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”サッカー以外に目を向けさせること”がサッカー指導者がすべきこと

サッカーワールドカップ2022カタール大会が開催されています。

日本代表は当初より目標に掲げていたベスト8への進出は叶いませんでしたが、優勝候補のドイツ・スペインを破りグループリーグ1位通過を果たし、その実力を世界に見事に証明してみせました。

格上といわれる相手にも勇敢に戦い、不可能を自分たちの実力で可能にした代表選手たちの姿に、日本中が熱狂しました。


深夜の薄暗い部屋でテレビ画面にくぎ付けになった私が、ふと我に返って思い起こすのは、初めてワールドカップを観た98年のフランス大会です。今から24年も前になります。24年も?!(笑)
本戦初出場の日本代表の戦いぶりに日本中が注目しました。

当時小学2年生だった私は、真っ暗なリビングで父とふたり、ブラウン管テレビに映し出される試合中継を眠い目を擦りながら必死で観ていました。

眩い日差しのなか登場した青色のユニフォーム、肌の色の違う選手たちの世界トップレベルの華麗なテクニック、ゴールの瞬間の歓声と悲鳴…
もう遥か昔のことで断片的ですが、確かに記憶しています。
何よりあの時感じた高揚感がこの胸にしっかりと残っています。

それから私はサッカーの虜になり、サッカーを通して成長し大人になりました。

ワールドカップが私に夢を与えてくれたのです。

フランス大会のときに私がそうだったように、カタール大会が開催されている今この瞬間、サッカーに魅了され、プロサッカー選手になるという夢を見つけた子ども達が、きっとたくさんいることと思います。




我々サッカー指導者は、そんな夢を持った子ども達に対して、どのように接していけばよいのでしょうか。

「信じて努力を続ければ夢は必ず叶うよ。」そう伝えるだけで十分でしょうか。

私は、きちんと彼ら彼女らにこの先待ち受けていることを伝えるべきだと思います。

それは、「プロになれるのはほんの一握り。プロになれたとしても必ず引退するときがくるよ。」ということです。
そして、「だからこそ若いうちからサッカー以外にもきちんと目を向け、関心の幅を広げておく必要がある」ということを理解させたいです。
それが、サッカー指導者としての責任だと思います。

元Jリーガーがセカンドキャリアで苦労しています。サッカー指導者が低賃金重労働で苦しんでいます。街クラブが採算がとれず潰れそうです。

日本のサッカー界が抱えるこれらの問題は、今サッカーに携わる大人がサッカー少年少女だった頃に、サッカーに夢中で他のことに関心を向けなさ過ぎたことが影響しているのではないでしょうか。そしてそれは、サッカー指導者から先述した大事なことを伝えてもらってこなかったからではないでしょうか。


もちろん、生半可な努力でプロサッカー選手になれるわけがありません。
夢を信じて一途に努力し続けなければいけません。

しかし、最近は現役Jリーガーも視座を広げるために空き時間にビジネススクールに通ったり、クラブが選手に多種多様な講座を用意したりと、サッカー以外に目を向ける取り組みが進んでいます。結果として、新たなサッカーを活用したビジネスが生まれたり、Jリーガーによる社会貢献活動が増加しています。

これからは、もっと早くからサッカーが大好きな子ども達に”サッカー以外にこんな世界があるよ”と伝えていくことが必要です。

そうすることで、元Jリーガーのセカンドキャリアの問題が解決するだけでなく、サッカーと様々なファクターを結び付けた新しいビジネスが生まれ、サッカーを通した新しい社会貢献活動が生まれ、そうして何よりサッカーというスポーツの価値が今よりももっと高まることでしょう。
サッカーの価値が高まれば街クラブへの投資が増え、それが指導者の賃金改善につながっていきます。

サッカー指導者がサッカー以外のことに目を向けさせる…一見矛盾しているように思われますが、サッカーに携わる子ども達の未来を本気で考えれば必要不可欠なことです。そしてまた、日本のサッカーを発展させるためにもサッカーというスポーツの価値を高めるためにも、このことがとても重要だと思います。

「あなたはサッカーの他に何ができる?」
「サッカーの他に何に関心がある?」

こんな問いをサッカー少年少女たちに投げかけていきたいと思います。

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