香水を贈ろう
今日Uber車内のラジオで、「母の日に香水をプレゼントしましょう」とどこかの広告が言っているのを耳にした(今年のフランスにおける母の日は6月7日)。
フランスでは、何かの折に香水をプレゼントとして贈ることがわりと一般的だ。クリスマスプレゼントの定番の一つでもあるため、その時期になると、大手ブランドはクリスマス商戦に合わせた新作やプロモーションに大変力を注ぎ、街中の広告が香水だらけになるし、実際に人々も香水売り場に詰めかける。
日本ではあまりされることのない香水のプレゼントが、フランスでは“気軽に”される背景として、
① 大半のフランス人が香水を使っていること
② ロマンチックな商品であること
③ プレゼントにちょうど良い価格帯であること
④ 大手のブランド名が入っている商品であること
等があると考えられる。特に①は日本との大きな違いだ。また、仮にその香水が気に入ってもらえなかったとしても、渡す瞬間のロマンチックささえあれば、プレゼントとしての役割をしっかり果たしたことになる、という考えも多かれ少なかれあるように思う。
このように、フランス人相手に香水をプレゼントするならば、あまり深く考える必要はない。しかし、もしあなたが、日本人相手に香水をプレゼントしたいと“不覚にも”思ってしまった時、どのように香水を選ぶのが良いのだろうか?それとも、そもそも香水なんてプレゼントしない方が良いのだろうか?恋人に贈るための香水選びを依頼されることがしばしばある私なりの考えをここに書き記しておきたい。
ちなみに、当の本人は、まぁまぁ長い期間恋人がおらず、かつプレゼントとして香水を贈ったこともほとんどない(その機会に恵まれなかったのだ)。これを巷では「紺屋の白袴」という。
まず、プレゼントとして香水を選ぶということは、それなりのリスクを背負っていることをご承知おき願いたい。好みに合わない香水をプレゼントしてしまう可能性は大いにある。一方で、リスクが大きいということはリターンも大きい。もし相手の好みにドンピシャの香水を選ぶことに成功したら、それはそれは素敵なプレゼントとなることだろう。
このリスクを軽減する方法は、なるべく小さいサイズを買うことだ。個人的には30〜50mlが一番ちょうどいいサイズのように思う。30ml以下のサイズになってくると、お試し商品感が出てくるので、プレゼントとしての印象が薄れてしまう。逆に50mlより多いと、もし好みに合わなかった時に相手に変な罪悪感を与えてしまいかねない。
もし相手が、今まで全く香水を使ったことがない人だったとしよう。その時は、あなた自身が思う、相手に似合いそうな香水をプレゼントするのが良いと思う。探すのは大変かもしれないが、あなたが贈った香水が相手のファーストフレグランスになる、というのはなかなか素敵なことだ。
その際に、個人的にはニッチフレグランスよりは、大手ブランドのものから探した方がリスクは少ないように思う。ニッチフレグランスの中には、ある程度いろいろな香りを嗅いできたことで良さがわかるものが相当数あるし、そもそもが玉石混交で、その中から良い商品を選ぶことが難しいからだ。大手ブランドの香水は、その点大衆的であるが故に受け入れやすいものが多いし、実は変な作品は少ない。
もちろん、あなたがニッチフレグランスの中から、相手にとても似合いそうなものを見つけたのならば、それをそのままプレゼントするのが良いと思うが、そういうことがない限りにおいては、大手ブランドのものから探す方が良いと思う。
相手が香水を使っている人である場合は、まずは相手の香水歴をしっかり把握するところからはじめよう。把握したら、Fragranticaというウェブサイトで、それがどういった香りなのかを調べてみる。
まず注目するべきは"Main accords"のところ。ここではJean-Michel Duriez Parisの"L'Etoile et le papillon"を例にとってみる(個人的にとても好きな作品だ)。
もし相手がこの香水を愛用しているとわかったら、ローズの香りやウッディノート、アンバーなどは好きであることがわかる。
次に、ここから少し下のMain notes according to your votesの部分を見てみよう。
ここでどういった香料がメインとなっているかがわかる。ローズ、アンバー、サンダルウッドが主な香料のようだ。
これらを総合した上で、ある程度相手が使っている、あるいは使っていたものから遠くないものに絞って探すのが良いと思う。Fragranticaでは、香料のアイコンをクリックすると、その香料がメインで使われている香水が提示される。このウェブサイト上でいくつか当たりをつけたら、それらを香水売り場で試してみて、ピンときたものを選ぼう。
あるいは、相手の香水歴を知った上で、香水売り場の店員さんに「○○と××を使っていたのですが、おすすめありますか?」と聞いてみても良いかもしれない。ただし、店員さんは得てして自分のブランドの香水しか知らないし、その時期に売りたいものをおすすめしてくる可能性も否定できないので、そこは慎重になった方が良いだろう。
「プレゼントするなら、昔使っていたものと全く違うものを贈った方がいいんじゃない?」と思う方もいるだろう。一理ある。しかし、それではリスクが高すぎる。
香水歴は、現在の相手の香りに対する好みをかなり色濃く反映している。なぜならば、ある香水を選んだということは先天的にその香りが好きであることを意味しているし、その香水を使用することにより後天的にその香りに親しんでいるはずだ。
同じような調香でも、嗅ぎ比べてみるとかなり違いがある。その中で、より相手のイメージに近いものを選んであげると、リスクも低いしより満足してもらえるもを贈れる。私の経験上もそうである。
今日は考えてみればとても当たり前のことを書いた訳だが、これが実際に私が他の人の香水を選ぶ時にやっていることだ。独り身の私には直接役に立つノウハウではないので、どこかの誰かにとって役に立つものであれば、これ幸い…そして、「香水選んでください!」ということであれば、喜んで選ばせていただきます!
ここまで読んでくださってありがとうございます。次回も乞うご期待!