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2021.3.2 YBCルヴァンカップ GS第1節 大分トリニータVSヴィッセル神戸   マッチレビュー


リーグ開幕戦のガンバ大阪戦から中二日で迎えたYBCルヴァンカップのグループステージ第1節。アウェイで行われた大分トリニータとの一戦を振り返っていきたいと思う。

大分トリニータとは大分が2019年に昇格して以降2勝4分1敗と互角の勝負を繰り広げており、昨シーズンのリーグ戦2試合共にお互いがターンオーバーで臨み、2試合とも引き分けた。そしてこの一戦もまたお互いがターンオーバーで臨むこととなった。ヴィッセル神戸としてはこの後に続くリーグ戦で昨年の上位陣と当たるため、控え組であったとしても勝って勢いをつけたいところ。

[スターティングメンバー]

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神戸は高卒ルーキーの櫻井辰徳を筆頭にユース、生え抜きが7人も名を連ねる神戸サポとしては胸熱なスタメンである。大分もユース出身の屋敷と弓場そして初出場の藤本がスタメンに名を連ねた。

[ネガトラで素早い切り替えを見せ流れを掴む神戸]

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神戸はガンバ戦同様、3-4-2-1でビルドアップを行う。それに対して大分は5-4-1からプレス時は5-2-3のような形で試合に入った。そのためお互いのフォーメーションが上手くかみ合ってしまう。神戸のWGにボールが入ると大分のWBの選手がアプローチし、そのまま最終ラインが横スライドすることで4-5ブロックを形成。サイドから中央にパスを通させないためCBを経由した展開しか無い状態だった。しかし、神戸はボールを奪われてからのネガティブトランジションで素早い切り替えを見せ大分の攻撃の芽を摘んでいく。特に増山のプレスバックは見事であり、このメンバーの中では実力的に頭一つ抜けていた。

しかし、大分トリニータに先制されてしまう。ロングボールからのセカンドボールを大分に拾われ、下田が右サイドの松本に大きく展開。屋敷から長沢に縦パスが入り、フリーで松本が受けクロスをあげる。櫻内の背後から中央に飛び込んできた藤本がゴールに叩き込んだ。GK前川はノーチャンスで櫻内も相手が背後から飛び込んできたため難しい対応であった。屋敷から長沢に縦パスが入った際、小林がスライディングでブロックしていたがあれはマズい対応だったように思う。届くと思ったのだろうが結果的に初瀬が引きつけられ松本をフリーにさせてしまったからだ。

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上手く試合に入れた神戸だったが先制されてしまいなかなかその後チャンスを作ることが出来ない。すると神戸は前半28分から櫻内を一列上げ、2CBのビルドアップに変更する。前半35分には上図のように大﨑が運び、安井につなぐシーンがあるが櫻内が大外レーンに張ることで藤本が釣られる形となり安井にパスが通った。しかし、この変更によってゴールまで迫れたかというとそうではなかった。

その理由として前半通じて引かれた相手に対し、大﨑と安井は相手を引きつけながらボールを回すことが出来ていたが今の神戸ではチームとして引きつけながらボールを回していない(というよりその戦略をとっていない)。要するに相手を引きつけ動かすということ自体が選手の個人戦術の部分でしか現れないため結果的に時間とスペースの貯蓄が出来ないまま攻めることになってしまう。チーム戦略として引きつけて動かすことを意識しなければ選手単体で意識しても意味が無いということだ。上図で言えば大﨑が運びパスが安井に入ったあとすぐに増山に展開するのだが櫻内が上がってしまい三角形を形成し時間を作って逆サイドに展開という形が作れなかった。2CBへの変更が指示なのかは定かではないがもう少し早い段階で変更出来たように思う。

それでも前半44分にCKから増山のヘディングで追いつく。流れの中からチャンスが作れなかっただけにセットプレーで追いつくことが出来たのはすごく大きかった。目に見える形で結果を残さないといけないとコメントしていた増山が早速結果を残したことは個人的にも嬉しかった。そしてこのまま前半が終了する。

