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生煎饅頭の思い出

新横浜から横浜に向かう横浜線の中でこの時間記事を書き始めた。新横浜は横浜の隣くらいに考えていたが、意外と距離があり驚いている。もっと近いものだとばかり思っていた。

今夜は横浜でミーティングがあり、明日は早朝の新幹線で京都に向かう。ミーティング後に東京に戻ってまた朝早く家を出るよりも、新横浜から直接京都に向かった方が楽だろうと思い、思い切って新横浜のホテルに一泊することにした。幸いブッキングドットコムのブラックフライデーセールで安く宿泊することができた。

夜8時からのミーティングの後に、ミーティング相手と夜ご飯に行く予定にしているが、その前に私は中華街で生煎饅頭、いわゆる「焼き小籠包」を食べようと思っている。


生煎饅頭が好きだ。

はじめて食べたのは、大学院生の頃、上海でのことだ。

大学院の海外研修最終日の朝、特段予定されているイベントはなく、朝食後にバスで空港まで向かうだけだった。充実した研修となった一方で、とにかくよく食べよく飲みよく遊んだ1週間だったので、私たちは極限まで疲労困憊だった。


あ、間違えた…私、反対方面の電車に乗っていたようだ…。八王子方面の電車に乗っていたけど、逆だわ…。鴨居で降りて乗り換えねば…相変わらず、やらかすなぁ…


気を取り直して。

上海のホテルで同室だったO君が、早朝からゴソゴソと準備をしていた。その音で目を覚ました私は、彼に何をしているのか尋ねたところ、

「小籠包を食べに行く」

とのことだった。咄嗟に私は、一緒に行っていいか聞いた。彼は少し迷惑そうな素振りをしながらも許可してくれた。

後で聞いたことだが、彼はその時私のことがあまり好きではなかったとのこと。どうやらちょっとした“誤解”のようなものがあったらしい。研修から帰国後、晴れてその“誤解”が解け、私たちはグッと仲良くなるのだが、その時にそんな告白をしてくれた。

電車を乗り継いで、目指す小籠包屋に到着したものの、なんとその日は臨時休業。せっかくここまで来たのに、ガッカリ。


私たちは小さなショッピングモールのような建物の中いた。朝早い時間だったこともあり、空いているお店は限られていた。

その限られた営業中のお店の中にひとつ、行列のできているものがあった。

「せっかく来たから並ぼうか」

そういって失意の私たちは、何のお店もよくわからないまま列に並んだ。

前にいた人が、予め食券を購入しなければならないことを英語で教えてくれた際、O君はその人に中国語で返答をした。彼が日本語と英語のバイリンガルであることは知っていたが、基礎的な中国語まで話せることは知らなかった。

「中国語、いつ勉強したの?」

「2ヶ月くらいに親の仕事で中国に住んでたんだよね。その時だよ」

そんな短期間でひとつの言語を習得できることに驚かされた私は、英語が喋れるということで彼に向けていた尊敬の眼差しをさらに強めることとなった。私は当時英語に強い苦手意識があったのだ。

中国人と相席になった。そこでもO君は中国語で会話をしていた。そのレストランで提供されるものが生煎饅頭といい、それは焼いた小籠包のようなものであること、このお店は上海ではかなり有名であること、私たちが目指していた小籠包のお店よりもこちらのお店の方が人気であること、などをその人に教えてもらっていた。

とても美味しかった。O君の庇護のもと、中国の朝の味を堪能することができたことで、私は得をしたように感じながらも、自分の弱さや小ささを思い知らされることとなった。


そんなこんなで、O君との思い出も相まって、生煎饅頭は私の好きな食べ物のひとつになった。中華街で見つけたら必ず買うようにしている。

O君と一緒に食べたそれには劣るものの、いつ食べてもそれは美味しい。そしてその味はいつも、まだ若くて生意気で何もできなかった私の姿と、そんな私とは対照的に自立して大人びていたO君の横顔と共に、恥ずかしくも懐かしく思い出されるのだ。


電車を乗り間違えたおかげで、関内駅に着く前にあらかた記事を書き上げることができた。これからミーティング前に生煎饅頭を食べようと思う。13年前の上海での私の姿に、再会しに行くのだ。

あの時よりかは私は少しだけでも自立できているだろうか。O君とはしばらく会っていないが、彼は元気にしているだろうか。そんなことを思いながら、中華街で生煎饅頭を頬張ろうと思う。


編集後記
今日も美味しかった。ついでに胡麻団子も、食べちゃった。


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