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フレグランスマーケットの盛り下がり

ここ最近、日本のフレグランスマーケットの盛り下がりを感じているのは私だけだろうか。特に今年に入ってからその傾向が強くなったように思う。

特定の事象がそう感じさせている、というよりかは、“なんとなく”のレベルでしかない。よって、私が盛大に間違っている可能性は大いにある。それにきっと、売上や市場規模に関しては引き続き伸びているはずだ。私が感じているマーケットの盛り下がりは、「盛り下がり始めの兆し」といった方がより正確かもしれない。いずれにしても、今すぐフレグランスが消費者からそっぽを向かれる、ということはないだろう。

ただし、こういった「兆し」を無視してしまうと、後々取り返しのつかないことにもなりかねない。そんなこんなで、今の私の考えを書きながら整理しようと思い立った。


盛り下がっていると感じるひとつの背景は、販売店のフレグランスに対する取り組み方のちょっとした変化だ。去年まではもっと熱があったような気がする。それが今年はどこかトーンダウンしているように感じられるのだ。


繰り返すが、私が間違っている可能性は大いにある。その上で、もし本当にそうなのであれば、なぜフレグランスマーケットが盛り下がっているのかについて考えてみた。

ここ最近気になっていたのは、ブランドの発信がひどく安っぽくなっている、ということだった。あまり具体的に書くと角が立つので控えるが、PR手法、色使い、言葉のチョイス、どこを切り取ってもチープな印象なのだ。

今までのフレグランスブランドの発信はどちらかというとラグジュアリーのコンテクスト上にあった。プロダクトの値段に関わらず、そもそもフレグランスというプロダクトのポジショニングは「ラグジュアリー」だったのだ。

昨今のブランドの発信はその真逆で「大衆的」になっている。気持ちはわからなくはない。ただでさえ「香り」という伝えにくい商材を扱っているのだ、それを「ラグジュアリー」というよりわかりにくいコンテクストで語ると、消費者にとってはどうしても難解になってしまう。実際に大衆的な伝え方をした方が数字は出るのだろう。

また、ブランドの発信以外にも、フレグランスを紹介するSNSのアカウントも以前に比べるとわかりやすくチープなものばかりになった。昔は詩的なものが多かった(それはそれでどうかと思っていた)が、今では「モテ」「好感度」「沼らせる」(「沼らせる」って不思議な日本語だね…)等のワードばかりが目につく。

好意的な解釈をすれば、フレグランスは「売れる」商材になった、ということだろう。今まで各ブランドが力を入れてきたブランディングによって、フレグランス全体のイメージが向上したことは間違いない。今はそれをマーケット全体でマス向けの発信に切り替えて、“刈り入れる”タイミングに差し掛かっているのかもしれない。

ただ、そのマスへの切り替えがあまりにも“急ハンドル”すぎるような印象は否めない。そしてそれを一部の消費者はすでに敏感に感じ取っているのではないだろうか。特に、トレンドに敏感に反応してきた小売店がその先鋒になっているように私には感じられる。

フレグランスがどんどん大衆化していった先には、どんな未来が待ち受けているだろう。並行輸入品の香水を中高時代に使っていた人が大人になってほぼ香水を使わなくなってしまうのと同様の現象にならないだろうか、というのが私の危惧だ。


繰り返しになるが、私が間違っている可能性は大いにあるので、この意見は鵜呑みにしないでほしい。

それに、ここでどれだけ声高に叫んだところで、この声が届く範囲というのは非常に限られている。マーケットに与える影響は全くないに等しい。

ただ私は、çanomaはその流れにのらないように注意しなければならないと感じている。この小さなブランド規模でマス向けの戦略をとったら、線香花火のようにすぐにポトっと落ちてしまう。

そして、せっかくここまで盛り上がってきたマーケットなのだから、私がここで書いたことが本当にならずに、引き続きマーケットとしていい成長をしていってくれるといいなぁ、と願うばかりである。

さて、どうなることやら…


いずれにしても、いいモノがないマーケットは遅かれ早かれ廃れていくと思う。今のフレグランスマーケットに、本当にいいモノはどれくらいあるのか、それは「いいマーケット」になるのに十分なのかについて、マーケット全体で考えるタイミングに差し掛かっていると、私には感じられる。

いいマーケットに、なってほしいなぁ。


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