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2021.3.17 明治安田生命J1リーグ 第5節 ヴィッセル神戸VS川崎フロンターレマッチレビュー

昨年上位陣との3連戦、最後を締めくくるのは昨年の王者川崎フロンターレだった。ここまで2戦1勝1敗と今節の試合でどれだけ勝ち点を積めたかで評価が分かれることもあって今まで以上に重要な一戦となったのは間違いないだろう。昨シーズン1勝も出来なかったが内容自体は悪くなかった相手ではある。しかし、神戸は監督が替わり、スタイルも変わった状態で対戦することになり、勝敗まったく読めない状態であった。しかし蓋を開けてみれば終盤に追いついてのドローであり、川崎はハイプレスに苦戦した様子だった。神戸は自分たちのするべきことをやり通した結果、得られた勝ち点だと思う。お互いのスタイルを最後まで貫き通したがために起こった劇的な幕切れ。そんな川崎戦を振り返っていきたいと思う。

[スターティングメンバー]

お互いに現状のフルメンバーで臨んだ。フェルマーレンは連戦のためメンバー外かと思いきや2戦連続のスタメン起用。この試合にかける思いが伝わってくるメンバー構成だった。

[序盤、ペースを握る神戸]

神戸はキックオフ直後からハイプレスで川崎からボールを取り上げる策に出る。攻撃に定評がある川崎であるがビルドアップは上手くない。なので神戸の2トップは1人がCBにプレスをかけ、もう1人がアンカーのシミッチを監視するようにプレスをかけた。特にアンカーに良い形でボールが入らないようにすることで中央突破を許さないようにすることは意識していたと思う。シミッチが左利きであることを踏まえて左側を切るように寄せて自由を奪う。常にマンツーマンで川崎の選手を前から捕まえに行き、神戸ペースで試合が進んでいったのが前半15分。

[戦術ドウグラス]

川崎としては序盤、相手にボール握られた以上、ハイプレスでショートカウンターを狙いたいはず。しかし、連戦の中で前から嵌めにいくことはなかなか難しい様子だった。神戸はGKの前川からSBにディストリビュートするいつものパターンでプレスをかいくぐる。

川崎的にはSBに届けられるのは許容していたように感じた。そこから中央に通されることや裏を狙われることはマズいという認識だったはず。特にドウグラスのシンプルに相手の背後を狙って起点を作る動きは神戸の一つの狙いであり川崎としてはやられたくない形。この試合を通してドウグラスとジェジエウのマッチアップは非常に見応えがあった。神戸はドウグラスがいるからこそシンプルにロングボールからのセカンドを拾って攻撃につなげられていた部分も大きかった。昨年から川崎戦ではドウグラスが居るか居ないかで大きな違いが生まれる試合ばかりで、昨年のホーム川崎戦の後半やルヴァンカップ準々決勝での大敗を振り返ってみても出場していればまた違う展開になったのだろうなという記憶がある。後ろから丁寧につないでいくことをしなくなった以上、彼に頼った陣地回復は必須。この試合もドウグラスが居なければこのような前半の展開にならなかっただろうなということは容易に想像ができる。

右サイドもまた古橋が旗手をピン止めしているため山川が空いてくる。古橋の背後をケアしてるため旗手が山川に出るかどうか迷っているシーンは多く見られた。

前半26分のシーン、前川から山川にボールが渡り、サンペール古橋とつなぎ落ちてきていた郷家が前線へ動き直し谷口の背後に。古橋が谷口を引きつけてターンし、背後に走り込んだ郷家に絶妙なパスを送り、最後はドウグラスがシュートを放つ。古橋に対する川崎のマークは試合を通してきつかったがこのシーンは郷家の上下動から決定機を作った。このような飛び出しはもっと増やしても良いと思う。例えば左で酒井、井上、山口で作りながら逆サイドに展開するパターンは多いが、そこからガンバ戦のゴールシーンのように背後を狙うことも出来るはず。そうすれば山川も高い位置でボールを受けることも出来るようになると思う。

[川崎のボール保持]

川崎の攻撃パターンは基本サイドから打開するのが主となる。IHの二人がバランスを崩して打開していく。一人が最終ラインに落ち、一人が前線に張ることでサイドのトライアングルで裏抜けや逆サイドに展開するための時間を作る。脇坂が最終ラインに落ちる動きや旗手がインサイドで受けるなど神戸のハイプレスを掻い潜ろうとする。そこにシミッチもポジションチェンジに加わり、打開していこうという意図が見えた。

この試合では川崎のストロングである三笘に自由を与えなかった。筑波大学の同期である山川が三笘にマッチアップした。お互いの特徴を知っているからこそ僕らが知らないところで駆け引きが行われてたはずだが、それでも三笘に突破されることも少なくはなかった。しかし、菊池のカバーリングはこの試合では冴え渡っていた。とにかくスライドが速く、三笘に縦への進撃を許さなかった。スライドしたスペースは山口とフェルマーレンがカバーすることで川崎の攻撃の芽を摘んでいく。

