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リクルートメント・マーケティングで成功する採用戦略 ~人事担当者が知るべき新しい採用の考え方~

はじめに

ご覧いただきありがとうございます!
株式会社M&Aクラウドで人事をしている仙波です。
本記事は私の読書感想文的な、学びをシェアする記事であり、網羅的な本の要約記事ではありませんので、その点あらかじめご了承下さい。

今後も定期的に本の感想や日々の学びをシェアしていく予定ですので、もしよろしければ「スキ」と「フォロー」をしていただければ嬉しいです!

第1章:採用の考え方を変える

採用を阻む「壁」の正体

多くの企業はそれなりの人的、金銭的なリソースを採用に割いているはずなのに、なぜうまくいかないのか。理由は単純。採用における需給バランスが崩れているのに、「旧来型の採用」から抜け出せないからです。

人余り時代には、労働市場において企業が「選ぶ側」としての優位をふるうという特徴があります。企業は基本的に「待ち」のスタンスで候補者を募り、選考を通じてふるい落としていけば良かったのです。(旧来型の採用)
しかし、労働人口の減少によって、求人の数と求職者の数の間のバランスが崩れたことで、今や企業は「選ばれる側」の立場になったのです。

P18図 採用市場の変化

このような時代で、採用における最悪のシナリオとは何か。
それは採用母集団の規模をとにかく追うこと(母集団信仰)です。とにかく数を集めれば、その中にピンとくる人がいるはずだというのは、どこまでも確率論の考え方。この考え方は労働人口が減る時代との相性が最悪です。
エントリー数や説明会への参加人数は追いやすい指標であることは確かです。しかし、これらの数字は本当に「採用」に繋がっているのでしょうか?採用において、本当に重要なのは、「必要な人材を獲得できたか」の一点のはずです。企業には限られた母集団の中で「採用のマッチング精度」を高めるための働きかけが求められることになります。

採用市場のパラダイム・シフト

それでは、「採用マッチ率」に向き合うためにはどうすればいいのでしょうか。結論はシンプルです。採用要件を満たす見込みのありそうな人だけにアプローチをかければ良いのです。「よりピンポイントな採用」は本書が提唱したい考え方の一つです。

現代はデジタル化によって「1to1」「1on1」に近い形でコミュニケーションを取ることが可能になってきています。情報を受け取る側は、今までの画一的なメッセージよりも、リアルな1対1の関係を感じられる発信を好みます。
理想の人材に振り向いてもらうために、自社の魅力を日頃から労働市場に伝えていく努力、そして自社に入社することのメリットを候補者に発信する努力が必要とされているのです。
いわば、人事の役割が「仕入れ」から「マーケティングと営業」に変わりつつあるのが採用の現在地点であると言えるでしょう。

新しい採用プロセス

採用のスタートラインはどこなのか?
新卒採用なら就職情報サイトの掲載が始まる前後、中途採用なら上半期下半期ととらえられがちですが、そこはすでに過当競争になっています。先に答えを書いておきましょう。「採用のスタートラインは今」です。
いい人材を採るために重要なことは、「優秀な人が市場に出る前に接点を持つこと」すなわち、他社が採用のスタートラインだと思っているところを大きく先んじて採用を始める「早期接触」です。

まずは、すぐにでも知ってもらうことがスタートライン。早期に接触し、認知を獲得、その後継続的に意向度(志望度)を高めていき、エントリー時点ではすでに高い意向度の候補者を集めているのが目指す姿となります。
また、内定出しや入社がゴールではありません。内定後も志望者の内定辞退や離職を防ぎ、自社へのエンゲージメントを高めるという長期戦の採用スタイルになってきています。社員がチームで最大限のパフォーマンスを上げられるようなワークエンゲージメントを作ることが次の採用にも繋がります。

これら一連のプロセスは「リクルートメント・マーケティング」と呼ばれます。候補者を顧客に見立て、マーケティング手法を用いて、アプローチしていく手法だからです。

『リクルートメント・マーケティング入門 - Wantedly, Inc.』


第2章:採用のスタートラインはどこか

候補者はいつどこで求人情報に触れているか

潜在層への早期接触が重要な点は1章で述べましたが、ここではGoogleの人事最高責任者を務めたラズロ・ボックの興味深い言葉を紹介します。

「私たちはショッキングな事実に気付いていた。本当に優れた人々は仕事を探していないのだ。」

ワーク・ルールズ ! 』

優秀なビジネスパーソンは市場に出てきづらく、さらには出てくる前に次の就職先が決まっていることが多いのです。仕事探しの意欲が表面化する頃にはすでに、エージェントや求人媒体の情報を頼るまでもなく意中の就職先/転職先のリストアップができているのです。彼らは日常で接する数々のWeb記事やSNS投稿を通じて、このリストアップを済ませています。

