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2021.5.22 明治安田生命J1リーグ 第15節 浦和レッズVSヴィッセル神戸 マッチレビュー

前節セレッソ大阪戦で終盤に追いつき、勝ち点1をもぎ取った神戸はアウェーで浦和レッズと対戦した。今季からリカルド・ロドリゲスを招聘したこともあり、今季1番ホットなクラブである。同じようなサッカーを志すチーム同士という対戦だったこともあり、負けたくない気持ちを持つ人は多かったはず。結果は0-2での敗戦となり、3試合連続勝ちなしという状況になってしまった。

[スターティングメンバー]

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神戸はイニエスタとリンコンそして飯倉がリーグ戦今季初スタメン。今季のベースである4-4-2ではなく、4-2-3-1でスタートした。浦和は小泉がベンチとなり、最終ラインには元神戸の岩波と西がスタメンに名を連ねた。

[詰まる浦和と押し込む神戸]

神戸も浦和もお互いにクローズに試合を進めるという意識は強かった。特にイニエスタがスタメン起用された神戸はハイプレスをかけるというよりもテンポを落としてボール保持の時間を長くしたい意図は見られた。前半ペースを握ったのは神戸だった。浦和はボール保持をしても効果的なパスや動かし方は少なかったように思う。

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序盤、浦和のビルドアップは西を落としての3バック。ここで誤算だったのはイニエスタ起用による神戸の方針転換だろう。ハイプレスでボールを刈り取りに来る神戸なら3バックでズレを作りながら前進出来ると考えていたのだろうが、イニエスタが居ることでコースとスペースを埋める守備に変えていた。そのため大外に張る田中でノッキングすることに。プレス耐性の弱い田中ならスペースを埋めておけばそこからの前進はないという点においては合理的だったように思う。これで浦和は右サイドが機能不全に。左サイドは汰木と明本がレーンを入れ変わりながら背後を狙う。しかし、こちらのサイドは伊藤が中でパスを受けても前を向けないため外に押し出されていく。それによって中から崩すことが出来ない状態に。

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前半18分、浦和は阿部を列落ちさせ、SBの西を一列前にあげることに。田中と西で酒井とフェルーレンを釣りだし、背後に武藤がランニングすることで最終ラインから前進することが出来た。しかし、効果的な前進はこの背後を狙う形だけだったように思う。

神戸がボール支配率を高めた理由は飯倉とイニエスタの存在が大きかった。おそらく三浦監督が飯倉を起用したのもビルドアップの安定を図るものと思われる。それに加えイニエスタの戦術眼と抜群のポジショニングセンスを遺憾なく発揮したことで浦和は簡単にプレスを空転させられる。

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神戸は基本的に3バックでビルドアップを行う。飯倉と2CBでのビルドアップを行うことで中盤の枚数を確保しながら前進するほか山口あるいは酒井が広がることで田中を引っ張り出しそのスペースにどちらか一方が入ることで中盤も数的優位に。

本来であればイニエスタはもう一列前で受けるのがベターであるが浦和がオープンな展開を好まず、リトリートを早めに選択したことでビルドアップ時にサンペール役を担ったとしてもポジションを修整する時間を確保できたことが大きかったと個人的に思う。それでも神戸もなかなかゴールを奪えば勝った。

結果論にはなるが今日はリンコンの日ではなかった。あれだけ押し込むことが出来てたのであればドウグラスか藤本でフィニッシュを託す方が良かった。古橋とリンコンはプレーエリアが被るシーンが多く、最後の精度を欠いていた。リンコンは前線で張らずに落ちてきてボールを受けたがる傾向があるのでその分深さは出来にくかった。さらにはコンディションのところもまだまだな部分もあり大事な局面でのミスが散見された。

[小泉、柴戸投入で一気に形勢逆転]

後半、浦和は武藤と阿部を下げ、小泉と柴戸を投入する。ボール保持での改善という点での交代なのでこの二人がいつか入ってくることは大方予想出来たことではあったがこの2人から一気に浦和ペースに。