[若い力が躍動]

後半は両チーム交代なしで始まった。前半同様前線のプレスから神戸が主導権を握り、後半5分に逆転のゴールを中坂が決める。前線からのプレスで大分から小林がインターセプトし、左に展開。櫻内から増山とつなぎ、相手を背負いながらも交わしてクロスをあげる。飛び込んできた櫻井のヘッドは相手GKにはじかれるも中坂が押し込み、開始早々ゴールで流れを掴む。チーム全体で取ったゴールと言っても過言ではないだろう。特に櫻井は初出場にしてゴールに絡む活躍を見せた。前のスペースに飛び込まずステイし、クロスが上がって相手がボールウォッチャーになったところで飛び込んだ。高卒ルーキーとは思えないほどの落ち着きには度肝を抜かれる。前後半通して櫻井は落ち着いてプレーを出来ていたように思う。サイドへの展開もスムーズに行えることやバックステップを踏みながらボールを受けるシーンなどを見ても全体を把握しながらボールを受けることが出来ていた。山口蛍のような選手になりたいというようにいろんなことを吸収し、神戸に還元してくれる未来はそう遠くないのかもしれない。

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後半25分から大分が5-4-1から4-4-2にシステム変更し前掛かりになる。神戸としてはスペースを消されていた分やりやすくなった。逆サイド大外レーンはフリーになりやすくサイドチェンジが容易になった。そのため大分としてはシステム変更によって前掛かりになりボールを奪いたいがACLの経験積んで帰ってきた神戸の選手達を前にボールを回されてしまう形に。

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神戸はGK前川を含めた11人でビルドアップを行うため大分としては前から奪いにいくことができない。菱形を形成し両CBにプレッシャーをかけると中央のボランチにパスが通ってしまうからだ。

そして後半36分に田中順也のダメ押しとなる3点目が入り、勝負あり。若手選手に替わり山口、井上、酒井の主力組が投入され試合を締めて見事3-1で神戸が逆転勝利を収めた。

[まとめ]

2試合を終えて三浦監督がやりたいサッカーというものが見えてきたように思う。前から奪いにいく守備と切り替えの早さ含め90分間走りきると言うことだろう。攻撃においてもポゼッションするが相手を引きつけながらと言うことではなさそうだ。三浦監督のやりたいサッカーというところを評価基準におけば及第点なのだろう。しかし、イニエスタが居ないからこそ成立するサッカーであり復帰した際にどのようなサッカーをするのか改めて評価しないといけないような気がする。我々がリージョ、フィンクから教わったサッカーとはかけ離れたものだが降格4枠という現実問題に向き合っていかなければならないため泣き言は言ってられないのは承知だ。しかし、今回のように相手が引いてきた際どのように点を取るつもりなのだろうか。この試合では前半にCKから同点に持ち込めたことが大きかった。流れの中から引いた相手を崩せなければ今後苦しいように思う。さらにこの過密日程の中、夏場の連戦を乗り越えることは出来ない。今回は相手がサブ組で来たこともあり逆転後難なく試合を運べたがリーグ戦ではそうはいかないだろう。何はともあれ連勝出来たことは素直に嬉しい。さらに若手の底上げも着々と進んでいることも確認は出来た。その中でも増山朝陽は結果を残すなど必要不可欠な選手になりつつある。これまで神戸での出場機会がなくレンタル経験積むことも多かったが福岡での大きな経験を経て神戸に還元してくれている。増山のように何か一つのきっかけから大きな成長を遂げる。神戸には安井、佐々木、中坂、小林などユースから昇格した選手も多い。スタメンのうち7人がユースと生え抜き出身者で構成されていたため将来、神戸の主力として活躍して欲しいと思えるようなゲームだった。

大分トリニータ1-3ヴィッセル神戸

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