では、転職しようと思っていない人にどうやって転職してもらうのか。なんだか禅問答のようにも思えます。これを実現するには、転職しようと思わないうちから接触を始めて、自社を意識してもらうことが有効です。
すなわち、潜在層に働きかける鍵は「早期接触」と「継続接触」です。
これによって、転職が顕在化し、「スペック比較・条件比較」の過当競争に巻き込まれる前に採用を成功させるのです。

独自の魅力は条件比較に勝る

採用ターゲットとなる候補者からの企業認知を高めることは、言い換えると、その人にとっての「憧れポイント」を発信するということです。
ただし、八方美人は成功しません。大事なことはあくまでも自社にとっての「いい人材」といいコミュニケーションができること。その人材が、企業文化や仕事のポジティブな面、ネガティブな面もひっくるめて「自分には価値がある」と判断してくれること。そこが基本です。

そこで大切なのが、「どう見せたらいいか?」よりも「自社の価値がどこにあるのか?」を考えることです。では、企業の価値の根本にあるのは何か。それは「なぜ私たちは事業をやっているのか(企業ミッション)」というWHYの問いです。
ミッションを定義し、求人広告でも企業パンフレットでも、面談の会話の中でもありとあらゆるコミュニケーションに紐付けるようにすることで、候補者は自分の触れた情報の断片から、より立体的にその組織の姿をイメージできるようになり、誤解のリスクが減ることになります。

情報発信を行う上で大事なのは上記の「透明性と一貫性」です。


第3章:ファンづくりからはじめよう

採用プロセスの変化

企業と働く人との力関係が変わると、採用についてのプロセスも変わってきます。(下記の図)

早期接触をカルチャーマッチや魅力づけに振ることで、その人の転職が顕在化した時に就職・転職先として想起される会社になれます。これは行く先がいくらでもある優秀な人材に自社を選んでもらうには大事なことです。
また、認知の活動とカルチャーマッチを知る、共感してもらうにはカジュアル面談が非常に相性が良いです。

候補者との接触を「ソフトな選考」に

現代は、情報技術の発展によりありとあらゆることが効率化され、形式張った重厚長大なプロセスよりも、より手軽で負担の少ない選択肢の方にユーザーが流れる時代になっており、就職・転職活動においても全く同じことが起こっています。
そこで重要になるのが「カジュアル面談」というキーワードです。カジュアル面談とは、通常の採用面接とは異なり履歴書やエントリーシートの提出を必要としない、名前の通りカジュアルな面談スタイルで、本選考の前の工程に位置づけられるものです。

これまでの採用において課題だったのは「いい人」が市場には一定いるはずなのに、なぜか採用しようと思うと彼らにアクセスできないこと。その人に会うために、求人媒体での露出量を無理をして増やさなくてはなりませんでした。一方で、カジュアル面談は、候補者側の心理的負担をなくすことによって、この課題を解決することができるのです。

本書では、このカジュアル面談を取り入れた選考フローの設定方法や、面談の設計、注意点、トーク例、面談後の対応パターンなど、とても丁寧に記載されています。分量の関係で本記事では割愛いたしますが、カジュアル面談の導入を検討している方、導入したものの上手く活用できていない方にはとても学びになる内容となっておりますので、是非ご一読ください!
(勝手にプロモーションさせていただきます)

意向度を高めるための継続接触

長期的な視点に立って、一緒に働きたい人との縁をとにかく大切にすること。当たり前のことのように聞こえるかもしれませんが、その当たり前にこだわらないと勝てないのが現在の採用を取り巻く環境です。
この戦略は「ストック採用」と呼ぶことができるでしょう。

ストック採用は、継続に重きを置いた採用手法です。タイミングを絞らず、自社にマッチする候補者と継続的な接触をはかり、「優れた人材を狙い撃ち」します。採用選考一発で考えず、より長期的な視野で採用に臨みます。

しかし、どうすればストック採用を実現できるでしょう?その答えとして注目されているのが「タレントプール」という考え方です。これは、過去に自社となんらかの接点を持った好ましい人材(タレント)をプールし、そこから採用に繋げるという考え方です。
「人材」という有限の資源を中心に、人と人の繋がりの中で運用していくものです。候補者への敬意を持ち、一人ひとりの候補者と真摯に向き合うことができます。

詳しくは本書や下記記事に記載されておりますので、是非ご覧下さい。


第4章:新しい選考のプロセスを知る

候補者の視点に立った選考フロー

ここまで読んでくださっている人にとっては当たり前のことかもしれませんが、面接は「一方的な」「選考」の場ではありません。私たちは選考しつつ、相手にも選考されているという視点が必要です。では、候補者体験を良くするためにはどうすればいいのでしょうか?大事な軸は二つ。事実に即した内容にすること、企業側で一貫性を持つことです。

