

以下、印象に残った箇所のメモ。

経済が生み出すお金のうち、労働者が得る割合が減り、資本家が得る割合が増えている。底辺90%の経済状況はほぼ停滞、成長のほとんどはトップ10%が獲得している。アメリカ世帯の中央値所得は25年前とほぼ同じ、インフレ調整した実質賃金は60年前と同じ。一方で、寿命は低下。経済は多くのアメリカ人にとっては有害だったと言える。
経済は生産性を増しているのに、生産性向上の恩恵はごく少数の手にしか渡らない。
民主主義はエリート支配になりやすいため、非エリートにより時々刷新されないと民主主義では権力と富がますます集中する。
大型金融機関の融資のうち85%は金融システムを回るだけ。同じ人が資産を売買し価値を吊り上げる。資本主義はもはや労働と無関係になっている。

私が感じていた資本主義への違和感をわかりやすく解説してくれて、そしてそれを世界にインパクトのある形で発信してくれて、トマ・ピケティ氏には感謝しかございません、という感想……

とはいえどれだけ資本主義の欠陥が明らかになっても、今の社会で力を持っているのは、資本主義の恩恵を受けている人たちで。だからこそ構造を変えるのは簡単じゃない。でも「非エリートによる刷新」の可能性も必ずあるはずだし、思考停止せずに、できることを考えて頭と足を動かし続けたい!な!

それにしても改めてアメリカの格差すさまじいなと……それに比べたら日本はまだいいほうなのかもしれない……とも思ったけど、このままだと日本もいつそうなってしまうかわからない。のでやっぱり、みんな選挙行こう!


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