危機感を持って受験勉強に挑む
僕がバイトしている塾は、ほとんどが高校3年生と浪人生です。
大学入試まで1年を切っている状況の中、どのように短期間で基礎を習得して、入試に対応できるレベルまで持っていくのか、というのは何年も続く受験業界の課題でしょう。
効率的な勉強法に関しては、塾が推奨するやり方を中心に教えています。
ただ、それだと画一的すぎるので、僕は独自に科学的な文献を漁ってみたり、色々な勉強法を組み合わせた新しい勉強法を提案しています。
数ある選択肢を実際に試してみて、自分に合ったやり方を見つけられればいいですよね。
ただ、効率化を図ったところで、それだけで全てが順調にまわるほど、受験勉強は甘くないのだということが、塾講師歴11ヶ月の僕にもわかってきました。
まだ足りないものがあったんです。
それは危機感。
とはいえ、危機感を生徒様に感じていただくにはどうしたらいいのかなんて知りません。
ってことで、リサーチしてみました。
メタ認知
メタ認知は僕の記事で度々登場する言葉ですね。
しっかりと説明したことがなかったので、ここで改めてその意味を確認しておきましょうか。
(初めて僕の記事をご覧になる方も、ここで一緒に理解しましょ〜!)
「メタ」とは高次を意味する言葉なので、メタ認知とはすなわち高次的に認知することを指します。
その認知する対象は自分自身。
イメージ的には、神の視点と考えるといいでしょうか。
まあ、神の視点だと畏れ多いので、第三者の視点と考えてもいいかもしれませんね。
自分自身を客観的に俯瞰してみて、今の自分がどのような状況にあるのかを認識することこそ、このメタ認知の真髄になります。
先日ご紹介した分析フレームワークを使って、自分の状況を書き出してみてください。
無料の範囲であればフレームワーク1(MOGST)をお使いいただくしかありませんが、有料でご購入いただいた方はぜひフレームワーク2と3を活用してみてね!
その分析をもとに、自分の弱点は何か考えてみましょう。
いわば、この弱点こそが自分を苦しめる原因であり、そこから逃げ続けていたら受験に失敗してしまうことになるのだということを認識する必要があるということです。
メタ認知は、このような現実逃避=先延ばしを防ぐことにつながります。
防衛的悲観主義
前章の締めくくりは「弱点と向き合え! さもなければ受験に失敗するぞ」とネガティブな表現をしてしまいました。
ただ、これは意図的にネガティブな表現にしています。
自分自身の現状と目標に対して過度に楽観視するのではなく、むしろ「このままではマズい」と自分に対して悲観的になることによって、その状況を打開するためには何をするべきなのか考えることによってパフォーマンスを発揮する戦略を本章で伝えたかったからなんです。
上手くいかない可能性を全て考え、明確にそれを捉えておくことによって、そうならないための対策を打つことができるようになります。
これを防衛的悲観主義といいます。
ただし、あくまでもこれは「ポジティブなネガティブ(Positive Negativity)」であることも重要です。
あえて防衛的悲観主義をとるのは、最終的にはそれをエネルギーに変えて勉強に取り組めるようになるためだということを忘れてはいけません。
悲観主義になった結果、やる気がなくなってしまっては元も子もありませんからね。
弱点を抱えていることから生じる不安やリスク(不確実性)があり、最悪な状況にならないようにするためにはどうすればいいのかを考え、言語化することが、この戦略における本質です。
ネガティブになるのは、過去のためではなく、未来のためなのです。
そういう意味では、ただ悲観的になりさえすればいいって訳でもなく、ある程度のポジティブさも必要で、うまい具合にバランスをとって自分の機嫌をとるという考え方も必要ですね。
この場合はセルフコンパッションの考え方を取り入れるのがいいのでしょうかね。
悲観的になりすぎない方法は、こちらの記事をご覧くださいませ……!