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後半2分に早くも神戸は失点する。三浦監督は気の緩みという抽象的な表現でしかこの失点を分析出来ていなかったがしっかり浦和に構想的に殴られている。岩波から逆サイドにロングフィードで大きく展開し、大外の柚留木へとボールが渡る。この展開は後半になってリカルドロドリゲス監督が修正を加えた点ではあると思うが、前半、明本の裏へのフリーランを活用していたのは同サイドにボールがある時のみだった。後半に入って最終ラインからフリーマンを作り逆サイドへ振ることで神戸の陣形を揺さぶることになった。その影響でこの後の展開から明本に山川と佐々木が付いていくこととなり、結果郷家が佐々木のカバーリングとして汰木について行ってしまった。あれだけ揺さぶられると適切なポジショニングをとり続けることはまず不可能であり、あの展開が続けば失点も時間の問題ではなかったのだろうか?

そして小泉が入ったことにより浦和のボール保持が改善される。

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後半13分に中央の伊藤にボールが入り、神戸がアタッキングサードまで前進されてしまうシーンがあるのだが伊藤にボールが入る直前小泉が降りてきて数的優位を作り最終的には伊藤への対応が遅れてしまう。このように小泉は右でも左でもフリーマンとしてパスコースを増やすことで浦和の潤滑油となっていた。小泉がいることで入れば危険だし入らなかったとしても他の選手が空いてくるので非常に厄介。リカルド・ロドリゲス監督が徳島時代に渡井に与えたタスクと似ていた。マンチェスターシティで言えばベルナルド・シルバのようなフリーマンタスクに似ているのかもしれない。これによって神戸はボールを奪うことが出来なかった。

[イニエスタを起用する代償を大きく払うことに]

この試合でのイニエスタはまさにスーパーな活躍だった。しかし、展開としてはそれがネックとなる。それはビハインドを追ってボールを奪わなければならない展開になったときで、まさに浦和戦はそのような展開となった。イニエスタがいると以前のお気持ちハイプレスは実行できないのでボールを奪う術がない。となるとボール保持をし続ける展開にしたいのだけれど全体でロンドを形成しながらボールを動かすことを神戸の指揮官は否定しているため為す術無し。以前の清水戦で記載したが「粘り強く同点にできているのはフィンク期とは違い不確定要素が存在する状態だから。」というようなニュアンスを言葉として表現させていただいた。不確定要素が存在するというのはイニエスタが不在の時だ。イニエスタが居なければハイプレスでわざとオープンな展開にすることができる。それによって自分達の攻撃時間を持ってくることが出来る。しかし、イニエスタが居るとハイプレスは出来ないのでボールを握られ続けると防戦一方になる。だからこそイニエスタがいるのであれば引きつけながらボールを回して相手の攻撃時間を削るという策がとられているとも言える。フィンク監督もここで大きく頭を悩ませていたはずで三浦監督になってから粘り強くなったというような根拠ほとんど無いと個人的に思う。

古橋の背後へのランニングも陰を潜め、終盤に追加点を挙げられ終戦となった。

[まとめ]

古橋の背後へのランも陰を潜めてしまった。それは自分達のボール保持の際に降りてくることが多くなったからだと思う。引きつけずにボールをリリースすることによって相手選手は神戸がどこに出すか大方予想がついているのでアプローチに行きやすくなる。なので詰まる場面が多くなり結果的にビルドアップに人数をかけてしまうのだ。CBがボールを持っている時間が長くなると得点する機会は減少するのは必然でまさに神戸がその例に当たるだろう。バックパスも横パスにしても浦和と神戸では意図が全く違うことが明らかだった。これは選手の質の差ではなく、監督の差。これに尽きると思う。負けた時に選手を鼓舞しながら挨拶に一緒に回るリカルド・ロドリゲス監督と負けたときに選手の責任にし、怒りを露わにする三浦監督の監督としての器の大きさも関係するのかもしれない。我々は常にチャレンジャーであるということを忘れずに選手達には頑張ってもらいたい。

浦和レッズ0-2ヴィッセル神戸


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