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空の上での9時間半睡眠
イスタンブールから羽田に向かう飛行機は予定から30分遅れの深夜2時半に離陸したようだが、私はその前に眠ってしまっていた。アイスマスクにヘッドホンの“完全防備”だった。
一度目が覚めた時、チラリと見た時計の針は6時を示していた。フランス時間に合ったままだったので、離陸時から考えると4時間半が経過したことになる。機内は暗かった。まだ眠かったので、私のアイマスクという“帳”は再びおろされた。
次に目が覚めた時、CAさんが食事の配膳を始めていた。目の前のスクリーンには、羽田まであと2時間と表示されていた。時計は11時を示していた。
つまりは合計9時間半寝てしまったのだ。アルコールも、睡眠薬も、なしで。
確かに前日はやることがたくさんありあまり眠れなかったが、それにしてもエコノミークラスの機内で9時間半睡眠というのは、なんだか度が過ぎている気がしてならない。飛行機で眠れない人からすると羨ましいのかもしれないが、私は逆に自分のことが不安になった。
そんな不安の中、私はこのnoteを書き始めた。さすがに9時間半睡眠の後なので、頭はすっきりしている。さぁ、書くぞ書くぞ。
1席空けた隣、通路側に韓国人らしい女の子が座っている。彼女は搭乗後着席するなり、大きなiPadを取り出して動画を見始めた。韓国人だと思ったのは、その字幕がハングルだったからだ。
一度目を覚ました時、彼女はそのiPadで絵のようなものを描いていた。最終的に起きた時もそれを続けていた。機内食も断り、彼女は黙々とその作業(それは絵というよりも図に近いものに感じられた)に没頭していた。
私が寝ている間に彼女がどれほどその作業をしていたのかはわからないが、少なくとも私の目に映る彼女はかなりの集中力を持ってそれに取り組んでいた。チラリと見るとかなりの“大作”だったので、きっとずっとやっていたのだと思う。
私はふと、パリからイスタンブールのフライトでの読書を思い出した。それは誰からも邪魔されない素晴らしい読書体験だった。インターネットにつながっていないから連絡もこないし仕事もできない。常にあれこれに追い立てられる日々の中の、ある種の“サンクチュアリ”だった。
私はこの9時間半を、質の低い睡眠にあてるのではなく、質の高い読書や、あるいは書こうと思って手がつけられていない執筆に費やすべきだったのではないか、と思った。せっかくの長時間のフライトは、きっともっと有効に使えたはずなのだ。
また、逆にいうと、ロングフライトをこれだけ快適に感じるのは、“地上”での生活がそれだけ息苦しいものだからかもしれない。今こそ私は、日々の生活を見直すべきときに差し掛かっているようにも同時に思った。
執筆の途中、私の代わりに今度は隣の彼女が眠りについた。トイレに行こうかと思ったが、あと1時間ほどで到着するし、我慢できないほどではない。頑張った彼女は起こさずにそっとしておこう。
フライトが到着するのは日本時間の夜8時過ぎ。ということは家に着くのは10時ごろになるだろう。どうせすぐには眠れないから、帰ってダラダラ過ごすのではなく、少し運動をして、溜まった仕事を片付けてしまおう。読書をするのもいいかもしれない。
今回のパリ、ベルリン、ナポリ出張は、いつも以上にあれこれ気づきがあったように思う。それらの気づきによって、これからの生活はきっといい方向に進む予感がある。
予感を予感で終わらせないように、着いたその日から、私はきちんと生活をしていきたい。
そのための9時間半睡眠だったと思うと、きっと悪くはない。なぜなら私の生活は、地上にあるのだから。
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