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片想い。そして、虹の…… | 2000年生まれのポピュラー文化探訪 #74

 わたしたちは、何度恋をするのでしょうか。叶えたり、時には投げ捨てたり、いろいろな恋の続け方がある中で、ずっと十代の頃の恋を引きずってしまっている方もいると思います。だって、わたしがそうだから。

 好きなひとがいたのに、告白もできないまま、他のひとと付き合ったこともあって、それでも好きで、そんな恋愛なんか夢中になれなくて、いつしか別れて、大きすぎる失敗を繰り返していくうちに今に至っています。もはやひとりに対しての恋という概念に取り憑かれているのです。でも、本人に直接伝えたことは一度もない。ひょっとしたら、わかりやすい性格だから、気付かれていたのかもしれないけれども。

 わたしの青春に言葉をつけるなら、「強がり」だと思っています。言葉にならないものを放置して、周りの人には平気なフリをしながら、飄々と生きようとしてきました。ただ、感情を怖がり続けたがゆえに、いつか全てを失ってしまった。また数年の時が流れ、輝いていた過去を懐かしむたびに、なんともいえない気持ちになる。こうして、ほんとうは人間が好きなのに、傷つきたくないがために関係を手放していく大人が誕生してしまいました。

 昨年、いろいろな感情に取り憑かれていた中で、ムーンライダーズに出逢いました。ひょっとしたら何度目かの再会かもしれませんが、「ダイナマイトとクールガイ」を最初に聴いた時、これまでの日々が洗い流されていくような気がしました。

 こんなにも切なくて、こんなにも懐かしくて、こんなにも淋しくなる曲があるのかって……

 ストリングスで哀愁を掻き立てるバラードではなく、武川さんのホーンやいかにも90年代風の打ち込みが活かされたバンドサウンドなのが良いですよね。そして、鈴木慶一さんのヴォーカルが心を抉ってくるような感触。ヴォーカリストにはさまざまなタイプがいますが、慶一さんのものはあまりにも変幻自在すぎて、そのおもしろさに魅了されてしまいます。

 ムーンライダーズ、同世代にも聴いてほしいんですよね。特に、恋にまつわる楽曲たち。

 恋愛を描いた楽曲はこの世の中に数えきれないほど存在して、それでも、取り上げたい曲、大切にしたい曲があるということは、わたしはその曲がよほど好きだと思うのです。恋って、概念がそもそも好きすぎるのですけども……

 続編の「Cool Dynamo, Right on」もいつか紹介しようと考えていますが、そろそろ二十代の恋愛をしてみようかなと。二月の寒い朝に、虹の彼方に願い事をしてみます。

 2024.2.8
 坂岡 優

最後までお読みいただき、ありがとうございました。 いただいたサポートは取材や創作活動に役立てていきますので、よろしくお願いいたします……!!