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Wes Montgomery 「A Day In The Life」 (1967)

今回は久しぶりにジャズをご紹介致します。
オクターブ奏法であまりにも有名なウェス・モンゴメリー。多くのギタリストに多大な影響を与えたウェスですが、実はレコーディングの活動期間は10年ちょっとしかありません。
1959年にリバーサイドから初のリーダー作を発表。1960年発表の「The Incredible Jazz Guitar Of Wes Montgomery」でウェスは広く知られる存在となり、1961年のダウンビート誌の人気投票では1位を獲得。いかに彼の人気が凄かったのか、お分かり頂けるとかと思います。

バリバリのビ・バップ系ジャズをやっていたウェスですが、自身もマンネリ化に悩んでいたらしい。そこにヴァーヴのプロデューサーだったクリード・テイラーが、オーケストラと共演するというアイデアを持ち込みます。特にドン・セベスキーの編曲・指揮によるオーケストラとの共演、1966年発表の「California Dreamin'」は、当時ヒットしていたママス&パパスの「夢のカリフォルニア」を中心とした、一般的に親しみやすい仕上がりとなり、逆にそれが賛否両論を巻き起こしました。大衆ジャズ…みたいと言われたりとか…。

その後、クリード・テイラーがA&Mへ移籍し、新たに新しいジャズを発表すべくCTIレーベルを設立。当然、そこの看板スターはウェスであり、CTIレーベルから「A Day In The Life」「Down Here on the Ground」「Road Song」を発表。3枚ともドン・セベスキーの編曲・指揮によるゴージャスなジャズ・アルバムに仕上がり、後にイージーリスニングのはしり、フュージョンの先駆けとも呼ばれるようになったのでした。

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このCTI3部作はどれもジャケットが印象的なんですが、特に本作はカッコいい!
ピアノはハービー・ハンコック、ベースはロン・カーター、ドラムはグラディ・テイト。贅沢なメンバーとゴージャスなアレンジによる最高なムード音楽(ムード音楽という呼び方が妥当かは分かりませんが)。

アルバムトップはビートルズのカバー、①「A Day in the Life」。
もちろん名作サージェントペパーズに収録されていた名作なんですが、サージェントは発表が1967年6月。そしてなんと本作レコーディングも1967年6月!つまりビートルズのアルバム発表と同時に、すぐにカバーされたということなんですね。
混沌とした雰囲気はオーケストラでもうまく表現されてますし、ウェスのアドリブも冴え渡ってます。この曲については、気楽に聴けるイージーリスニングとは一線を画す、ちょっと緊張感も入り混じった仕上がりですね。

②「Watch What Happens」は良質なイージーリスニング調の楽曲。
もともとは1963年の映画「シェルブールの雨傘」で使われた楽曲。フランスを代表する作曲家、ミシェル・ルグランの曲です。原曲はミシェルが率いるオーケストラが、優雅に、ノスタルジックに仕上げたナンバー。ウェスはそれをかなり小粋なイージーリスニング調にアレンジ。個人的には原曲よりも素晴らしい出来栄えと思ってます。

本作唯一のウェスのオリジナル作品の⑤「Angel」。
ウェスって、いいメロディを書く方なんですよね。ここでもしっかり歌うようなメロディを奏でてくれてます。そのオクターブ奏法のメロディをなぞるように、ドンのオーケストラが優しくカバーしてくれてます。

前述の「California Dreamin'」と同路線の⑧「Windy」。
ソフトロックの雄、アソシエイションのカバーですね。アップした映像、ウェスがTVショーに出演した際の映像。根っからのジャズファンがこの映像を見たら、どう思うのでしょうか。やっぱり大衆ジャズと捉えるのでしょうかね。私はソフトロックが大好きなので、こうした音楽、すごく好みなんですがね。それにしても微動だにしない観客も怖いなあ。

当時、流行りつつあったボサノバタッチの⑩「The Joker」。
オーケストラアレンジが結構スリリングですね。

これからの活躍が大いに期待された1968年6月15日、ウェスは心臓発作でこの世を去ってしまいます。彼が生きていたら、ひょっとしたらジャズやフュージョンの歴史がまた少し変わっていったかもしれません。残念ですね。

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