見出し画像

3Dで物を作り、3Dがクリエイターを作る。

皆さんお久しぶりです。ユタカ産業のOです。

近頃秋の風が漂ってきました。夏ももう終わりですね。
夏と言えば海、スイカ、自由研究、など色々なイメージがありますが、皆さんはどんな夏を過ごされたでしょうか。

ちなみに私の今年の夏はズバリ
「自由研究」です!
ということで、今回は自分で取り組んだ夏の自由研究をご紹介したいと思います。

※注意 目次「3、セミの資料を探しに。」にて本物のセミの写真がありますので苦手な方は飛ばしてください!

1、自由研究は「3D模写」!

夏と言えばと聞かれると、私自身はセミの鳴き声が聞こえてくると夏本番の始まりのような気がしております。

夏のスターターピストルなセミ、そんな彼らの見た目も私は好きでして、
あのおじいちゃんのようなしわがれた顔に、細く長い口吻(樹液を吸うストローの部分)。鎧のようにガチガチとした腹に、滑らかな背中の曲線…。
夏の風物詩として木に留まる姿を見て、
カッコいいぜ…
と子供の頃から思っていました。

しかし好きなのは形だけで、触るのはNGです。
だって至近距離ではうるさいですよね。めっちゃ飛ぶし。
アパートとかマンションの廊下の光に集まってくるの本当に最悪ですよね。
耳のあたりに飛んできて「ダァーッ!」と叫んだこと、何度もあります。
それでゴミは必ず朝に出すようになりました。

そんな募る思いが満載なセミですが、ある日3Dモデリングツールで色々な空想立体物を描いていた私は、ふと思いました。

「あぁ、セミを3D模写してみるのも面白いかもな…」

そういえば、3Dで模写をした経験が私にはありませんでした。いつか3Dで息子のフィギュアを作ってやろうと思っている私にとっては、必ず通らなければならない道です。

それに物言わぬ静かなセミを愛でたい! 落ち着いてセミを掌に乗せたい!
今回はそんな沈黙のセミを生み出す為に、私が勝手に一肌脱ぎました。

セミを自分で3D造形しつつ、3Dプリンターで出力しちゃいます。

2、「ZBrush Core」でデータ作り

今回セミを作るにあたって使用するのは3Dツールは、「ZBrush Core」です。
以下ZBrushのサイトリンクです。

このツール、何が素晴らしいかって、
粘土をこねるように三次元の形を作れてしまうということ!

ブラシという多種多様なツールを用いた3例

ペンタブレットを使って、お絵かきをする感覚でペンを滑らし、粘土遊びをする感覚で立体造形データを作るのです!

一般的な3Dのイメージ、というと、
なんだか丸や四角の図形を用意して、長さの寸法を入れて、ツールを使って立体を出すといったような、ある一定の手順やコマンドに対する知識が必要で、敷居が高いと思う方もいるでしょう。

ZBrushはそこが取っ払われて、すぐに感覚的な3D造形に入れます
造形の質感を決めるブラシの種類やテクニックは奥が深いですが、そんなものはペンを滑らせてから覚えればいいもの!

遊び感覚で覚えれるので3DCGのエントリーとしても最適ですし、大手を含む多くのゲーム会社がゲーム上の人物やクリーチャーなどを制作する上でZBrushを使っている、というビジネス面にも優れた品質になっています。

ちなみにZBrushには永久ライセンスやサブスクでの費用がかかります。3種類のグレードがあり、それぞれ使える機能に差があります。
ZBrush Core Miniは体験版のようなもので、完全無料で使用できます。
ZBrush Coreはサブスクでの費用があり、私はこれを使用してます。
ZBrushはZBrush Core版と比べると使えるツールの種類が膨大です。その分費用も嵩むので、まずはZBrush Core Miniを触ってみてください。

またペンタブレットなしでできないこともないですが、基本ペンタブがないと肉付け、削る作業などで盛る掘る深さの強弱ができず、造形が困難になりますのでそちらも必須です。何よりペンで操作するからこそ面白いので外せません!

それでは早速、私もZBrushを使ってセミを描きたいと思います!
デジタル粘土遊びの始まりです!

