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【読書】働かないおじさん問題のトリセツ

皆様の会社に働かないおじさんはいるだろうか。

別におじさんに限らなくとも、「この人仕事してないな」とか、「問題行動をしているな」という方が周りに1人2人は思い浮かぶという方がほとんどではないだろうか。

こうした問題にダイレクトに切り込んでいるのが、この本の著者であるライトマネジメントの難波さん。現場実践を豊富に積まれていて、ミドルシニア社員の活性化という分野で第一人者ではないかと思う。本書も実践に裏打ちされた内容で非常に参考になった。

こうした問題を語る時、一般的に”本人が悪い”ということを前提にしていることが多い。

会社で問題社員について愚痴を言っているときも、「あの人は本当にやる気がないよね、、、」と完全に本人の問題だという前提で話が展開されている。

しかし、相手に”心を入れ替えなさい”と北風アプローチをしたとしてもうまくいくことはまずない。居心地が悪くなって辞めてしまうことはあっても、信頼関係ができ、前向きに業務に取り組んでくれるようになるという話を聞くことはまずないように思う。

組織の変革支援の仕事をしていると、

「相手が変わる前に自分が変わりなさい」

であるとか

「人は変わりたくないのではない。変えられたくないのだ」

という言葉に出会うが、ミドルシニア社員を活性化するためのアプローチも同じだという印象をもっている。

まずは、相手の置かれている状況を見に行く。その状況を実際に味わってみる。そこから見える景色を一緒に見てみる。相手を変えようとする前に、こういったことをしてみると、次の展開が見えてくる側面もあるだろうと思う。

一昔前の職場なら、経験を積めば積むほど仕事に熟達していき、年上であることやキャリアが長いことがアドバンテージになる環境であった。しかし近年は経験が少ない若い人の方がうまく仕事に対応できる、そういう分野も増えてきている。

先輩、上司がそうしてきたように、これまでまじめにコツコツと日々の仕事に取り組んできた人は今更どうしたらいいのか。薄々自分が役に立ちづらくなっている感覚があったとしても、それを受け入れる覚悟が定まらなかったり、どうしたらいいかわからず不安があったりということもあるだろう。

こう考えると、新卒一括採用で、40年にわたり安定雇用を保証し、社内で先輩のOJTを受けて仕事の進め方を学んでいく。こうしたスタイルの歴史ある大企業の方が、変化の時代には相性が悪いかもしれない。

この本では、働かないおじさん問題を、よくあるwill/can/mustの3つの重なりのズレで整理している。時間が経つうちに、会社が求めるmustと本人のcanやwillがズレていく。ズレた状態なので働かないおじさんになっているというのはわかりやすい整理の仕方である。

will/can/mustが重ならなくなっているという状態を、可視化して、本人と共通認識を持つことができて、その上で、どうしていくべきか対話していくということが空中戦にならずに生産的に状況を前に進めていくことにつながるであろう。

一般的には、会社から方針を示し、それに対して本人が立てた目標に対するパフォーマンスを期末に人事評価していくというMBO形式のマネジメントが多く行われているが、このような年に1回のレビューれだけだとあまりに頻度が少なく、かつ形式的となってしまいズレを認識しづらいし修正もできない。おそらく別の機会を設けて、定期的に本人と上司とでwill/can/mustのすり合わせをしていくという時間が必要なのだろうと思う。

人が変化していくには何が必要か。健全な危機意識を醸成する。本人がビジョンを描く。それを実現するための伴走をする。そのあたりの機能、機会は一日の研修や年1回のフィードバックではとてもできない。日常のマネジメントの結果が働かないおじさんを生み出しているわけで、本人のせいに帰結させるよりも、そうした状況を生まないマネジメントをどう構築するかということを考えないといけない、そう思わされた本であった。


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