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宇宙物理学についてのまとめ

この記事では宇宙物理学についてまとめました。
取り上げるトピックは、ビッグバン宇宙論、星の形成、重力波、ブラックホールです。

ビッグバン宇宙論

ビッグバン宇宙論とは、宇宙の初期は極めて高温かつ高密度の状態でしたが、それが大きく膨張する事で、今の宇宙が作られたという理論であります。

ここでは、インフレーションという爆発的膨張の後から、宇宙の晴れ上がりまでを述べます。

宇宙は「特異点」と言われるものから生まれ、それからインフレーションという宇宙の巨大な膨張が起き、その後はずっと膨張をし、宇宙が冷却し続けました。

この頃は宇宙は火の玉でありました。つまり、クォークやグルオンという粒子が暴れまわっている状態であり、あらゆる粒子が釣り合いの状態を保っていました。これをクォーク・グルオン・プラズマといいます。

宇宙の温度が約1000兆度に冷却すると、クォークやレプトンは質量を持つようになります。

1万分の1秒後、宇宙の膨張により温度が低下し、それから自由に動いていたクォークが束縛される事により陽子・中性子といったバリオンやパイ中間子などのメソンを作ります。しかし宇宙が超高密度状態だったために、電子と陽子が圧力で結合し、中性子だらけの宇宙でした。

それから、宇宙の膨張により、超高密度状態から抜け出すと、圧力が小さくなり、そしてベータ崩壊により、陽子と電子とニュートリノが生まれました。

初めは、また弱い相互作用による反応により、陽子と中性子の数が釣り合っていたが、やがて陽子の数が多くなってきました。

その後、単体の陽子と中性子が核力によって結合し始めるようになり、重水素が作られました。しかし、光子によって重水素は分解され、単体の陽子と中性子に戻るという現象が起き、また重水素を合成し、それからなかなか反応が進まないという現象が起きました。(重水素のボトルネック)

理由は、この頃、暴れまわっていて高いエネルギーを持つ光子が水素の中の陽子と中性子を結びつけるのに必要なエネルギー(結合エネルギー)より高かったため、せっかく陽子と中性子が結びついたのに、光子がそれを切ってしまうからであります。

宇宙誕生から3分後になると、宇宙の膨張により温度が下がり、光子がおとなしくなる事で、光子のエネルギーは重水素の結合エネルギーより低くなることで重水素は光子から分解をされにくくなり、重水素が多く作られました。

それから三重水素やヘリウム3が生成され、それからヘリウム4が生成されました。しかし、ヘリウム4より重い元素はほとんど作られませんでした。

こうして、初期宇宙での最初の元素合成が終わり、原子核のみの元素ができました。


この結果、約75%の水素1、約25%のヘリウム4、約0.01%の水素2と少量のリチウムとベリリウムが生成されました。

さらに時間が経って30万年後には、それまで温度が高いために自由に動き回れた電子が原子核に捕まえられ、原子を構成するようになりました。

いったん原子が出来ると電気的に中性なので光子とほとんど相互作用をせず、この後、光子と原子は別々の道を歩みました。

この頃の光を宇宙マイクロ波背景放射と言われています。つまり、光はマイクロ波として宇宙全体に漂っているのです。

そのとき、光は電子にぶつからずに直進するようになりました。これを「宇宙の晴れ上がり」といいます。

その後、宇宙誕生後3億年後には星、10億年後に銀河ができました。
リチウムから鉄までの新しい元素の合成に関してはこの時の話です

星と銀河と宇宙の構造形成について

宇宙の歴史において、宇宙の晴れ上がり以降について書いていきます。

①宇宙マイクロ波背景放射とゆらぎ


宇宙が誕生して30万年後、それまで温度が高いために自由に動き回れた電子が原子核に捕まえられ、原子を構成するようになり、その原子の分布は宇宙全体で見ると濃淡がありました。
その濃淡が星や銀河を作る源になりました。そこから先は、②や③の項目で述べます。

