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全部大丈夫になりますように

「大丈夫ですか」と聞かれたら「大丈夫じゃないです」と即答できてしまうであろう精神状態で社会人1週目が終わりました。入社式に始まって研修で終わった5日間は帰宅するたびに疲労のあまり理由もなく泣き、水曜日には食事を作る気力も片づける気力もなくなりました。節約は一旦お休みしようと次の日の昼食を買いにコンビニまでとぼとぼ歩いて、それでも次の日にはちゃんとまた出勤しました。

これでも必死だったのですよ。慣れない家事に慣れない人たちに慣れない環境。気を抜けば過活動になるから体力の配分に頭をフル回転させて。それでも休んでくれない頭のせいで最初の3日はちゃんと睡眠も取れなくて不調未満の不調が積み上がって。

そんな平日だったから週末が待ち遠しかったんです。数週間ぶりに恋人と会う予定も立てていたから、平日は泣きながら残り日数を指折り数えて待っていました。体調が悪くて会えないと連絡されたときの衝撃も凄まじくて、どの日より泣いて、泣いて、泣きました。次の日に瞼が重く腫れるくらい、食事が喉を通らないくらい、研修中に思い出して涙が浮かぶくらい。右も左も分からない、どこにいても休まらない1週間の支えにしていたから、その分の寂しさで心がぺしゃんこに潰れてしまったのでしょう。

地元で桜が見頃だと母からの連絡を受けて、電車を乗り継いで帰りました。車の中から見た桜はすごく綺麗で、それでもどこか私の目は虚ろだったと思います。綺麗だったんです、本当に。去年と何も違わない、相変わらず綺麗な桜でした。だから私の心がどうかしてしまったに違いありません。

依存的になると恋愛は上手くいかないのかもしれません。でも、実をいうと最後に彼に会ってから一度も声を聞いていなかったのです。顔を合わせたのもその日が最後でした。

元来、通話を切る音を聞けなくて終了ボタンを押せなかったり、誰にも会わない生活が続くと心の調子を崩すくらいには寂しがりです。その私が積極的に連絡をしない彼にメッセージの頻度を合わせようと必死になっていたのですから、きっと私が思うよりずっと苦しかったのかもしれません。
寝込んでいた彼にちょっといいお弁当やらゼリーやらを届けた後、二言三言交わした声を何度も頭の中で繰り返しながら電車に乗り、別れ際に触れた彼の手のひらの温度を思い出して実家のリビングで微睡んでいました。ようやく聞けた生身の声は記憶の中と変わっていなくて、もっとその声を聞いていたかったと心臓をぎゅっと握られた心地さえしました。



社会人生活も恋愛も、こんなに重く苦いものなのでしょうか。考えると声を上げて泣きたくなるようなものなのでしょうか。私に知る術がないから、こんなものなのだと諦めるほかにないのです。
彼に会ったとて、「またね」と言葉を交わしたとて、私の心が大丈夫になることはありませんでした。この先どこかで大丈夫になることはあるのでしょうか。あってくれないと困るのですが。
いつでもいい、できれば早くそうなってほしいけれど欲深くなったら叶わなくなりそうだから、大丈夫じゃなくなって戻れなくなる前に、ちゃんと大丈夫になりますように。彼と笑って手を繋いで歩けますように。優しい人たちとできる事を増やしていけますように。

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