選考フローの中で、候補者が企業の出す情報や社員との接触から何を感じるか。この一連の体験は「候補者体験(Candidate Experience / CX)」とも呼ばれるもので、リクルートメント・マーケティングにおいては企業の採用コンセプトと密接に関係してきます。
ここで大切なのは、個別の「点」で候補者の印象を良くするだけではなく、情報接触から初回のカジュアル面談、そしてその後の採用コミュニケーションに至るまで、「候補者がそれぞれのタッチポイントで何を体験するか」を全体の流れとして設計することです。

採って終わりではない採用活動

「採用活動は候補者を採用して終わり」ではありません。入社前段階も含め、入社後も続いていくプロセスであり、採用後の候補者のコミュニケーションや成長が次の採用成功にも繋がっていくというのがリクルートメント・マーケティングの考え方です。そうした考え方の先にあるのが、「エンプロイーサクセス(従業員の成功)」という発想です。

エンプロイーサクセスとは、従業員のエンゲージメントを高め「社員が継続的に成果を出し成果を出すことで成長を実感できる」ようにすることです。

継続的成果=スキル×モチベーション
モチベーション=動機付け要因×衛生要因

本書P218

では、いかに企業が社員の成功を助けていくのでしょうか。ここで理解しておきたいのが、「エモーショナルサイクルカーブ」。これは、新しい環境に飛び込んだ人の精神がどう変化するかをモデル化したもので、Don KelleyとDaryl Connerが1970年代中旬に提唱しました。
入社したて、配属されたての時期が一番やる気が出て、そこから一度大きく下がった後に安定することを示しています。これは人の一般的な反応であるため、構造的要因と理解した上で適切に対処することが必要となります。

この章については、Wantedlyがとても分かりやすい記事にまとめてくれているので、こちらも是非合わせてご覧下さい。


第5章:採用の好循環をつくり出す

採用にも正確な効果検証を

採用においては、認知獲得からエンプロイーサクセスまでの全工程をもれなく実行に移したとしても、すぐに効果が現れるわけではありません。ましてやこれからの採用はリードタイムが長くなるため、間違った方法で突っ走ると、後で泣きを見ることにもなります。
こういった思い込みによる迷走を避けるためにも採用工程(ファネル)の上流から下流までを細分化し、細かなチューニングを臨機応変に繰り返す必要があるわけです。その際、計測できないものは改善することができないため、まずは各工程の効果を定量観測可能な状態にすることが必要になります。

これからの人事の役割

これからの時代を生きる人事は、これまでの人事領域の枠組みの中だけでスキルやノウハウを身につけるのではなく、事業へのコミットメントを求められていくことになるでしょう。採用関連業務をつつがなく行うことだけでなく、事業や企業の成長にどのように関与できるかを考え直し、新たな価値を創出するところに人事としての価値が移ってきています。

近年は採用のオーナーシップを事業部が持つ企業も現れています。そうなったときの人事の役割はどう位置づけられるのか。

本書で紹介されているイメージはオーケストラの指揮者です。
採用コミュニケーションの上流から下流まで全体像を見つつ、各パートを最高の状態に持っていけるような指揮を執り、良い候補者体験を作りながら採用のプロセスを進めていく役割です。

本来、事業運営と組織づくりは切り離せません。採用はその中核になるものですから、事業部のトップが採用責任を持ち、人事との協業体制で「強い組織をつくる」ための採用を行なっていくことが求められます。

また、第1章でも記載しましたが、従来の採用が「仕入れ」であったとすれば、これからの採用は「マーケティング」であり「営業」です。すなわち、マーケティングや営業の視点は、これからの人事に必須のものです。
そこで、「学び続ける人事」というあり方も重要です。マーケティングや営業の世界がデジタル変革も含め日々進化しているように、人事を取り巻く環境も日々変化しています。そこでは学び続ける人と学ばない人で大きな断絶が生まれます。より良い採用ができるようになるためにも、まずは採用に関わる私たちが学び続けていきましょう。

まとめ

今回は『すごい採用―考え方を変えれば採用はうまくいく』について書かせていただきましたが、いかがでしたでしょうか。
私としては、労働人口の減少や働き手の意識変化に伴う採用市場のパラダイム・シフトと、それに対応するべく企業側に求められる変化など、これからの採用活動に関わる全ての人が押さえておくべきポイントを学ぶことができました。

また、本書に書いてある内容すらも時代の変化に伴い陳腐化する可能性を考えると、第5章で述べられていた「学び続ける人事」というあり方の重要性をさらに強く感じます。本書の内容を胸に刻み、これからも学び続けようと思います!

あと、最後にちょっとした宣伝なのですが、本書で取り上げた「カジュアル面談」を弊社でも行なっております。もし良ければ是非覗いて見てください!

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