参考文献
Norem, J. K. (2008). Defensive Pessimism, Anxiety, and the Complexity of Evaluating Self‐Regulation. Social and Personality Psychology Compass., 2(1), 121–134. https://doi.org/10.1111/j.1751-9004.2007.00053.x
浪人の経済学的な分析
受験に失敗して、もう1年間受験勉強をしようとした場合、どれくらいの経済的な損失が出るのか考えてみましょう。
思いつきやすいのは、
予備校代
模擬試験受験料
入試受験料
交通費・宿泊費
などでしょうか。
もし、本当にそれだけしかお金がかからないのであれば、大学合格後にバイトをしたり、就職してから出世払いをしたりで返していくことは可能でしょう。
ただ、それでも留意しなければいけない点は、本来浪人していなければ稼げるはずであった1年分の年収がもらえなくなることです。
しかもその年収は、新卒1年目の年収ではなく、引退する最後の1年分の年収であるという点にも注意が必要です。
インフレなどの影響もあるので具体的な金額は分かりませんが、人によっては1000万とか、もしかしたら3000万、……いや、10億円稼いでいる人もいるかもしれませんね。
引退前の年収を失うかもしれないリスクを考えれば、ただ単純に「浪人してもう1年やればいっか〜」みたいなノリで浪人することは危険であると認識することができるでしょう。
結論:ネガティブ・ケイパビリティ
今回の記事では、全体的にネガティブに考えることによって危機感を持って勉強していこうという話を3つの視点からお話ししてきました。
不確実性の高い状況と戦わなければならないプレッシャーは、計り知れないほど自分自身に負荷をかけるものだと思います。
でも、その困難とリスクこそが自分を成長させてくれる唯一無二の存在であるような気もします。
そういえば、東大に合格した僕の高校時代の先輩がネガティブ・ケイパビリティ、すなわち不確実性と向き合う力についてお話ししていたことを思い出しました。
ポジティブとは確実なこと、わかっていることであり、それ以上深めようとする動機を奪ってしまう。
より深い次元で物事を捉えるために、不確実性と向き合っていくのだ、と。
今度は、それに関する記事を書いてもいいかもしれませんね。
もしかしたら読者の皆様の中には、ポジティブになった方がやる気が出るという方もいらっしゃるかもしれません。
実際に僕も楽観的に考えた方が余計なことを気にする必要がないので、集中できるタイプだと思います。
それでも、所々のタイミングでネガティブ思考を取り入れたことによって、気を引き締めて頑張れる場面もありましたので、ポジティブ思考とネガティブ思考、両方のやり方を知っておくことは大事なんじゃないかって思うんです。
この記事が皆様のお役に立てたならば幸いです。
おまけ:競争とゲーミフィケーション
(この章はネガティブに考えることとはちょっと違うかなと思っておまけ扱いにしました)
日々の勉強記録をつけていって、友人と勝負をする方法は面白いかもしれません。
実際に僕も高校1年生のときにやっていました。
外出自粛の期間で、どれだけ勉強できるかチャレンジみたいなのを5人くらいのLINEグループで競っていた気がします。
勝負する項目は勉強時間以外にも、次の模試の結果で勝負するとか、友人同士で問題を出し合ってその結果で勝負するとか、色々工夫できると思います。
このように他人を巻き込んで勉強を行うことで、習慣化に結びつけるんです。
しかも、他人と比較する状況に常に晒されている状態なので、自分の結果が悪いと危機感を覚えられますよね。
このようにゲーム化することをゲーミフィケーションといいます。
さらに、負けた人はスターバックスご馳走、みたいなペナルティ(罰ゲーム)をつけることで、短期的な損失回避のために勉強を頑張ることができるようになるかもしれません。
というか、ペナルティは必須です。
ペナルティがなかったら、サボってしまいますね。
ほら、経験あるでしょ!? 隠したって無駄だぜ僕にはお見通しだよ!
時間割引率の高い(長期的な志望校合格という目標だけではモチベーションが続かない)受験生にとっても始めやすい方法かなと思います。
もっとも、バイトしていない受験生にとって、金銭をかけた勝負はあまり推奨できないかもしれませんが。汗
あとがきというか謝辞的なやつ
危機感が足りないということはなんとなく以前からわかっていたことなのですが、それを解決するための正しいやり方を調べたのは今回が初めてでした。
これまでは、毎回の確認テストの結果を見て、ここを改善しなきゃいけないよっていうある意味、強迫的な言い回ししかすることができず、僕自身も心を痛めるような誰も得しない(?)雰囲気になってしまっていたのですが、これからは多少それを緩和できそうな気がします。
危機感を持つ方法に関してはまだ調べ始めの段階ですが、さらに進めていけば、現状をさらに改善できそうですね。
塾講師って、生徒様だけでなく講師(受験勉強コンサルタント)自身も成長できる場所だったんだなと思いました。笑
この記事を書くきっかけは、実は後輩講師でした。
成績を上げるために、あとは何ができるかなというお話をしていたんです。
まだ明確な答えは見つかっていません。
でも、これに関しては生徒様ごとに手をかえ品をかえ実験していくのが実は正解だったりするものなのでしょうかね。
それこそネガティブ・ケイパビリティを発揮する場面なのかもしれません。
ともかく、このような機会をくださった彼女およびいつもお世話になっている先生方に感謝申し上げてこの記事を締めさせていただきます。
……ま、まぁ、僕がnoteをやっていること自体を塾に知らせていないんですけどねっ!爆
※本記事に含まれる情報は特筆のある場合を除いて公開時点のものであり、最新の情報とは異なる場合があります。
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