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2021.4.7 明治安田生命J1リーグ  第8節 ヴィッセル神戸VS大分トリニータ マッチレビュー

アウェイ仙台戦から中3日で迎えたホール大分戦。仙台戦から始まったリーグ5戦でどれだけ勝ち点を稼ぐかで順位の行方が左右されると書いたが、結果は1-0での2戦連続無失点勝利を達成した。さらにリーグは3連勝とヴィッセル神戸にしては出来過ぎるので驚きが隠せない。かなりボール保持をされる時間が長く、苦しい時間も続いたが粘り強く守って勝利を手にしたのは今までに神戸にない特徴なのかもしれない。1点を守り切るということがどれだけ大変かをここ3年経験しているだけに新たな特徴が出てきているのは事実だ。それではその試合内容を振り返っていきたいと思う。

[スターティングメンバー]

前節からは2人が代わり、井上と小林がスタメンに名を連ねた。古橋は2戦連続でトップ起用となった。

[相手ボランチ脇の攻略]

大分は守備時は5-4-1で撤退守備から入る。ボールを持たしても最後の局面で守り切れると踏んでいたのだろう。古橋の裏抜けさえケアしておけばいいというのは前から行くよりも理にかなっていた。

サンペールと山口のどちらかが落ちることによって町田と渡邉を釣りだし前進するというのが最初のアクション。大分のシャドーはボランチとの段差が出来やすく、そのギャップは狙い目であった。サンペールが落ちることでCBに時間とスペースを供給。前半5分に山口がCB-WB間をフリーランして小林がロングボールを送るプレーが見られたり、山川がインナーラップして受けようとしたシーンもあったのでシャドーが出てくればボランチ脇を突く。出てこなければシンプルに背後を狙うという使い分けは出来ていたと思う。

前半11分に早くも神戸が先制する。サンペールが伊佐を剥がしたところから山川に展開。サイドに揺さぶられたことで大分はリトリートせざるを得なくなり、難なく1stラインを突破する。SBの位置に降りていた山口がそのままフリーで受けイニエスタかと思えるような浮き球パスを古橋に供給。これをバックヘッドで決め、幸先よく先制点を取ることが出来た。ただ気になるのは井上のポジショニング。サンペールとかぶっている上にあそこでボールロストすると2人がおいて行かれてる状態なだけに非常に危険。さらに展開した先で山口が古橋へのパスを選択したものの、もし酒井へのパスを選択していれば3人めの選手が居ないことになる。フリーマンで相手が捕まえにくい利点はあるが自分達の攻撃を停滞させる足枷になってしまうことも頭に入れておかなければならない。

大分は失点後、前線からのプレスをするようになる。シャドーの町田がCBの小林にアプローチし、GKの前川まで戻せば伊佐がアプローチをしに行く。

そうなれば神戸としては前川の有効活用していくのがデフォルト。しかし、いつものように酒井につけるのでは無く、山川の居る右サイドにつけていたのが今回変更してる点だった。おそらく、アウェー札幌戦のように山川の長身を活かしたかったのだろう。プレス回避はこれである程度、成功していた。

[大分のビルドアップ]

大分のビルドアップは基本的に3CB+2CHがベースとなり、両脇のCBはSBの位置まで開いている。そしてCHに上手く入らなければシャドーの町田と渡邉が降りてくることによって縦へのポストを使いながらフリーマンの選手を作るのが特徴。そこから裏へのボールを使ったり、ポストからフリーで受けたCHから大きな展開で一気に進むやり方がある。

しかし、序盤は神戸の前からのプレスに苦しみ、なかなかビルドアップが出来なかった。神戸は3枚のCBに対し、2トップ+SHでプレスをかけ、基本的に前から人を捕まえるスタイル。なのでシャドーが降りた場合、CBも連動してボールを奪いに行く。序盤から町田が降りてきてボールを受けるシーンがあったがそれを小林がついて行き、自由にさせなかったことで神戸が主導権を握る時間が多くなった。

そこで大分は20分過ぎからGKの高木を交え、刀根が2トップの間に立ってビルドアップを行うようになる。そうすることで三竿と羽田がドリブルで運びながら1stラインを突破し、SHやシャドーにボールが渡るように。大きなサイドの揺さぶりから神戸を押し込むようになっていき前半38分にクロスバーを叩くシーンを作る。神戸として決められると流れを持って行かれるため助かったシーンではあった。

後半に入っても大分は5人でのビルドアップからいかにシャドーの選手にボールを良い形で入れるかあるいはCHに前を向かせるかは考えながらビルドアップをしていた。特に2トップの間に小林が顔を出すようになって三竿ー下田へのパスラインは後半も通じて開通していた。神戸は相手の陣形に関係なく前から捕まえることは継続しているがそれが原因で回され続けるとどこかにほころびが出てきてしまう。中途半端にリトリートしている時間があり、そこから大分に前進されることが多くなってしまっていた。

後半18分には刀根から小林に縦パスが入り、そのままCH裏を取られてしまい、盤面をひっくり返されてしまう。このシーンも神戸は前から人数をかけてボールには行っているが奪いに行く姿勢は見られず、中途半端な対応になってしまっている。大分が数的優位を作りながらビルドアップを行っているため奪いどころを作れていなかったのが後半の立ち上がりから飲水タイムまで続く。大分は自分達の流れと見るや長沢をターゲットマンとして投入し、得点を取りに行く姿勢は見せる。

[増山投入で増えた選択肢]

後半15分、中坂に代わり、増山が投入される。この交代の意図は右サイドでの起点を作りたかったと言うことだろう。山川の落としから中坂が前を向くことは後半になって見られなくなっていたので増山でボールキープ出来たことは大きかった。

後半27分には増山のダイアゴナルランからポケットで受けたことで大分のラインを下げることができ、最後は山口のシュートに繋がった。このような動きは中坂には出来ないし、背後で受けた際も無理矢理シュートを打つのではなく中の様子も把握してパスを出したのは非常に良かったと感じた。

大分もその後攻めるものの最後の部分でクオリティーが低く、得点になかなか繋がらない。さらには後半43分に前川と交錯し、負傷交代となってしまう。この場面は大分に上手く崩された場面だっただけに前川の勇気ある飛び出しによって救われた。そしてこのまま試合は進み、試合終了。1-0の完封勝利で3連勝となった。

[まとめ]

2試合連続完封勝利はいつぶりなのだろうかと言うぐらい久しい。前からの連動したプレスでの試合を上手く運んだ15分間の間に点が取れたことは神戸が余裕をもって試合を終わらせることが出来た一つの要因だろう。しかし、同じようにボールを握りたいチームにまたもやボールを長く握られてしまったことは反省点である。この試合で大分としては質の違いを局面ごとに感じたことだろう。逆に言えば神戸は質の高さで保っているということを考えなければならない。古橋はトップで起用することで点を取ることに集中出来ている。このまま得点をとり続け勝利に導いて欲しい。次節はロティーナ率いる清水エスパルス。ロティーナのゾーナルディフェンスには苦労しているのでなんとしても勝ち点3を手にし、上位に引き離されないようにしたい。

ヴィッセル神戸1-0大分トリニータ

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