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【倫理の指導案】ルネサンス×絵画とゲームでルネッサーンス

本授業のターゲット生徒
進学校の生徒の方が尚良い
論理的思考力のある生徒
(ゲームが難しいため、今回の授業は生徒を選びます。考えることのできる生徒はすごくイキイキすると思います。)

絵って、難しい。
思想って、難しい。
時代背景もって、難しい。

でも、実は全部繋がってる。絵で見れば、よくわかる。


百聞は一見にしかず。一見を思考する。


|授業の概要|

分野:ルネサンス・宗教改革(レオナルド・エラスムス・トマスモアなど)
テーマ:絵画とゲームでルネッサーンス
目標:時代背景と思想が繋がっていることを理解する。

|筆者の紹介|

この記事を書いている人:
ゆとりんり(現役倫理教員)
新卒で倍率100倍の民間企業に就職後、教員に転職
教員採用試験の採用枠1枠に1発合格(働きながらの完全独学)
県に授業の研修用資料の提供や、学校の試験問題見本の作成を行う。
ブログで「ちょっと変わった授業アイデア」まとめてます。

普段は歴史的背景をとらえず、思想に注目した授業を展開していますが、今回は逆に、歴史的背景とのつながりを意識しました。

|このページの見かた|

ゆとりんり流、スライドの授業での使い方はこちらで紹介しています。黒板に映せるように背景を黒くしています。



\導入/

導入からインパクトを与えます。絵を中心に進めていくことをドンっと示しましょう。そんなスライドにしました。

みなさんは「絵」に興味はありますか?多分ないですよね?え?ある?

『モナ・リザ』レオナルド・ダ・ヴィンチ

ない、ですよ、ね?

目標を示して展開に入ります。今回は時代背景と思想が繋がっていることを検証していきます。方法としては、人の思想が表現された絵画と通し、時代の移り変わりで絵も変わっていることに気づいてもらうというものです。

「時代変化=思想変化=絵画の変化」をゲームを通して考えさせます。



\展開(ゲームへの誘い)/

よく「天才」という言葉を用いますが、絵を見ると本物の天才に言葉を失います。天才というキーワードから絵に入っていきます。

みなさん「天才」って言葉よく使いませんか?この中にも「天才」がいますか?みなさんの思う天才をあげて下さい。(発表)


生徒、いや私たちもなんとな〜く「天才」という言葉を使います。実際にピカソの絵を見たときは、どのような思考でこの絵が描けたのか理解ができませんでした。

みなさんなんとなく「天才」という言葉を使ってませんか?天才って何があれば天才なんですか?「天才」に必要な要素をグループであげて下さい。

『泣く女』パブロ・ピカソ


いろんな要素をあげてもらいましょう。発表もさせます。「個性」「うまさ」「独創性」など出ると思います。「環境」という言葉が出れば理想です。出なければ、こちらから出します。

色々要素を出してくれましたが、ここで疑問です。芸術家は「当時は評価されなかったけど死後に…」と言われたりします。そして、天才を生む環境、生まない環境、あると思いますか?


本時はこれをゲームで検証します。



\展開(ゲーム説明)/

今回のゲームを説明します。簡単にいうと、時代に合わせ絵を
並びかえるというものです。

ゲーム説明
(1)時代に合わせて4枚の絵を並び替える
(2)理由ありきで正解すると2点
(3)欲しい人にはヒントとして、その時代の思想を1つ教えます。1思想につき−1点。戦略的に使って下さい。
(4)〇〇中心主義を当てたら5点


4つの絵はこちらです。最後の晩餐は2つを用意しました。時代が動くと絵も変わるという典型例を示すためです。教室前にこのスライドを映してゲームを進めます。

美術館のように、前に絵を見に来させましょう。ゾロゾロと。

  1. 最後の晩餐

  2. 最後の晩餐

  3. 受胎告知

  4. ゴリアテの首を持つダビデ(自画像)



\展開(答え合わせ・ヒント)/

まずは、ヒントを求められたときの思想を紹介します。答えの時にも確認しましょう。

エラスムスという人物の思想を紹介します。これまでは教会が全てでしたが、彼は人間に自由意志があると主張しました。これはルネサンス期の思想です。


エラスムスのヒントからは、「教会」ではなく「人間」に注目したことに気づいてもらいたいところです。
答えの確認でも、2つの絵から、その要素に気づかせたいです。

ルネサンス以前の「最後の晩餐」は左のイエスに輪っかが付けられるなど、宗教色が強いです。が、ルネサンス期は人間的に描かれています。これはまさにこの時代を表しています。

