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弱虫の強がり 第一章ー1 私の事で泣かないで

※内容はノンフィクションですが、登場人物は全て仮名です


【第一章―1 私の事で泣かないで】


弱虫な私の決心がようやく固まり、その夜初めてパパにも相談してすぐに病院の予約を取った。

家から車で15分のところにあるビルに入った小さな乳腺科のクリニック。受付の時点で私の心臓は聞いたことないくらいバクバクいっていた。

保険証を出す手が震えていた。
待合で待っている間もソワソワしたとにかく怖くて、それを落ち着かせるために私は一度大きく深呼吸をした。

その時だった

「永見さん、どうぞ」

診察室から看護師さんが静かに私の名前を呼ぶ。
心臓が跳ね上がったけど平然を装ってパパに「行ってくる」と一言残し診察室に入った。

「今日はどうされました?」

とても穏やかそうな少しお年を召した男の先生が私に問いかけた

「数か月前から左胸にしこりがありまして・・・」
私は短めに状況を説明した。


病変の状況を見た先生は静かに
「うーん・・・一回生検しましょうか」
と言った。

先生はもう大体察しがついているようだった。
感づいている先生の言葉を聞くのが怖くて小さく「はい」とだけ答えた。

生検とは、胸に局部麻酔を掛け少し太めの針を刺して病変の組織を採取する検査の事。
ネットでも麻酔を掛けるとは言え痛いとか気持ち悪いと噂の検査だった。

昔から緊張すると私はよくしゃべるのが癖だった
この時もベッドに横になった時から
「痛いですかね?やだなぁー」
なんて先生や看護師さんにひっきりなしに話しかけていた

我ながら子供じみたことを言っているなと思いながら(笑)

看護師さんたちはとても優しくてそんな私の会話に微笑みながら付き合ってくれた。
それがどれだけ安心できたことか。

実際生検を受けてみた感想は、思った以上にどうってことなかった。
確かに少し押されるような感覚はあるものの当たり前に痛くはないし、気持ち悪いと感じる程でもなかった。

どうやら身構えすぎたみたいだ

「はい、じゃあ終わりますね。また1週間後に予約を入れておくので結果を聞きに来てください。」

一つ緊張していた検査という大仕事を終えて少しだけ肩の力が抜けた。
あとは検査結果を聞くだけだ。

どんな結果でもしっかり受け止めよう。
この時には少し吹っ切れたような、覚悟が決まったようなそんな心境になっていた。

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