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仕事を辞めたと言えた日

こんにちは、ゆのまると申します。

今回は、母とのお話です。

◆◇◆

ここ3か月ほど、体調を崩したことを母に隠しているのが、ずっと心にひっかかっていました。

定期的に安否確認の電話やLINEが来ていましたが、「ぼちぼちやってるよ~」とあいまいな返事をし、会社もテレワークにならず出勤しているという設定で話をしていました。

言えなかった理由はただひとつ、母とのやりとりがストレスだったからです(母との関係性については、『田舎娘と母の距離感』『続・親不孝娘のひとりごと』なんかでお話させていただいています)。

ただでさえ心身ともに安定させるので必死なのに、これ以上心配事を増やしたくない。その一心でした。カウンセリングを受けている心理士の先生も、転職経験のある友人も「もういい大人なんだし、会社を辞めたことくらい事後報告でいいんじゃない?」と言ってくれ、その言葉にありがたく甘えることにしていました。

しかし、このほど会社を退職したことで、カミングアウトしたい気持ちの方が大きくなりました。チャンスは、夫が整体に行く日。夫が不在の間にゆっくり話ができるし、もし落ち込んでしまったら帰ってきた夫にも、そして今日行く整体のお姉さんにも励ましてもらえばいい。あまり気負いたくなかったので事前に夫には言わず、しかし自分の中では2日ほど前から心の準備をしていました。


そして、昨晩。ハウルを流しながら母に電話。ソフィーがハウルの城にやってくるあたりでした。

「ごめん、今ちょっといいかな。仕事のことで、言わなきゃいけないことがあって」

私が言いたかったのは、みっつ。

1.メンタルやったり、退職したりしたのは母のせいではないこと。

2.倒れてからお酒飲まなくなったけど、「おめでた?」と聞かないでほしいこと。もし子供ができたらちゃんと伝えるから。

3.仕事を辞めたと、次兄には言わないでほしいこと(結婚式の時に修復不能なほど揉めたため)。

たどたどしく、実はさ、とぽつぽつ告げる私に、母はこれまであまり聞いたことのない真剣なトーンで話を聞いてくれました。

電話の時間は、10分程度。案の定「公務員辞めるなんてもったいない」「相談してくれなくて少し寂しい」とは言われました。でもそれよりびっくりしたのは、「今まで言えなくてつらかったでしょう」と言われたこと。お母さんとのやりとり自体がしんどかったんだよ、と思うだけにしておきました。

思っていたよりも平和に終わり、急に眠たくなってしまうくらいの安堵感を覚えました。その後は、ちょうど帰ってきた夫と「ジブリはやっぱりすごいね」と言いながらハウルを鑑賞するなどしました。面白かった。

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今回、カミングアウトできたのには、信頼できる心理士さんに出会えたことや夫のサポートはもちろんなのですが、大きくふたつの理由があります。

ひとつ目は、ここ、noteです。

昨年からnoteを始めて、バンドリやポケモンや家族のことや野望のことなど、いろいろなことを書いてきました。そして実感するのは、「自由に楽しく続けられている」ということ。

以前、アメブロをやっていた時期があるのですが、その時は「趣味を満喫している恋人に憧れて、何者かになりたがっている自分」をバリバリに意識して、演出でたっぷりデコレーションした文章しか書けていませんでした。サイト自体は残してあって、今でもたまに読み返したりします。悪くはないけど、全然楽しそうじゃない。そんな文章ばかりです。

でもnoteでは、誰の目も意識せずに書き始めたということもあって、かなりのびのびできています(実際の自分はもっとどろどろでぐちゃぐちゃで社会不適合な発言ばかりしますが)。

今回も、「もし何か言われて傷ついたり落ち込んだとしても、その気持ちを書けばいいや」という思いがあり、だいぶ気が楽になりました。結果的には、悲嘆にくれる内容ではなく皆さまに感謝を伝えられる記事になりそうで、ほっとしています。


そしてnoteから受けた影響のもうひとつとして、子育て終了世代の方の文章を読む機会が増えたということがあります。

今までも、会社の40,50代の方と接する機会はありましたし、仲のいい飲み友達のひとりは40代半ばでした。しかし、あくまで「上司と部下」もしくは「会社の同僚」に過ぎません。飲み友達とは、元彼や家族のことを話したり、飲みだけでなく遊びに行ったりもしましたが、「どういったことを考えているのか」「何に感動したか」という話題にはなかなかなりませんでした。

しかしnoteでその世代の方の文章に触れることで、親から子への愛情に気付いた……というわけでは決してなく。少し言語化するのが難しいのですが、「ああひとりの人間なんだな」と思えたんですよね。

