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アンラーニングを実践するのは超難しいから、誰か助けてください

退職エントリを書いて、色々な方からコメントをいただいた。なかでも興味深かったのは「他人と比較するのは自分のために良くないと思うけど、反射的にしちゃう。どうしたら良いのか」と言う問いだった。この問いは、アンラーニングを実践することの難しさを現してる。

アンラーニングとは

アンラーニングとは、一旦学習した知識や既存の価値観を意識的に捨て去り、新たに学習し直すことです。

(中略)日本企業のように、一人前になることがゴールとなり、成長が止まってしまうケースが多いのは、既存の知識や価値観が成長の邪魔をしているからです。アンラーニングは、成長を阻む既存の知識や価値観を意識的に棄却することでさらなる成長を促すため、一人前となり熟達した後の学習方法として有効に機能します。

「アンラーニング」とは | BizHint (ビズヒント) - 伸びる会社は知っている

「既存の知識や価値観が成長の邪魔をしているから、意識的に捨て去りましょう!」と言う文章を読んだだけで実践できる人がいたら、マジでスーパー天才だと思う。アンラーニングが文章を読んですぐに実践できるくらいの難易度だったら、とっくに世界は平和になっているはずぜよ。


既存の価値観≒前に所属した環境での生存戦略

知識よりも価値観を捨てる方が圧倒的に難しい。価値観≒自動化された思考だとぼくは理解しているが、それをアンラーニングするまではかなり葛藤が生まれる。アンラーニングの一事例があの退職エントリなのだが、「周りの目を気にする」自動化された思考を捨てて、「自分に正直に生きよう」と決意ができるまで、ぼくの場合は6年も掛かっているのだ。

振り返ると「周りの目を気にする」思考が、ぼくにインストールされたのは多分中学生の時だと思う。ぼくの中学はヤンキーが多く、腕力でヒエラルキーが決まる世界だった。自分には腕力がない。いじめの的になったら勝てない。そうなると「嫌われないこと」が、その環境での生存戦略になる。嫌わられない生存戦略は成功。なんとか生き延びれた。成功したと言う学習結果を見て、「周りの目を気にする」思考が自動化され、高校・大学・社会人とその思考が強化された。


脳が「既存の価値観の棄却」を「生存の危機」と誤認?

「周りの目を気にする」思考が通用しなくなってから捨てるまでの一部始終が退職エントリなのだが、別の視点からフェーズ分けをしてみる。

1.  既存の思考が通用してた期間(1年半)
2.  通用しない環境にいた期間(1年)
3.  再び既存の思考が通用する場所に移動し活躍(3年)
4.  また通用しない環境に移動し、捨てる事を決意(半年)

一度、通用しないと気付いたのに、3で既存の価値観に戻っている。これは2の期間で過剰に自己否定し過ぎて、本当は否定しなくても良いものまで否定したので、自分の思考の中でなにが有効で、なにがダメなのか選別するために必要な期間だったのだと思う。もう一つ理由があるとしたら、「既存の価値観を変える=自らの生存危機」と脳が誤認していた説。今まで成功していた生存戦略を変更する=生命の危機みたいな、回路のつながり方をしていたのかな。この辺のテーマを研究した学術論文とかありそうだから、調べてみようかしら。


既存の価値観を捨てる能力を上げるには

既存の価値観は「咄嗟の発言」とか「無意識の反応」に出る。今まで生きてきた環境においては、その生存戦略が有効だったと学習したため、自動化されて反射レベルにまで昇華される。ただ、環境が変わると、今まで有効だった生存戦略が足を引っ張る事も。環境が変わって既存の価値観が機能しなくなった際に、それを早く捨てられる人のことを「メタ認知能力が高い」「セルフアウェアネスがある」とか評するのだと思う。

ぼくが瞑想、マインドフルネス、コーチングを学び出したのも、この辺の課題意識が強くなった時だと思う。他者との対話でセルフアウェアネスやメタ認知を進めるのがコーチングで、自らとの対話で進めるのが瞑想・マインドフルネスだと理解している。どっちもスポーツみたいな側面があるので、適切な指導者に教えを乞うて、実践を積み重ねて行けば上達していくものだ。逆に実践なしに本だけ読んでも、全然上達はしない。スポーツと同じなんで。


ソフトウェアも人もアンラーニングが必要

ソフトウェアエンジニアリングにおいても、目の前の機能開発に追われて古いフレームワークやライブラリを放置し続けると、新しい機能開発ができないくらいがんじがらめになっていく事がある。人間もソフトウェアも、古い知識や価値観をアンラーニングをしないまま過ごしていくと、新しいラーニングができなくなるタイミングが来る。スクラムにおけるKPTが秀逸な点はチームとしてラーニングする対象を"Keep"と表現し、アンラーニングする対象を"Problem"と表現していることな気がする。

年齢が上がっていく中で絶対に身に付けるべきなのは、アンラーニングの技術。ただ、自分の問題点は自分だけでは絶対に見えないので、みなさん助けてくださいw と言うより助け合ってアンラーニングしていきましょう。


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