「結婚しようよ」
僕は最近、演歌を自分なりの解釈で演奏出来ないものか、と考えてみたりしている。
例えば、沖縄の人達にとっての島歌のように。
明らかに僕が影響を受けた音楽っていうのは洋楽なんだけれども、もっと“血”の部分で興味がある。
アメリカのブルースにしても、ブラジルのサンバにしても、だから島歌だってそうだ。
ネイティヴの人が歌って伝えるという、遺伝子レベルでの表現力には代わる物が無い。
持ち合わせた“血”がそうさせた的な、感動や情報がそこにはある。
そして最近になってやっと、僕にもずっと考えていたことが見えてきた気がするんだ。
僕が日本人として、遺伝子レベルで表現できること、という命題。
単純には、音頭や演歌な感じだと思う。
その証拠に、河内音頭のしゃくりあげるようなトリルの感じなんか、
誰に習った訳でもないのに、結構上手に弾くことが出来る。
これはもう遺伝子レベルのものだろうな。
で、遂に思い立って、古本屋さんに行って来た。
勿論、“ザ・歌の世界1500”みたいなギター弾き語りソングブックを求めて。
古本屋さんに行ってみて初めて知ったのだけれど、演歌ばっかりの本って実は売っていない。
誰もその類の本を売りに来ないのか、はたまた棚に並べるや否や売れてしまうかのどちらかだ。
意外と後者だったりすると、趣があって嬉しいんだけれども。
仕方がないので、なつかしのヒット曲集的なものを手に取って見ていた。
フォークソングやアイドルの歌がほとんどで、僕の期待する昭和の演歌は残念ながら載っていない。
とはいえ、これはこれで相当面白い。
全部がヒット曲なのだから、全曲ともやはり良く創られている。
改めてヒット曲に向き合うと、とても勉強になる。
よし、今日はこれを買って帰ろう!とかなんとか思いながらも、なかなか結構な値段である。
思案しながらも、興味深いのでずっと立ち読みしていた。
何分くらい読みふけっていただろうか?
あるページに付箋(ふせん)が貼ってあった。
不思議に思って、早速確認してみた。
なんと吉田拓郎の「結婚しようよ」のページではないか。
髪の毛が肩まで伸びたら云々、のあの曲である。
うー、まるで映画のワンシーンみたいじゃないか。
きっと映画なら、これを買わないと話が前に進まない。
結局、買ってしまったのだけれど、疑問がある。
この付箋の人、つまりこの本の前の持ち主は、誰かにこの曲を歌う為に練習していたんじゃないだろうか?
誰か?…そりゃ好きな人だろうな。
で、結婚出来たのだろうか?
古本屋さんに売ったということは、もう必要が無くなったということなんだろう。
僕が主人公の映画なら、前の持ち主は結婚を断られていて、断った女性と僕は恋に落ちるんだろうなぁ。
などと、また妄想モードに入ってしまうのであった。
#なごみの手帖 [ 2006年3月2日(木) HP更新]
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