その時、光は電子にぶつからずに直進するようになりました。これを「宇宙の晴れ上がり」といいます。

この頃の光を宇宙マイクロ波背景放射と言われ、マイクロ波として宇宙全体に漂っています。

宇宙全体の原子の分布に濃淡があるということは、宇宙マイクロ背景放射の温度の分布が一様ではなく、むらが存在するということを意味しています。このことをゆらぎがあるといいます。

実際、NASAが打ち上げた宇宙背景放射探査衛星COBEによる観測によると、宇宙背景放射に約10万分の1の温度のゆらぎが見られることを検出しました。
COBEの後継として打ち上げられたウィルキンソン・マイクロ波異方性探査機WMAPでは、以下の分布を作成しました。

つまり、ゆらぎがあることで、星や銀河が作られ、ひいては地球や人間が存在していると言えるのです。

②星の形成と重元素合成


宇宙全体の原子の分布には濃淡があったことから、濃いところでは重力によって引き寄せられ、塊を作ります。

そしてその塊が高密度になりますと、核融合反応が起きてより重い元素(炭素、酸素、窒素から鉄まで)が作られ、星が出来始めます。

そして星の内部で核融合反応が起き続けます。

星が核融合反応を起こせなくなると、太陽と同じか軽い星は、白色矮星となって静かに消えていきます。一方、太陽よりはるかに重い星は、物質が重力で中心に押しつぶされます。その時、電子は原子核に落ち込み、中性子とニュートリノが多く作られ、放出します。

これを超新星爆発といい、その時、中性子を多く含んだ鉄より重い元素が作られます。この時、ブラックホールや中性子星が残る場合があります。

地球には鉄よりも重い元素が多く存在していることから、太陽系は一度超新星爆発を起こした天体であると言えます。

この一連の重い元素が作られたプロセスを重元素合成といいます。

③宇宙の構造形成と暗黒物質

星が多数できると、その星同士の重力により銀河を作り、銀河同士が宇宙の大規模構造を形成していきます。

シミュレーションによると、現在の宇宙の大規模構造が出来上がるには、暗黒物質(ダークマター)が存在しなければならないとされています。

つまり暗黒物質があるおかげで星や銀河ができ、ひいては人間も存在できるのです。

暗黒物質の正体は何か、そしてその物質が本当に存在するのかはまだわかっていません。
また暗黒物質は素粒子物理学の標準理論に当てはまらない存在ですので、標準理論を拡張した理論が求められています。

標準理論を拡張した理論の候補として超対称性理論(SUSY)があり、物質の基本単位は一次元の広がりを持つ弦と考える超弦理論もその一種であります。
しかし、その理論はまだ仮説の状態であり、本当に信頼できる理論なのかはわかっていません。

重力波

重力波は、1916年にアインシュタインが一般相対性理論から予言され、その100年後である2016年に発見されました。

重力波は発見されましたので、これからは使うことで、電磁波ではみられない領域を重力波で見ることで、宇宙の始まりや宇宙の構造のさらなる理解が深まり、宇宙の歴史の解明につながるかもしれないということであります。そのことについて、以下説明します。

重力とは潮汐力によって空間を歪ませる力であり、その歪んだ空間を重力場と言います。
この時、物体に加速度運動をさせると、空間の歪みが変わり、それが徐々に波のように広がります。その広がった波を重力波といいます。あくまでも、加速度が生じていないと発生しません。一定の速度で動く物体には重力波は発生しません。

その重力波の最大の特徴は、なんでもすり抜けるという性質を持ちます。

つまり、他の物質と相互作用をしないということです。

重力波を検出できる望遠鏡で遠くの宇宙を見ようとしています。

遠くの宇宙を見るとは、過去を見ることと同じことです。なぜなら、遠くの天体の光が地球に届くにはタイムラグがあるからです。つまり、今、空に輝いている星々は遠い昔に放たれた光だということです。