3、セミの資料を探しに。

さて、まずは実際にデジタル粘土に触る前に、造形の基となるセミの資料を探します。

4,5回足で小突いて動くか確かめました。


夏場だったので早速見つかりましたね。少し歩けば転がってます。

動かないことを確認して、接写します。
ネットに落ちている画像だと欲しい角度がなかったりするので、自分で本物を撮って確認するのが一番ですね。
息子の散歩がてら探して、セミの亡骸の写真を撮りまくっていた姿を過ぎ行くおじさんに不審な目で見られたはずですが、そんなものは気にしてられません。人生は一期一会ですよね(使い方ね)。

実際は更に10枚以上別角度から写真を撮ってます。

十分撮れたので準備OKです。
複製作業に入りましょうッ!

4、造形を始める。

それでは資料を基に、セミを造形していきます。
「2、「ZBrush Core」でデータ作り」での添付写真の球体からスタートして、セミ写真を見つつ質感を思い出しつつ、その姿を意識しながら立体をゴリゴリ削ったりべちゃべちゃ足したりして進めていきます。
最初から細かく描いていくと後で修正が大変なので、なんとなく形を追っていきましょう。

まずは頭。なんとなくの形を作ってから、各パーツに大雑把に線を入れます。

あーでもないこーでもないを繰り返しながら形を盛って削って整えて、と作っていきます。
余談ですが、実は私は絵を描くのがそこまで上手なわけではありません。
しかしこのZBrushを使っていると、画面上の立体物がペンでなぞったと同時に、リアルタイムで変形していくので形の妙な違和感に気づきやすく、修正もしやすいのです。

絵がそんなに描けなくてもいい
ソフトに対する知識が深くなくてもいい

それでなんとなく3D造形ができるって、

このソフト、最高かよ!?

興奮してきました、すみません。無論、ディテールを窮めていくとなれば随所で使いこなしが必要なので、頑張りましょう!
さてさて最初の頭から胴体描いて、脚を描き、羽を描き、
各々のパーツの位置やポージングを決めましょう。

体や脚の質感を試行錯誤しつつ、アレンジしつつ。

完 成 です! お疲れさまでした!
文章はさらっとしてますが、20時間くらいかかってるかもしれません…笑
私はまだ駆け出しなので時間がかかっております。

それはさておき
…まぁまぁグロテスクなんですけど、これ発表して大丈夫ですかね? 
会社的に。

まぁ、何か言われたら後でゴリ押しで説得しましょう。
印刷します!

5、3Dプリンター起動

3Dプリンターのやり方も、以前の記事から比べると大分進歩しました。今回はいつもより形が複雑ですが、いつも使っているテンプレの設定でいってみましょう。

できました。
本物より若干大きめのサイズ感でしょうか。
サポートを外すのに少し苦労しそうですが、慎重に取っていきます。


触覚は細過ぎて消えました。

おお!
いい感じじゃあありませんか! 初めてにしては上出来ということで!

では、遊んじゃいましょう!

秋のイメージに合わせたセミも乙ですね。
デジタル生まれのセミがデジタル写真の木に留まる。
セミと水晶って、相性イイな…。

いやー満足です…。他にも色々なところに合わせましたが、セミって何かと組み合わせ相性が意外にいいことがわかりました。
セミの形だけを作ってみるだけでも、様々なものと絡めて楽しめたり、新しい発想に繋がりました。いい収穫です!

やっぱり
好きなものはとりあえず作る!
って大事かもしれませんね。
あと自由研究は好きなものを追う! に限ります。今回の作品を見ながらしみじみと思いました。私が小学生の時にこんなモチベーションであれば、あの夏休みの自由研究も面倒くさがらずいい作品を生み出せたなぁ…、と窓際から青空を仰ぐ私。
皆さんも、研究は自分の魂に従いましょう!

6、これからのデジタル教育

自由研究と言えば毎年子供たちが背負う宿命ですが、最近では小学生にもPCの普及が進み、デジタル教育が早い段階から進められて、中には自由研究はプログラミングでゲームを作る、なんてユニークな子供も出てきました。

子供がプログラミング!?

