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2021.6.6 YBCルヴァンカップ プレーオフステージ第1戦 ヴィッセル神戸VS浦和レッズ マッチレビュー

ルヴァンカップGSを2位で通過した神戸はノックアウトステージ進出を賭け、浦和レッズとの対戦に臨んだ。この試合はホームのノエビアスタジアム神戸で行われたのだが、前回リーグ戦で敗戦していることもありヴィッセルのボルテージは上がっていたことだと思う。それを象徴するような大﨑を真ん中に置いた3バックをここに来て採用した3-5-2のシステム。この試合でまだ伸びしろがある点そして限界がある点両方が垣間見えた一戦だった。

[スターティングメンバー]

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神戸は大﨑をリベロとした3-5-2のシステムをここに来て復活。その理由はおそらく2つあると思っていて、1つ目守備時に5レーンすべてのパスの出しどころを先に埋めてギャップを使わせないようにしたこと。2つ目はボール保持の際、1人フリーマンを生み出しそこからズレを作って押し込むこと。大まかにこの2つがあげられる。

浦和は逆に天皇杯に向けてメンバーを落とした形。ユンカー、小泉、岩波、西と言ったメンバーがベンチあるいはベンチ外となった。

[飲水タイムまでは100点の試合運び]

序盤から神戸が主導権を握る展開に。その理由として3バックの編成を浦和側がキャッチアップ出来ていないため対応できていなかったことが大きい。そして数的数位を最終ラインから作ることが出来た時、大﨑の能力が一気に花開く。

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あれだけ1stラインを突破するのに枚数をかけていたはずが大﨑を入れるだけで上図のようにいとも簡単に最終ラインまで運んでしまう。前半2分のシーンだが浦和の2トップを神戸の3バックが動かすことで浦和のSHは神戸のインテリオールとCBを同時に見る状況が発生。そうなればハーフスペースへの道は開通し、相手を押し下げられる。そしてこの後、CKを獲得しドウグラスの先制点に繋がった。

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3+1でビルドアップ行うことにより、いつもは低い位置で受ける山口が高い位置を取れることになる。そうすればSBの明本をピン止めすることができ、酒井がフリーとなる。大﨑がこの試合では中央に入っているので最終ラインからの配球は容易となる。伊藤と柴戸はサンペールを警戒しなければ中央突破を許してしまうので山口とイニエスタに付きに行くことは難しい。このような大崎から酒井への配給は前半15分の中で何度も見られた。これこそ、大崎が最終ラインに加わる最大の恩恵と言っても過言ではないはず。ロジカルにボールを運んでいる様はフィンク期のサッカーを思い出したようだった。

守備時に神戸は5-4-1のような形でブロックを形成する。

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序盤、浦和は伊藤を最終ラインに落として神戸と同様に3+1でビルドアップを行った。それに対して神戸はマシカとイニエスタがCBにプレスをかけることで相手の自由を奪う。ユンカーと小泉不在の影響からか地上、空中共にビルドアップで苦戦していた。

前半15分、浦和は伊藤を中盤に戻してビルドアップ。

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これに対して神戸は5-4-1で構えることを選択し、相手にパスコースを空けさせない守備にシフト。基本的に浦和はサイドを使った前進を行うのでサイドに蓋をされるとかなりしんどくなる。特にプレス耐性の弱い田中と宇賀神のいる右サイドは詰まることが多かった。

[泣き所を最後に突かれて失点]

飲水タイム明け、リカルド・ロドリゲス監督の修正案は関根をフリーマンとして中盤に下ろし、数的優位を作りながら前進することだった。

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5-4-1で守る神戸はスペースを与えないように大﨑筆頭に上手くラインコントロールを行う。もちろん数的優位を作られているのでボールを回され続けているとどこかで穴が空いてしまうことはあった。イニエスタを抱えている以上常にハードワークすることは不可能なので押し込まれて最後の局面で防ぐ状態にはどうしてもなる。これでなんとか上手く持ちこたえていた前半だった。

しかし、ロスタイムに同点ゴールを許してしまう。

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関根のサイドチェンジに田中がダイレクトで合わせてフリーで受けた伊藤が落ち着いて蹴り込んだ。

