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ムーンライダーズにハマる

 ある一定以上の世代の方にはお馴染みすぎる存在かもしれませんし、ずっと出逢いそびれていただけかもしれませんが、最近、ムーンライダーズにめちゃくちゃハマっています。

 ムーンライダーズといえば、日本でもっとも歴史の長いバンドのひとつです。特別なヒット曲はなく、レコード会社も転々としてきましたが、昨年にはニュー・アルバムの『It's the Mooonriders』を発表し、“老齢ロック”の代表格として一生バンド宣言をするなど、現在も精力的に活動を行っています。

 2011年以降は長期間に及ぶ活動休止中の状態でしたが、その間も“活動休止の休止”と称して何度か復活しました。復活した後、再び“活動休止の休止の休止”と休眠状態になったのですが、2020年代になると先述のようにニュー・アルバムの制作やライブなどの活動を再開。メンバー全員がプロデュースや作詞・作曲を行い、ヴォーカルが取れるという唯一無二の存在として燦然とその名を輝かせています。

 ひょっとしたら、彼らの音楽そのものを挙げるよりも、メンバーが手がけた作品を挙げるとピンと来る方がいらっしゃるかもしれません。リーダー・鈴木慶一さんは人気ゲーム『MOTHER』や映画『アウトレイジ』『福田村事件』の音楽を手がけましたし、白井良明さんは映画『二十世紀少年』や『オペレッタ狸御殿』などの音楽を担当しています。岡田徹さんも音楽プロデューサーとして活躍されていました。

 最新アルバムを聴いていただくとわかりやすいですが、どの時代の作品も、とにかく新しいことやおもしろいことに対して、とにかく貪欲な姿勢を全面に押し出してくるバンドです。シンセサイザーの導入も早かったですし、全員がプロデューサーの目線を持っているので、ひとつのバンドに注ぎ込まれる音楽的知見の絶対数が幅広いのでしょう。

 わたしはムーンライダーズ自体は最近ちゃんと聴き始めたものの、鈴木慶一さんが高橋幸宏さんと結成したユニット・THE BEATNIKSをずっと聴いていましたし、『MOTHER』の音楽はめちゃくちゃ好きでした。

 なによりも、ムーンライダーズやそのメンバーが他のミュージシャンのインタビューやスタッフクレジットにとてもよく登場するんですよね。まるで、友達の友達のような感覚。加藤和彦さんのアルバム『うたかたのオペラ』には岡田徹さんが参加していましたし、YMO関連の作品や70年代や80年代のミュージシャンたちを見渡してみても、彼らの活動の断片が出るわ出るわ……

 そんなこんなで、もうすっかり聴いたような気になっていたんです。

 一筋縄ではいかない、さまざまな音楽や文化的なエッセンスをこれでもかと投入しまくった音像が狂おしいほど好きで。そして、陰鬱さを隠そうともしない、かといって張り詰め過ぎているわけでもない。自然体なんだけども、どう考えたって何らかの背景が潜んでいる。お酒を片手に一晩中語り明かしたくなるような、とにかく探究しがいのあるバンド。

 わたしがずっと推してきたTHE ALFEEと一緒で、健康に活動を続けていってほしいなあ……と心から願っています。

 性格的に、こういったバンドにハマりやすいのかなあ。もっと聴き込んだら、わたしなりの視点で楽曲やアルバムを紹介してみようかなと考えています。Spotifyでもリスナーが1万人に届かないほどなので、きっとまだ出逢っていない方が多いはず。

 でも、今のような立ち位置は狙ってはなれないものですし、特に近年はあえてヒットさせなかったからこその特異性が個性になっている部分もあるので、単純に不特定多数の方に届かせるような紹介文にはしないつもり。

 “活動休止の休止”という表現自体がとてもめんどうくさくて、すっごいおもしろいじゃないですか。

 わたしはビートニクスから入っていったのですが、以前エッセイでも紹介したアルバム『Exitentialist a Go Go −ビートで行こう−』は鈴木慶一さんの詩が冴え渡っていて、高橋幸宏さんとともに紡ぐポップス的な感覚が馴染みやすいので、ぜひ聴いてみてください。

 2023.10.8
 坂岡 優

 

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