神戸はスライドで同サイドに人をつぎ込んでいくため、もちろん逆サイドはフリーの選手が出来る。こうなれば川崎は逆サイドへのサイドチェンジを選択するはず。しかし、この試合ではなぜか谷口の逆サイドへのフィードは見られなかった。旗手がインサイドに入ることが多かったのでサイドチェンジをする機会は多かったが、そこに立ちはだかるのが山口蛍。徹底的に同サイドに追い込み、逆サイドを切っていた。山口が激しく寄せていくのでもちろんを逆サイドは山口を超えれば広大なスペースが広がっているわけだが、それをさせないのが山口蛍の凄さ。

飲水タイム明け、川崎は大外の家長が左サイドに入ってくることで密集させて数的優位をつくり打開を図った。この変更あたりから楔のパスを頻繁に通すようになっていたが神戸の守備陣が体を張り水際を塞いでいく。

前半37分に川崎にビッグチャンスが訪れる。前線からのプレスで前川のロングボールを回収し、家長がパスを受けて収めたところからダミアンのダイビングヘッド。惜しくも枠を外し神戸としては九死に一生を得た。前半30分あたりから川崎がプレスで試合の流れを引き寄せていただけに神戸としてはここで点を決められているとマズかった。そして両者スコアレスのまま前半を終える。

[交代で回復した川崎のプレス]

後半8分に試合が動く。川崎が前半に機能不全だった右サイドからゴールネット揺らす。田中がキープし酒井の裏へパスが通り家長がクロスを上げる。ファーサイドに飛び込んできたダミアンがヘディングシュートし、ゴール。だが、惜しくも家長がオフサイドポジションに居たため、ノーゴール判定となる。神戸の左サイドは右サイドに比べてスライド激しくない。川崎の右サイドに三笘のようなドリブラーがいないからだ。本来、川崎はこのような形でブロックを崩していきたかったはずだが、神戸の右サイドには山川と菊池がいるためこのような崩しを行うことが困難だった。それでも72分、前川のキックミスから川崎がボールを拾い、ダミアンがピッチ中央からロングシュートを放ち、ゴールに吸い込まれる。

後半16分にドウグラスが前半の負傷の影響からか増山と交代してしまう。頼みのロングボールもドウグラスが居なくなってからは鳴りを潜め、川崎のプレスに屈してしまう場面が散見されるように。後半32分には神戸が井上とサンペールに代わって佐々木と藤本、川崎がシミッチと脇坂に代えて塚川と橘田を投入。神戸としてはサンペールと井上が居なくなったことによりよりボール保持が厳しくなる。さらに川崎は中盤を交代させたことでプレスに勢いが増す最悪な展開に。それでもフェルマーレンのロングボールから古橋の裏抜けや古橋のボール奪取からビッグチャンスを立て続けに作る。しかしあと一歩のところでゴールを奪うことが出来ない。

このまま敗戦濃厚かと思いきやラストプレーで神戸が同点に追いつく。後半アディショナルタイム10分に初瀬のピンポイントクロスから菊池がヘディングで押し込み、最後の最後で勝ち点1を手にした。

[まとめ]

川崎の連勝をストップさせた神戸は自分たちのするべきことをやりきった試合だった。試合の序盤から激しくプレスをかけ、相手の自由を奪い続けた。個の能力が突出した選手が川崎には多く居るためやりきること自体が難しいことは想像がつく。それでも複数失点を避け、最後に追いついたことは見事だった。特に菊池と山口、フェルマーレンはこの試合で抜群のパフォーマンスを見せていたように思う。CBコンビは三笘をほぼ完璧に抑え、今の川崎のストロングを力でねじ伏せるだけの実力があることを証明した。彼らが三笘封じに力を注ぐことが出来たのも中盤での山口蛍の存在は非常に大きかった。中盤で逆サイドに展開される前に潰してしまうことで川崎に自由に攻撃をさせなかった。

川崎としては試合のクローズの仕方に課題を感じたのではないだろうか。神戸が同点に追いつく直前のプレーで小林がスローインを急ぎ、神戸側にカットされたところから追いつかれた。川崎の方針としては2点目、3点目を取りに行くことを掲げているため、点を取られことよりも点を取れなかったことを悔やむのは仕方ないことである。しかし、一点差で試合終盤を迎えることも出てきた際に小林のスローインのシーンはスタイルとは別に各選手の個人戦術に問題がはらんでいるような気がする。(川崎サポではないのでここまでにしときます。)

なにはともあれ菊池は昨年のリベンジを果たすこととなった。昨年の試合終盤で逆転ゴールを献上したあの日から終盤の同点ゴール持ち込んだことを考えればかなり胸熱なゴールだった。

攻守共に貢献したど根性菊池流帆あっぱれ!!

ヴィッセル神戸1-1川崎フロンターレ

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