完璧に崩され、敵ながらあっぱれなゴールだった。構造的に殴られている分、中の対応は難しかったと思う。なので防げるとしたらその前のところなのだけど、ここでイニエスタを置いている弱点をさらしてしまった形になった。サイドチェンジをされた時にイニエスタの戻りがもう少し早ければ間に合っていたかもしれない。ここはイニエスタを置いている最大のデメリットとも言えると思う。さらに関根のところでマシカと酒井の2人が付いている。この時点でもどちらかがアプローチにいけてれば防げていたかも。(どちらも結果論になってしまうのだが)

[サッカーの神様は理不尽だよ。]

1-1のまま、後半に突入したわけだけどもここで神戸にアクシデントが発生し、大﨑が交代となる。あれだけ前半上手く機能していたのも大﨑が居てこそだったし、ここで負傷離脱を余儀なくされることはサッカーの神様は本当に理不尽だなと感じた。久々のスタメン起用だっただけに大﨑自身が1番悔しい思いをしていることだろう。

大﨑の代わりに郷家を投入し、サンペールがリベロのポジションに移る形に。3バックは継続したまま。これを見ると3バックへのシフトは攻撃面もあるけど5レーンを埋め切るという目的の方が割合は高そうだなとは思った。

浦和としてはアウェイゴールをゲットしたのでこのままだと勝ち上がりとなる。なので無理に縦に入れて攻めずに相手を動かしてゲームコントロールする作戦にシフト。神戸としては点を取りに行くためにボールを奪いたいのだけれど前からいけない。なのでイニエスタの存在がネックになっているのは間違いない。かといって外すことは攻撃面でのことを考えると出来ない。フィンクの時もそうだったがこのようなビハインドでイニエスタを下げられないままジリ貧になるのを何度も見てきた。ここが神戸の難しいところでイニエスタに依存したままその脱却法がないというのは神戸の監督の難しいところのように思う。

[付け焼き刃じゃダメなのよ、、]

そのまま時間は経過していくわけだけど、自分達のミスから相手に追加点を奪われる。山口のバックパスに菊池が足を滑らせ、そのまま興梠に決められてしまう。神戸の芝の性質上、滑ることは承知の上でこれまで対応してきた。いかにそれを防ぐ努力をするかにフォーカスされるのだが、その点で防ぐことを怠っていたように思う。例えばバックパスにしても蛍は菊池を見ていないので、菊池が周囲を確認して目を反していることすらも気がついていない。自陣ゴール近くでボールを回すリスクはこれまでのサッカーで十分に理解していたはずだがここに来て、習慣付けしていたプレーが抜け落ちたという見方が出来るはず。引きつけながら回すことの意識をもう一度取り戻さなければならない。また、優勢に立ちたいという思いからか前半よりも縦への意識が高くなってしまっていた。全体の意識が前に向くだけでもポジショニングのバランスは崩れていく。ここを修正出来る大﨑がいなくなったことは神戸に大きな影響を与えていたはず。付け焼き刃の3-5-2復活はこのような潜在的意識の部分でもろに過去との違いを暴露させていく。いきなり復活させてアウトラインは復元できたものの、そのディテールの部分は時間と共に差が出来始めていた。少しの細かなポジショニング、パスの位置などそれまでこだわっていたことにもう一度意識を向けて欲しいと思う。

このまま追加点を奪えず試合終了。1stレグでアウェイゴール2つを献上する形となってしまった。

[まとめ]

いきなりの3-5-2システム変更は浦和の守備を翻弄するのには十分で上手く先制点もとれた。しかし、リカルド・ロドリゲス監督の手腕によりその効果も時間の経過と共に消えていった。指をくわえて戦況を見つめる三浦監督と常に戦況を読み、効果的な手を打つリカルド・ロドリゲス監督の間には大きな差があったように思う。これだけの戦力を用いながら勝てないところを見るに監督の重要性とは計り知れないものであると感じた。さらにイニエスタを出場させるというのはある意味諸刃の剣の側面もあり、その課題を乗り越えるというのが試合に勝つという目的とともに重くのし掛かる。それでもイニエスタが与えてくれる恩恵は素晴らしいものなのでどうにか強い神戸を取り戻したいというのが多くの人の想いなのだ。

試合には敗れたものの勝負に負けたわけではない。突破条件は2点以上が必須というハードルの高いものになってしまったが、この窮地をみんなで乗り越えて欲しい。

ヴィッセル神戸1-2浦和レッズ

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