情報の精度はいずこへ
私は今までどれだけの誤字をしてきたのだろうか。
このnoteだけを切り取っても、かれこれ4年以上毎日、計1600記事ほど書いている。かなりの数の誤字があってもおかしくないはずだ。
書き上げた後は一応通読の上ミスがないかの確認をする。結構ひどい誤字を見つけることもしばしば。漢字の変換ミスが一番多いが、それ以外にもアルファベットが1文字取り残されている(例えば「と」と打とうとして「t」だけになっている、みたいなもの)、なんてこともある。
確認したとて、誤字を完全に防ぐことはできないが、一読するだけでだいたいのミスを見つけることができるので、その量自体は大幅に減らすことができているはず。そしてそうやって読み直す習慣があるからか、最近は書き上げた段階でのそもそもの誤字の数が減ってきたような印象もある。
ところで、ここ最近、ネット上に出るテロップや文章の誤字が非常に目につくようになったのは気のせいだろうか。以前から気にはなっていたが、今年に入ってからその数が急激に増えたように感じている。
SNSは目も当てられない状況だ。特に同音異義語の取り扱いがおざなりになっている。例えば、「異常」を「以上」と書いているものを、直近だけでも複数見つけた。その他枚挙にいとまがない程、SNS上は“無法地帯”と化しているように思う。
また、ライターによって書かれた記事においても、ここ最近は誤字の数が大幅に上昇したように感じられる。そもそもネット上の記事の数も増えているのだろうが、それにしてもライターたるもの、もっと誤字には敏感になるべき、と考える私はもはや古いのだろうか。
誤字とは違うかもしれないが、少し前までは「ら抜き言葉」に対しても諸々の議論があったように記憶している。それが最近はそんな話は全くといっていいほど出なくなってしまった。「食べれる」が正しいと思い込み、「食べられる」に違和感を抱く人も、あるいは多いのかもしれない、なんて想像して、私はひとり、怖くなってしまう。
誤字が増えていることそのものを問題視するつもりはない。もちろんそれ自体はいいことではないだろうが、同音異義語が多用され文脈の中で意味を解釈する機会の多い日本語において、ここ最近目にする誤字によって文意の解釈が変わってしまうようなことは幸いほとんどない。つまり、「異常」が「以上」と間違って記載されていたところで、「以上」の意味で捉えうる状況はあまりないのだ。よって、「誤字があっても別にいい、それを指摘するのは重箱の隅をつつくようなこと」といえるのかもしれない。
ただ、私にはこのことが他のよくないことの象徴であるように感じられる。
こんなふうに思うのだ。誤字の増加による日本語精度の低下は、情報精度の低下の表れではないのだろうか、と。
書き手も、そして読み手も、誤字に無頓着になっていることは、その裏にある情報そのものの正確さに対しても同様に無頓着になっている、ということを意味している可能性があるような気がしている。書き手は「正しい情報」を発信する努力義務を放棄し、読み手もその「正しさ」を精査しようとすらせず、ただ鵜呑みにするばかりなのではないだろうか。
今日求められている情報は、「正しいもの」ではなく、「派手なもの」や「面白いもの」、あるいは「感動するもの」なのかもしれない。仮にそれが誤ったものであったとしても、先の条件を満たしているものが「正しさ」に先行するのだ。
話が飛躍してしまうかもしれないが、それはブランドの“誇大広告”にも関連しているように思われる。「最高級の」「稀少な」「至高の」「至極の」「こだわり抜かれた」「唯一無二の」…これらの言葉で表されるものを見る機会というのは、本来は限りなく少ないはずなのに、どうして我々は日々こういった言葉の踊る媒体にお目にかかるのだろう。「正しさ」を著しく欠くこれらの言葉は、嘘であったとしても、派手さやラグジュアリーさを演出するためには必要不可欠なのだろう。そして、タチの悪いことに、それらを消費者も求めているのだ。
「正しさ」という話をすると、「正しい、なんて存在しない」という反応をされることがしばしばある。「正しさ」を「よさ」に置き換えても同様だ。
存在しないかもしれないが、存在しないことはまだ誰にも証明されていない。だから、「正しさが存在するかどうかはわからない」というのが、本来のスタンスであるように思う。
私は、「正しさは、ある」という側に立ち、いつ辿り着けるのかはわからないながらも、「正しさ」を追い求めていきたい、と思うのである。
ふぅ…なんだかアツくなってしまった…
いずれにしても…この記事の中に、誤字がありませんように…
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