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2021.6.19 明治安田生命J1リーグ 第19節 アビスパ福岡VSヴィッセル神戸  マッチレビュー

約3週間を経て、再開されたリーグ戦。折り返し地点まで残り2節を残し、今節対戦したのは順位が1つ上のアビスパ福岡だった。今季5年ぶりにJ1に復帰した福岡は堅守速攻を武器に現在5位につけている。6位ヴィッセルとの差は勝ち点わずか1という状況で迎えたため、上位戦線生き残りを賭けた大事な試合となった。

[スターティングメンバー]

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神戸はルヴァン浦和戦と同じく4-3-1-2の中盤ダイヤモンド型を採用。代表帰りの古橋がさっそくスタメン起用となった。福岡はお馴染みの4-4-2。LSBは志知がベンチ外ということもあり、輪湖を起用した。

[立ち上がり早々に先制点]

神戸は序盤からサンペール落としてのビルドアップを実行する。数的優位を最終ラインから作ることで前進を試みた。そしてさっそくその効果が現れ、前半2分に先制する。

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先制点のシーンは菊池がコンドゥクシオンで運び、2トップのマークを曖昧にしたところから始まっている。山岸が釣られたことでB・メンデスとの距離感は遠くなってしまい、サンペールがドリブルで1stラインを難なく突破する。そこから酒井がフリーで受けてCBとGKの間に流し込むお手本のようなクロスから最後は古橋がフィニッシュ。まさに電光石火の一撃。理想の形から点が生まれ幸先良く試合を優位に進めることが出来た。

[初瀬のアイソレーション]

序盤から頻繁に見られた形は初瀬とクルークスの1on1。大外に張っている初瀬にボールが届けられ、何度もクルークスとの1対1を制してクロスを上げるシーンは散見された。このように質的に殴ることが出来るように持っていってあげるのが初瀬の使い方として1番適切だと思う。ビルドアップや守備面ではやや課題が残るもののアタッキングサードでのオプションとしては捨てきれないのは確か。なので初瀬まで届けてあげるビルドアップを構築することで両サイドからの攻撃はより厚みが増すと考える。先制点はRSB酒井からのクロスであり、福岡としては両サイドのクロスにドウグラスが合わせることは脅威だったように思う。しかし、このクロスを見事に弾き返し続けたのがD・グローリー。ドウグラスにいい形でヘディングさせないように体を寄せて跳ね返す。なので先制点のように早いタイミングでのクロスやマイナスのクロスなど質を変えることを試みていたものの先制以降、決定的なチャンスは生まれなかった。

[試合を上手く進めていたのは福岡]

試合全体を通して上手くゲームを進めたのは明らかに福岡の方だったと思う。初瀬のクロスからチャンスを試みていた神戸だったが福岡からするとゴールから遠い場所でのチャンスクリエイトは許容しており、中央から侵入をできるだけ避けたいというのが思惑だったはず。そして上手く守ってカウンターを仕掛けるというところはかなり意識していたし、実行してシュートまで持っていくことが出来ていたので同点後の試合運びは狙い通りだった。ただ気になるのは2トップと中盤の間が間延びしており神戸としてはビルドアップしやすかったという点。おそらく古橋の裏抜けをケアしていたこともあり、全体的に距離感は遠いように感じてしまった。それでも最後の局面でやらせなければ良いというのが福岡のやり方なので追加点を許さなかった以上は成功と言っても良いのかもしれない。

[もっと前川を絡めて運んでほしい]

前半、後半通して神戸がうまくいっていない時間帯はSBが高い位置を取れていない時だった。福岡のSHはボールマンに対して強くアプローチしてきており、神戸としても剥がせばチャンスになるが面食らうとそのままカウンターに持ってかれるシーンもあった。SHに迷い与える選択肢としてはCBとSBの両者を見させることと中央のケアも意識させること。そうなれば対応が曖昧になってくる。ということはサリーダしているサンペールをアンカーの位置に置いておくことで複数選択肢をさらに突きつけることになる。そのために福岡のようなどっしりと構えてブロックを作る相手には前川を絡ませてのビルドアップは有効的だと思うし、前川のの技術の成長にも繋がるはず。配置だけが全てではないが、目の前の勝利と今後への成長を意識することは必要だと思う。

[右サイドでも見せる酒井とイニエスタ]

ここ最近、酒井がRSBを担当することが多くなっているがイニエスタとの連携はサイドが代わっても抜群だった。常に神戸のストロングポイントとなっていた2人の強みは複数人の相手を翻弄するボールスキルと敵を欺く連携だと思う。それをまさに体現したのがPK を獲得したシーンだった。

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後半33分、イニエスタと酒井でDFを3人引きつけてサイドを攻略したところから最後は杉本のハンドをとってPK を獲得。イニエスタが3人の視線を集め、バックドアで酒井に出したところは白飯三杯はいけるほど美しかった。福岡が中央を固めているためサイドからの攻撃しか糸口がなかった神戸は初瀬のクロスも効果的に使えていたわけでもなかったのでこのままジリ貧で終わるかと思っていたが質で殴って追加点をあげることが出来た。

このまま最後は福岡にパワープレーで押し込まれ、ヒヤヒヤする場面を作り出すもなんとか水際で防ぎ、敵地で勝ち点3を手に入れた。

[まとめ]

見事上位対決を制した神戸はリーグ戦3試合負け無し。ルヴァンカップと天皇杯で試行錯誤しながら試した新しいシステムもある程度機能したように思う。しかし、ポジションバランスは未だ改善されていないのだがこの課題はいつまで放置されたままなのか。サンペール、イニエスタなどタレントが揃っているからこそその課題は内包されたままのように感じた。現にイニエスタと酒井の能力で2点目はもぎ取ったので勝てたが試合を通して福岡も自分達のやりたいことが出来ていたように思えた。ソリッドに戦ってくる相手に対してこのメンバーであれば相手のヤル気が削がれるくらいまで良い試合をしなければならないと思う。勝ったことは素直に喜ばしいことだが「勝って兜の緒をしめよ」という言葉が今の神戸には1番しっくりくる言葉なのかもしれない。

アビスパ福岡1-2ヴィッセル神戸

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