【読書】〜手紙〜を読んで
東野圭吾の作品。直木賞もとっていて、ドラマ化、舞台化もされている。20年近く前から発行されている。
東野圭吾といえば、推理小説のイメージだが、この本は兄弟に焦点を当てた、感動の物語である。
この本には、兄弟が出てくる。自分に小さな兄弟がいれば、この長男の気持ちももっとわかるのだろうか。お金に不自由をしている家族の兄弟愛は、時に悲惨な結果を招いてしまうんだなと思った。
家族を思いすぎて、行き過ぎた行動をとってしまう。家族のためになると信じて行った行動が、逆に家族を一生苦しめてしまう。
行き過ぎた愛情は、崩壊を招いてしまう。
長男の苦悩、次男の苦悩
本のタイトルである、手紙。兄の剛志と弟は、文通の様な形で手紙を送り合い、お互いの今の状況や未来について書きあっている。
しかし、お互いの置かれた状況は、とても複雑であり、悲しい。
兄の剛志は、弟の大学進学のために、自らは大学へは行かずに、働いている。しかし、無理をし過ぎて体を壊してしまう。弟の大学の費用をなんとかして稼ぐために思いついたのは強盗をすることだった。
引越し業者で働いていたので、お金持ちの家は知っていた。しかし、やはり悪いことであるという思いもあったが、弟のためを思い、強盗を実行する。
下の兄弟を持つ、長男の僕としては、剛志のこの行動を、なんてあさはかな行動なんだと思う反面、強盗の成功を願ってもいた。
剛志もお金をとる以外は、その家に何かをするつもりもなかったし、お金も弟の大学費用の分だけを盗ろうと考えていた。
しかし、犯行中に家主に見つかり、強盗殺人を犯してしまった。
弟はこの知らせを聞いて、唖然とする。兄は、自分のために強盗をしたのだと。そして、殺人犯となってしまったのだと。
この事件により、兄はもちろん刑務所入り。弟は殺人犯の弟というレッテルを世間から張られてしまう。
自分の私利私欲のために犯した罪ではない。自分の為だということを知っている弟の心境は、読んでいて悲しかった。兄を責めることはできない、しかし兄のせいで、あらゆる場面で不利な状況にならざるを得なくなる。
やり場のない怒りほど、心を不安定にするものはないと思った。途中、弟の置かれた状況を理解して、彼に接してくれる人も現れるが、やはりどこかで犯罪者の弟であるというレッテルが、自分に近づいてくれる人をも、巻き込んでしまう。
毎月続いていた手紙のやり取りも、次第に送らない様になり、ついに、自分のこの状況を兄のせいとし、離別をすると手紙を送るのである。
まとめ
気にし過ぎや、尽くしてくれすぎる家族がいることは非常にありがたいし、恵まれていると思う。しかし、こういった状況を招いてしまうほどの愛情はなんと悲しいのだろうと思った。
愛情があるが故、お互い長い期間、悩み続けている。こんな結末を生んでしまう様なら、家族を思い過ぎるのも考えものだと思った。
しかし、離別の手紙を出してからの、弟の心境は変化していく。
兄に離別の手紙を送った弟の心境に、その手紙を受け取った兄の心境に、ついつい涙を流してしまう。
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