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飛行機は墜落したかもしれないのだ。

ベルリンからパリに向かう飛行機は1時間以上の遅れとともにたった今飛び立った。

遅れの主な原因は使用機の到着遅れだったが、それ以外にも搭乗時に多くの人が止められていたり(荷物を預けていない人が一通り止められていたようだ。機内のスペースが限られているから、小さなスーツケースもその場で預けさせられていた。フランス語のわからぬドイツ人にフランス語でまくし立てるフランス人のせいで何度も列の進行が妨げられた。私も止められたが、リュックひとつしか持っていなかったためすぐに通してもらえた)、機内のエアコンが機能しなかったり、左の翼の何かが故障していて取り替えなければならなかったり、と、トラブル続きだった。

そんな感じだから、もしかしたら最終的にこの飛行機は墜落してしまうかもしれない。ということはこの文章も誰の目にも触れずに葬り去られることになるのだろうか。

そんな中CAたちは呑気にサンドイッチなんかを配り出した。ベジタリアンかチキンか、だそうだ。

チキンにした。意外と美味しい。ベルリンではイマイチ美味しいものにありつけなかったからなんだか嬉しい。人気のハンバーガー屋さんも、正直そこまで美味しくなかったし、サービスも酷かった。結局ホテルの朝食のカリカリのベーコンがベルリンで食べたものの中で一番美味しかった。


もし飛行機が墜落して死んでしまったら、どんないいことがあるだろうか。

今仕事で頭を抱えているあれこれからは解放される。お金の心配もいらない。これ以上人間関係に悩まされることも、逆に私が誰かを悩ますこともなくなる。

それではどんな悪いことが待っているだろうか。

私は閉所恐怖症だから、墜落していく途中は泣き喚くだろう。機内に閉じ込められたまま死ぬのは嫌だから、せめて飛び降りて死なせてほしい、と志願するはずだ。

あぁ、出せなかった新作。今、めちゃくちゃいいのが3つもある…もう死んでしまうのならあんなにいい香り、作らなければよかった。

あとは、今私が死ぬと、多分悲しむ人が何人かいる、と思う。きっと。そんなに多くはないけど、その人たちはひどく悲しむはずだ。それはちょっといただけない。


ベルリンではいくつかの「ベルリンの壁」を見に行った。今は柵だけになっている場所も多かった。その中のひとつは、シロツメクサが所狭しと茂った芝生の中にあった。土砂降りの朝から打って変わってよく晴れた昼下がり、多くの人が散歩をしていた。

そんな人たちはもし生まれた時代が違っていたら、ナチスに虐殺されていたかもしれないし(あるいは虐殺する側だったかもしれない)、壁により愛する人と引き裂かれていたかもしれないのだ。

彼ら彼女らは、運がよかった。私もしかり。

ドイツの他の都市はよくわからないが、ベルリンというのは、その歴史の暗い部分がいまだに透けて見える場所だと思った。その意味でもそこに赴いた意味があると感じた。


大変なこととか辛いこと、たくさんあるけど、まだ死ぬのには早い気がする。それに、それは正しい比較ではないだろうが、きっと私は恵まれている。とても運がいいはずだ。


神様、あと少し、この「運のよさ」を持ち続けることを私に許可してください。まだ死ぬのにはちょっと早いと思うのです。もう少ししたら、私はこの社会に何かいいことができるはず。

それまでは私を生かしておいてもらえませんでしょうか…?多少辛くても我慢します。

でも、あんまりきつくはしないでくださいね…?


このnoteがアップされているということは、神様の思し召しにより、飛行機は墜落せず、私は死の淵から生還したことになる。よかった。

いや、まだわからない。今ちょうど飛行機は降下をはじめた。墜落の可能性はまだ残されている。あと20分…無事に到着しますように…


ということで、無事にパリに着いて、私はこのnoteをアップすることができている。あのフライトから1日が経ったが、私はまだ生きている。

よかった。神様、ありがとう。もう少し、頑張れそうです。


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