同様に太陽に関しては約8分前の姿を見ているのです。

また、宇宙の晴れ上がりが起こる前の宇宙を見ることは残念ながらX線や電波といった電磁波を検出できる望遠鏡では見えません。

なぜなら電磁波は、宇宙の晴れ上がり以前の宇宙は電子といった素粒子と相互作用されまくりで観測不可能だからです。

けど、重力波ならば、なんでもすり抜けるため、宇宙の晴れ上がりの前の宇宙からの重力波も観測できるというわけなのです。

また、重力波はめちゃくちゃ小さいので、空間のさざ波と言え、検出は困難です。

でも、超新星爆発や中性子星連星の合体、ブラックホール連星の合体が起きた時、検出できるほどの大きな重力波が発生すると言われていますので、この時のチャンスを狙っていました。

2016年、LIGOやVirgoといった研究班が重力波の観測に成功し、重力波が存在することを示しました。現在、重力波の観測のよって、宇宙の歴史や構造について調べようとしていて、日本ではKAGRAで挑戦をしています。

つまり研究者の冒険はまだ続いているのであると言えるのです。

ブラックホール

太陽の30倍以上重い星が自らの重力によって崩壊することで超新星爆発を起こし、その結果として光でも脱出できない領域ができます。その領域をブラックホールといい、何か特定の物質でできた天体ではありません。

そのブラックホールは高密度かつ高い質量を持ち、重力が強すぎて光ですらも脱出できない天体です。その天体はアインシュタイン方程式から予測されたものであります。

シュバルツシルトは、時空が真空(アインシュタイン方程式の右辺が0)で、中心にだけ星があるような球対称構造になっていて、さらに時間変化をしない場合を考えました。

その時に導いたアインシュタイン方程式の解をシュバルツシルト解といいます。この解を導くと、その解が無限大になる箇所が2つありました。

ブラックホールの中心(r=0)の方を特異点といい、一般相対性理論が破綻する場所であります。この特異点の問題を修正する理論は現在研究中であります。
もう1つの方(r_g)はシュバルツシルト半径と呼ばれるブラックホールの半径であり、ブラックホールの境界面を事象の地平線といいます。そこを超えてブラックホール内に入ると、光すらも脱出できない

このことから、「ある物体の半径をシュバルツシルト半径(r_g)より小さくするとブラックホールが形成される」と予想されました。もし、地球の半径を約1cmに縮めるとブラックホールになる。(地球の中心にブラックホールがあると言ってるのではない)

事象の地平線を超えて宇宙船がブラックホール内に入ったとき、宇宙船にいた人と宇宙船がブラックホールに入る様子を見た人はどのように見えるでしょうか。

一般相対性理論によると、重力が強いと、弱い所に比べて時間が遅れると言われています。

なので、もしブラックホールに入った宇宙船は、外から見ると、事象の地平線に近づくにつれて赤く変色しつつ遅くなりながら進み、ついには事象の地平線の手前で止まった状態に見えます(実際には無限大の時間をかけて事象の地平線に到達する)が、内部にいる人は潮汐力により素粒子レベルに分解されるということが起きます。

シュバルツシルト解は回転していない場合のブラックホールだが、回転している場合のアインシュタイン方程式の解を、カーが発見し、富松彰と佐藤文隆はさらに変形した解を見つけています。

ブラックホールは吸い込むばかりの天体ですが、それを動画で撮り、巻き戻して動画を見ると、あたかも吐き出してばかりの天体になります。そのような天体をホワイトホールと言い、つまり一度吐き出されたら二度と入れない領域のことを言います。しかし、そのような天体はまだ発見されておらず、数学上の空想的なものとされています。

参考資料

佐藤 勝彦「「相対性理論」を楽しむ本―よくわかるアインシュタインの不思議な世界 」PHP研究所 (1998/12/1)

真貝 寿明「ブラックホール・膨張宇宙・重力波~一般相対性理論の100年と展開~ 」光文社 (2015/9/20)

小山慶太「入門 現代物理学 - 素粒子から宇宙までの不思議に挑む」中央公論新社 (2014/8/22)

鈴木 洋一郎「暗黒物質とは何か 宇宙創成の謎に挑む」幻冬舎 (2013/9/28)

大栗 博司 「重力とは何か アインシュタインから超弦理論へ、宇宙の謎に迫る」中央公論新社 (2014/8/22)

数研出版編集部「もういちど読む数研の高校物理 第1巻」数研出版 (2012/9/1)

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