ちなみに、絵を描く人が、職人から芸術家となったのはこの頃ともされています。


2つ目のヒントを求められたらこちらのヒントを渡しましょう。
答え合わせの段階では、この時代がどんな時代だったのか解説に入りましょう。

この時代の他の思想家の思想を紹介します。エラスムスとの共通点は「人間」を尊重した点にあります。神が世界を作る時に各界に聖霊や天使を作ったのに対し、人間には能力がない代わりに自由意志を与えたと考えたピコ・デラ・ミランドラ。宗教と政治を分離したマキャベリ。つまりこの時代は、、、


ルネサンスは「再生」を意味します。神ではなく人間に視点を置いていた古代ギリシアの再生です。つまり、〇〇は「人間中心主義」となります。ここでトマス・モアも合わせて紹介しましょう。

「〇〇中心主義」の答え合わせをします。このルネサンスは「人間中心主義」になります。教会の時代から人間へと視点を戻そうという動きが見られる時代です。絵にもそれが表れていましたね。トマス・モアは当時の社会も風刺しています。

『羊が人間を食う』とは、当時羊を売ると高く売れることから、人間の土地を羊を飼う土地へと変えていく流れがあったことから、まるで羊が人間を食べているという表現をしています。


ー人間中心主義の解説ー

そもそも、なぜ人間を尊重する流れができたのかの解説をします。

人間中心主義が出てきた時代背景を説明します。当時教会が行った十字軍遠征の失敗や、3大発明で教会への不信感が高まっていきます。そんな中で、出てきたのがルネサンス思想です。


改めて最初のスライドを確認します。これ、実はよくできたスライドです。流れがわかりやすい。後半の答え合わせにつなげましょう。

改めてそんなルネサンス期を絵とともに確認しましょう。教会の時代から、人間の時代に移り変わります。絵がそれを示しています。簡単に「宗教改革」「バロック」の概要をまとめました。後半にいきましょう。



後半戦いきましょう。宗教改革期はルネサンス期に起きた脱教会の流れが実際に行動に移ります。

ルターとカルヴァンが中心となった宗教改革ですが、教会側からすると信徒を離さないようにしないといけません。そこで絵も大胆に変化させ、劇的に描かせるようにしています。今回はエルグレコの『受胎告知』を取り上げました。

そんな時代を代表する思想家はモンテーニュです。プロテスタント(脱教会派)とカトリック(教会派)の両者に知り合いがいた彼は、お互いが正しいと信じ込み、相手を認めない人の醜さを感じ、ク・セ・ジュという言葉を残しています。


『受胎告知』エルグレコ


最後にバロックです。ここではカラヴァッジョの自画像を取り上げましたが、右下の髪を持たれている人が本人だそうです

教会側はより大胆に、より派手に書かせるようになりました。その代表格がカラヴァッジョです。これが自画像ですから、相当と言えるでしょう。

『ゴリアテの首を持つダビデ』カラヴァッジョ


最後に4枚と時代の流れを確認します。得点も計算させましょう。4枚の絵を全てはめたスライドで見ると、ルネサンスを皮切りに「職人」と「芸術家」に分かれるというのがわかりやすいです。

また、「時代背景」と「絵」が、さらにいえば「思想」までもがひとつながりになってます。



\まとめ/

まとめが大切です。気づいたことをまとめさせましょう。レポートを提出させると、この人はゲームを通してきちんと学べているかわかると思います。

最初に「天才と環境はセットである」と仮説を立て、ゲームをしてもらいました。では並び替えを行って、みなさんはどう感じましたか?正しいか、正しくないか「時代背景」「絵画」「思想」に触れてグループで考えをまとめなさい。(個人ワークでも可)


〆の1スライドはこちらにしました。映画『舟を編む』の一場面を参考に、ルネサンス期に必要とされるようになった人間像をかっこよく示します。

この時代、人間を尊重する時代となり、万能人が求められるようになりました。つまり、時代と人間(芸術や思想)は大きな関係があるといえますね



参考文献



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・形式:Googleスライド
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2022/06/11更新

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