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自己紹介は続くよどこまでも 〜私がフランスに来た理由〜

昨日『星の王子さま的自己紹介』というタイトルで私自身について書いてみたわけだが、思えばこれから書いていくこと全て、自分を紹介しているのではないだろうか。過去にこんなことがあった、こんな本が好きだ、安倍政権について賛成・反対…全て自己紹介の一部となりうる。
本や香水などの私以外のものを紹介したところで、私がその対象物に対しどのように考えているか、ということに一度言及してしまえば、それはまた自己紹介になる。もっと言うならば、それを紹介したと言う事実だけですらも、自己紹介たり得るかもしれない…

ということで、まだまだ続くよ自己紹介。今日はフランスに来た経緯について話そうと思う。

これについても、昨日同様、2通りのアプローチの仕方があると思う。ひとつは“今”を頂上として過去を振り返る方法、もう一つは過去のある時点から時間軸にそって歩みを進めていく方法だ。
これだけだとよくわからないと思うので、それぞれの方法で説明してみる。

まずは前者、“今”を頂上として過去を振り返る方法。

大学院卒業後、金融機関に就職するものの、香水業界で働く夢を捨てきれず、渡仏を決意、働きながら準備をし、2015年に念願かなってフランスに来た。

この説明は、「香水ブランドを立ち上げる」と言う“今”と関連のありそうな情報を過去の出来事の中から引っ張り出して、それらをつなぎ合わせることで一本のストーリーを作る、という手法である。間違ってはいない。簡潔だし、見栄えもいい。もし私が何かのインタビューを受けることになったら、プロフィール欄にはこの手のことが書かれるだろう。

それでは後者の、過去のある時点から時間軸に沿って歩みを進めていく方法で書いてみよう。少し長くなる。

香水は大学生の頃からハマり、コレクションしていたが、その分野で働こうという気持ちは微塵もなかった。大学では工学部に所属していたが、あまり大学院に行くつもりもなく、部活の先輩の影響で金融に興味を持ち、投資銀行への就職を志していた(結局学部時代の就活がうまくいかず、大学院に進学することになるのだが)。
大学院卒業後は念願かなって外資系投資銀行で働くこととなる。就職当初は、この業界でのし上がることを夢見ていたが、実際にしばらく働いてみると、自分がこの業界に向いていないのではないか、と思うようになる。

この「向いていない」ということについて、もう少し詳しく説明したい。どのような仕事も、そのバランスはどうであれ、仕事の中で楽しい部分とそうでない部分がある。例えば料理人であれば、(あくまで想像だが)料理を作ることは楽しいが、店の掃除はつまらない、といった具合に。
投資銀行における「楽しい部分」とは、社会的インパクト、金融的知的好奇心の充足、高額な給料、ステータスあたりだ。そして、日々の作業は、これらのために行われることとなる。
私は、今挙げた投資銀行における「楽しい部分」が、日々の作業をするモチベーションにまったく結びつかなかった。その上仕事は忙しい。通常運転時で朝9時から夜2〜3時まで働いていた。忙しい時期は徹夜も多かったし、土日も頻繁に出社した。
これはなかなかの地獄である。つまらない作業の対価がモチベーションにならなず、しかもそれが長時間続くわけだから、たまったものではない。
誤解のないよう補足するが、私は金融の仕事はやるに値しない仕事である、と述べているわけではない。あくまで他の人には「楽しい」と感じうる部分が、私にはまったくもってそうではなかった、ということを言いたいだけだ。

話を戻そう。そんなこんなで、夢にまでみた業界、会社であったにも関わらず、1年で転職することとなる。転職先も同じ金融業界で、今度は投資ファンドだったが、仕事量は大幅に減り、投資銀行にいた時よりも幾分楽しんで働くことができた。加えて、良い上司にも恵まれた。
きちんと電車が動いている時間に帰れて、しかも土日の出社はほとんどない。私の掌の上には、今までなかった“自由な時間”が乗っかっていた。この自由な時間に何かしよう、と思い、読書に精を出したり、毎週末大小様々な美術館に足を運んだり、茶道のお稽古に通い出したりした。
そんな中、特に理由はないのだが、語学の勉強をしよう、とふと思い立った。母が趣味でフランス語の勉強をしていたので、フランス語に関する参考書はわざわざ買わずとも十分にある。それらを拝借し、コツコツと勉強を始めた。
今でもよく覚えている。ある晴れた日曜日の午後、窓際に小さなテーブルを出して、フランス語の勉強をしていたら、ふとこんな考えが降りてきた。
「フランスで生活してみたらいいのではないか?」
フランスで何かがしたいわけでも、フランスに特に強い憧れがあったわけでもなかった。ただ、フランスで生活をすることが“正しい”ことのように思われたのだ。
さてフランスに行って何をしようか?最初は語学学校に通うだろうが、その後は?もう金融業界で働く気はない。当時は写真が好きだったから、写真の学校にでも行こうかな、と考え、大学や専門学校について調べていた。
そんなことをしばらく考えていたら、またしても新たな考えが降りてきた。
「せっかくフランスに行くのであれば、香水に関わる何かをしたら良いのではないか?」
この考えも、当時の私には正しく思われた。そこで、調香師になるための学校に入学することを目標に渡仏しよう、と心に決めたのだ。
そして一年ほどの準備期間の後、2015年に渡仏することとなる。

なかなかの長さになってしまった。
こちらの説明は、冗長だし、ロジカルな説明になっていない部分もあるが、より正確だ。前者の説明は簡潔である分、出来すぎた話になっていて、若干の不正確さ含まれている。
理解していただきたいのは、結構いろんな道草を食いながら、流れ流れてフランスにたどり着いてしまったんですよ、ということ。初志貫徹したわけでも、確固たる意志があったわけでもない。いろんなことを考えながら、いろんな無駄や遠回りをしながらここまで来ている。
せっかくブログを書き始めたわけだから、普段なかなか説明することのない、こういったのらりくらりとした部分までしっかりと書きたかった。

さて、次はフランスに来てから現在に至るまでについて書こうと思う。一回で書ききれなかったら、複数回に分ける予定だ。どのくらいの長さになるのか、イマイチ想像がつかない。簡潔にまとまるのか、それとも書きたいことが溢れてしまうのか…乞うご期待!

ここまで読んでくださった方、ありがとうございます。

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