営業管理の仕組みづくりについて私が取り組んだこと
前回まで、私が取り組んでいた営業管理の仕組みづくりについてご紹介してまいりました。改めて、以下に整理してみます。
1.よくヒアリングをして業務フローを見える化する。
2.その中で、営業にとってどの数字を管理していくことが重要なのかを見極め、指標と運用の仕組みを設計する。
3.管理する数字を改善していくためのマネジメントの仕組み、適切な上司の配置を行う。
4.部署間のコンフリクト解消やモチベーションの向上に気を配る。
以上のような検討を経て、いよいよ運用に踏み出しています。
これからこの仕組みを継続し、運用することで本当に意味あるものとすることが重要です。
データを適切に分析して提示することで、営業自身の学びのきっかけとすること、同時にそれを基に上司から部下への教育を促進していきたいと思います。
このことを考える上で面白い研究がありますのでご紹介します。
リーダーシップの育成にどのような要素が重要だったかを調査したものなのですが、その結果によると、70%がジョブアサインメント(どんな仕事経験をさせるか)、そして残りの20%が(人から受ける)薫陶、10%が研修であったそうです。
この結果を見ると、薫陶や研修の重要度が低い印象ですが、70%のジョブアサインメントの中に、決定的に影響を受けた素晴らしい上司やお客様が見つかるケースも多く、実態として薫陶の影響は20%より大きいとの見解もあります。つまり、「適切な配属と周囲からの薫陶が大事」ということです。
それでは具体的に薫陶はどのように促進すればよいのでしょうか。
神戸大学の経営学習論の第一人者である金井寿宏先生は、このテーマに関連して、
「上司としてできる最高の教訓は、部下に対して押し付けないことだ。十人十色、個性配慮が大切だ」
と述べておられます。これはとても興味深い言葉です。
その理由として、続けて次のようなエピソードを紹介されてます。
ある講演でラグビーの平尾誠二さんが、全くメモをとらないスタイルだと話されたそうです。
平尾さんはその理由を、「僕はずっとメモを取れないところで鍛えられた。グラウンドの中で怒られたときや、試合終わった直後にあのプレーだ、と。そこで心に刻むようにしたのです」(※引用:ビジネスインサイト 神戸大学経営学研究科)
一方で、金井先生は、インタビューをする時にメモをとにかく細かくとるスタイルだそうです。
それは相手に対する敬意と、その後の取材や研究で前回のことを的確に振り返るためという2つの理由からだということです。どちらもなるほどと納得させられる考え方です。
つまり、二人とも一流の仕事をしている人ではありますが、そのやり方はまったく違うということなのです。
仮にこの2人から異なる記憶の仕方を教わったとしても、重要なのは、どっちが正しいかではなく、その話や行動がその人なりの経験や身体から滲み出ているものであり、有効に機能するようになっているかどうかだと感じます。
薫陶が行われるとき、その中身には2種類あるように思います。
一つは商品知識や営業の実践ノウハウなどのスキル的なもの。そしてもう一つはその人の考え方とか思想、姿勢などです。
後者が伴わない借り物の言葉や行動からは薫陶として機能しない(?)と解釈するとなかなか恐ろしいものです。
教育を行うものの人としての人間性も育成の大事なポイントになりうるということではないでしょうか。
金井先生はまた、「薫陶には、機微やこだわりが大事だ」とも述べています。
この視点に立つと、フィードバックの巧拙も重要だということになるでしょう。
東京で人事関係の人とお会いしていると、社内研修でマネジャーにコーチングを習得させている会社がめずらしいことではありません。
これは、(人事や外部研修ではなく)日常の薫陶にこそ教育の機能があると考え、現場力の起点となるマネジャーこそが人材育成を上手に行うということをねらいにしているのだと思います。
素晴らしい経験やノウハウはどうしても埋もれがちになりがちです。是非社内で大事に伝承していきたいものです。
また来月もよろしくお願いいたします!
VOL24 2012/5/31 sakaguchi yuto
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