私の母はとにかく「家族第一」の生活をしていて、趣味や友人の話はほとんど聞いたことがありません。父が思ったより早く亡くなってしまったことや、高齢の両親(私の祖父母)がまだ健在であることなどから、現実的に自分の時間が取れない、ということもありますが。

そういった母の姿を見て、「お母さんも自分の時間を大切にしてね」と事あるごとに伝えていたのですが、「母と娘」という枠組みに強く当てはめていたのは、外ならぬ私だったのかもしれません。

それらの文章を読んだり、毒親関係の本を読んだり掲示板を見たり、それらの積み重ねで「ほどよい距離感」を保てるようになった気がします。前だったら、「今まで言えなくてつらかったでしょう」「気付いてあげられなくて情けない」なんて母に言われたら自責の念で死にたくなっていたはずです。今なら、「お母さんはそう感じるのね。でもその時の私にはできなかったから、仕方ないんだよ」と思えます。ちょっと解放されたかな。

◆◇◆

大きな理由のふたつ目ですが、夫の価値観に少し影響されたというのがあります。

夫の信条は、「人には期待しない」。少し寂しい考えだと、以前の私は思っていました。

でも、「人間関係のいざこざは人に期待しすぎるから起こるんだ」と考え始めると、いろいろなことが納得いくようになりました。

小さなことで例えると、「なんであの人は使い終わったトイレットペーパーを変えてくれないのかしら」。大きなことで例えると、「どうしてあの人は二人の将来を真剣に考えてくれないのかしら」。

これらはたぶん、「自分はそうしているんだから相手も当然そうするはず」という考えから起こる悲しい思い込みです。


以前感想を書いた『阿佐ヶ谷姉妹ののほほんふたり暮らし』というエッセイの中で、姉のエリコさんが似たようなエピソードを紹介されています。

同居を解消し、一人暮らしをするようになった後(といってもお部屋は隣同士)みほさんがシチューを作っていて、エリコさんは副菜やスプーンなんかを並べて待っていたのに、みほさんが自分の分のシチューしかよそってこなかった、ということがあったそうです。(あれ、自分が作ったらみほさんの分もよそうのにな)とエリコさんはぐらつきます。無性に切ない気持ちになったエリコさんですが、ふと、こう考え始めます。

「私だったら、持ってくるけど」という考え方が違っているのかしら。
私がそうしているから、あちらにもそうしてもらえるものだと思っている所から、ものさしが狂い始めるのかも、と。
実際夫婦でも家族でもない2人が、たまたま生活様式を共にしているだけで、本来は個個。むしろ、私がみほさんにしている事は、頼まれてやっている事でもなく、こちらがよしとしてやっている事なのだから、それを相手に勝手に求めて勝手に腹を立てたりするのは、変な話で。やってもらう事は「必須」ではなく「サービス」なのだ。

(『自分の分だけのシチュー』より)

これは姉妹でもパートナーでもない阿佐ヶ谷姉妹の出来事ですが、夫婦だってもとは別人。過度な期待は、自分を疲れさせるだけですよね。

私は今回、母に「伝えたいみっつのこと」を言いました。もしかしたらビックリしていてあんまり伝わっていないかもしれませんが、どう解釈して、どう行動するかは母次第です。私は私のやりたいことをした。だからこれ以上は何もできないし、もし母が「かわいそうな娘」に援助をしたいと思ったら、それは母がやりたくてやっている事です。

もちろん間違って伝わっていたら訂正するとか、自分のしたことの延長線上のことはすべきかと思いますが、結局相手の感じ方・考え方には口出しできないんですよね。信頼する相手の動きを予想することと、自分の思い込みで勝手に期待することは全く違います。そこは気を付けないと、自分自身が傷つくことになってしまいますね。

ところで、阿佐ヶ谷姉妹のエッセイは「芸能人だよね……?」と思ってしまうほど身近なエピソードが多く、ほっこりする話ばかりなので、おすすめです。エッセイのいい勉強にもなりました。

◆◇◆

母と、それから夫から義実家にもLINEで説明してもらい、双方へのカミングアウトが終わりました。どんどん考え方が軽く、そしていつも少し離れて相手を観察していた自分が、少しずつ降りてきている実感があります。

長々とお話してきましたが、私はこれからもこのnoteを、綺麗なことだけでなく小さなことから大きなことまで、感じたことをそのまま綴れる場所にしたいと思っています。オタク丸出しの時もあるし、社会が怖いと震えていたり、子供が嫌いだと毒づくこともあると思います。何か他の夢中になってしまうものが見つかるまでは、noteが私の居場所のひとつです。


こんな私ですが、いつも温かく迎えてくださってありがとうございます。

これからもどうぞ、よろしくお願いしますね。


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