そんなこと、私どもの世代では考えられないですよね。
でも時代の進行とともに世の中で必要とされる教育も移ろいでいくということは、きっとどの世代にも存在したでしょう。小学生での英語教育などもそうですが、我々の中でもどこかにあっただろうと思います。

これから先、デジタルの進化は至る所でますます進むでしょう。
伴ってデジタル教育の低年齢化も加速します。
テレビやネットで耳にするようになったDX、デジタルサイネージ、仮想空間メタバース。これらに関する議論が小学生の間でやり取りされる時代も遠くはないかもしれません。

よし、それじゃあこの先の未来を見越して学習だ! 

と一口に切り出しても、小学生などがデジタルにおける各専門分野を学ぶことは敷居が高い、と感じる方も多いとは思います。
親がデジタル学習に取っつきにくさを覚えてしまっては、子供に機会を与えるチャンスすらなくなる可能性もあるでしょう。

お堅い操作手順をなくした、わかりやすく、すぐ手に取れて面白いと感じる、そんなものが入り口として必要ではないでしょうか?
そこで出てくるのが今回ご紹介した

ZBrush!!

というわけです。
3Dモデリングツールとして最高の操作性と遊び心満載のブラシの数々。老若男女問わずすぐに動かせる直感的なツール仕様。
デジタルで粘土遊びなんて、素敵過ぎますね。子供から大人まで楽しめる超オススメの3Dモデリングツールです。

更にこのツールを使用するメリットを突き詰めて言わせていただくと、
例えば、特定の素材から形状を作り出すのに小手先の技術や専門知識が必要なものって、色々あるかと思います。
シルバーリング、ネックレス、ブレスレットなどのアクセサリー。ランタンなどのインテリア、おしゃれな小物入れなどの雑貨、数えてもきりがありません。
それらをどんな材料でどんな加工をして作るか、一つ一つ調べて体得するには途方もない時間がかかりますよね…。

でもこの3D造形を学べば、どんな形状でも生み出すことは可能です!
3Dプリンターの素材も今回のセミで使った樹脂系だけでなく、金属や木の性質に似た材料、シルバーアクセサリーの原型に使うワックス素材など多岐にわたるので、作ろうと思えば作れるものも多いのです。

つまり3Dを使って物を作るということは、
実物の粘土造形や彫金など、各専門分野の知識や技術で長い時間をかけて修行を積んで上る山々がありますが、色んな山をヘリで8合目くらいまで行けてしまう可能性があると言っても過言ではないのです! 汎用性ズル過ぎますね! 

このような物作りを広く簡易化できる便利なツールのお陰で、私のような全然畑の違う人間がクリエイターづらをして物を自由に作れる時代です。これは本ッ当に素晴らしいことだと実感しています!

便利なツールの一方で、技術が進化しているからこそ、今回のセミのように物体や物事を観察する力と、ツールはなんであれそれを基にアウトプットする力が大切になってくるかと思いました。
対象を熟知するからこそ、何か新しい技術を迎えた時に今までになかった閃きや価値を抽出できるようになるのです。
先ほど水晶の上にセミを乗せた時、セミの体から水晶が少しずつ生えているような姿も幻想的でカッコいいと思いました。今私の中にあるイメージをアウトプットできれば更に良い物ができる気がしています! 頑張ります!

話しがずれましてすみません! 元に戻します!

とにかくこのZBrushを押さえておけば、上記のセミのように3Dプリンターで印刷するだけでなく、そのモデリングデータを別のソフトでアニメーションCGとしてゲームのキャラクターのように動かせます。この先メタバースなどの仮想空間ができれば、3Dの需要もますます大きくなっていくかと思います。
その活用方法は、宇宙のように広がっていくデジタルの中で無限にあると言っても過言ではないでしょう!

吸収のよい多感な子供の時からデジタルツールに触れておくことは、この先の世界では大きなアドバンテージになるかと思います。
ゲームがすぐにうまくなるように、ZBrushもすぐに使いこなせるようになるでしょう。
来年の夏休みの自由研究はもう決まりですね!

長々とここまでお付き合いいただきありがとうございました!
それではまた次回、お楽しみに。