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第3回:たった一人を熱狂させる/R for Dの仕組み(前編)

こんにちは、株式会社TO YOUの岩下です。
株式会社TO YOUは、「たった一人を熱狂させる」をコンセプトに、渋谷・神泉で最旬の国内デザイナーズブランドを中心に取り扱うセレクトショップR for DやファッションメディアDEED FASHIONを運営しています。

ゆるっと脱力感漂うTO YOUという会社名には、一直線に「あなた」を熱狂させるんだという思いのほか熱量高めのメッセージが込められています

「たった一人を熱狂させる」
「たった一人を熱狂させる」
「たった一人を熱狂させる」

覚えていただけたでしょうか。

第1回:たった一人を熱狂させる
第2回:たった一人を熱狂させる/R for Dの場合
第3回:たった一人を熱狂させる/R for Dの仕組み(前編)
第4回:たった一人を熱狂させる/R for Dの仕組み(後編)

今回は3回目の投稿です。

今回と次回ではセレクトショップR for Dとして熱狂を形にするために克服すべき5つの課題と2つの解決策についてそれぞれみていきたいと思います。
2つの解決策は私たちが山積する課題を乗り越えるために大きな役割を果たしています。

その前に全体像をまとめておくと、TO YOUで私たちが用いている方法論の大きな流れは以下のようになります。

◾️自分たちの中に熱狂を見つける
◾️熱狂を形にするための課題を整理する
◾️課題の解決策を考え、デザインし、実行する

R for Dでは熱狂は最初からありました。
ファッションショーができる服屋さんが作りたかったのです。
そのため以下では課題の整理と解決策の部分に焦点を当てています。

大まかに分類すると、ビジネスモデルの観点から私たちがセレクトショップR for Dをオープンするために乗り越えるべき課題は5つありました。
これらは必ずしも最初からわかっていたことではなく、状況を把握し、制約条件や前提条件を認識するとともに、自分たちが本当に大切にしていることがなんなのか、妥協できるところはどこなのかを言語化するプロセスを通じて特定していった課題です。

5つの課題
◾️資金は限られている
自己資金は300万円しかありません。
これだけでは当然足りないので、資金調達を検討しますが、最も切実な課題です。
とはいえ300万円でも300億円でも、いかに上手にお金を使ってそれ以上の価値を表現するか、というのがビジネスの基本であることは変わりません。

◾️ファッションショーができるお店にしたい
ファッションショーをするためにはそれなりに広いスペースが必要です。
店舗として都合の良いレイアウトとファッションショーを開催するためのレイアウトは大きく異なります。
そのためフレキシブルにレイアウトを変更できるアイディアが必要でした。
それなりに広いスペースの内装工事にもそれなりに費用がかかることでしょう。
私たちが見つけた200平米の物件では、まともにやれば初期投資で内装工事に3,000万円以上かかる可能性も十分ありそうです。

◾️デザイナーを巻き込みたい
セレクトショップにとっての利害関係者として最も重要なのは、買い手であるお客さんと売り手であるデザイナー(ブランド)です。
ファッション好きが集まるお店としてお客さんとデザイナーのコミュニケーションが増えることはお互いにとって良い刺激となるはずです。
また特に若いデザイナーにとって販売チャネルを複数持つこと、販路を開拓すること、そして売上と利益を増やすことはブランドを成長させるための大きな課題でした。

◾️通常のビジネスモデル
通常は年2回の展示会でオーダー、後日納品されたアイテムを買い取り、店頭に並べて販売します。
もしこの方法を採用していたら、商品を揃えるだけでも2,000万円以上の資金が最初に必要だったかもしれません。

◾️取り扱いたい商品は個性的な洋服
私たちは、国内ブランドを中心に次のファッションシーンを作っていける可能性を感じる洋服を販売したいのです。
そういった洋服が最初からバンバン売れる性質のものでないことは、私たちも十分理解していました。
そのためまずは知ってもらうところから、じっくり売上が成長していくまでの時間を稼ぐ必要があります。
これは私たちにとっても、そこに参加するデザイナーにとっても非常に重要なことです。

さて、内装工事と商品だけでも初期投資は正面からやれば5,000万円を超えてしまいそうです。
繰り返しますが、自己資金は300万円です。

この状況で、あなたなら一体どうするでしょうか。
欲張りすぎたのではと諦めてしまいそうですね?
しかしそれでも諦めないのが私たち株式会社TO YOUです。

これら5つの課題を解決したのは、2つの解決策でした。
課題と向き合い、熱狂を形にするためのプロセスを見ていくことにしましょう。

2つの解決策
◾️レントシェア型のビジネスモデル
◾️無段階レイアウトを可能にした内装設計

それでは早速、

◾️レントシェア型のビジネスモデル

から始めていきます。

思いつくまでのプロセスはひとまず省略させていただいて、レントシェア型のビジネスモデルのしくみを説明しましょう。
レントシェアはレント(家賃)をシェアするという意味で、いわゆるシェアオフィスなどをイメージするとわかりやすいと思います。

R for Dでは特にレントシェアかつ委託販売のしくみを採用していますが、図らずもファッション業界では日本でおそらく初めての試みだったそうです。

レント(家賃)をシェアするメリットは、売上に関係なく発生する賃料(固定費)負担を緩和できることです。
毎月のキャッシュフローを安定化させ、長く続けやすい事業構造につながります。

そして初期の資金繰りに大きな影響を与えているのは、委託販売のしくみを採用していることです。
R for Dは店舗、販売スタッフを手配し、店舗運営とイベント企画を行い、デザイナーは商品を自前で用意します。

従来デザイナーには、「展示会での卸売販売」または「実店舗またはオンラインによる直接販売」という2つの選択肢しかなかったのですが、R for Dは第3の選択肢を提示しています。
デザイナーからすると前者は在庫リスクがなく、自らの営業活動も限定的ですが、後者は在庫リスクがあり、自らの営業活動が欠かせません。
R for Dでの委託販売はいわば両者の折衷案で、在庫リスクがあるが、自らの営業活動は限定的にできるしくみです。

このしくみを採用している関係でR for Dでは服のセレクトもしないのですが(接客所感を伝えたり相談に乗ることはよくあります)、バイヤーの目に止まった個別の商品として販売されるのではなく、シーズンコンセプトを持つコレクションとして販売することができる点もデザイナーにとって他にない魅力になったようです。

利幅で見てもちょうど中間にあたり、デザイナーがリスクを限定しながら成長していくための新たな選択肢となっています。

このようにデザイナーにもメリットをもたらす委託販売を採用することで、R for Dとしても初期投資の商品仕入2,000万円以上を節減することができました。
と机上ではそうなりますが、実際にはまだ影も形もないお店のために、デザイナーに在庫リスクを負ってもらうことはそう簡単なことではありません。
委託販売というと、販売側に都合の良いしくみとして利用されることも多く、嫌われがちなところもあります。
しかし私たちは、デザイナーにとっても十分メリットがあるしくみとして委託販売をデザイン、運用していくことに決めました。

そうは言ってもデザイナーとの信頼関係があってこそ実現できたことでもあります。
もともと数年にわたる取材を通じて地道に繋がりを深めていたこと、ファッション業界に対する共通の問題意識があったことや各デザイナーにとっての具体的な収益試算をだし、丁寧に説明したことが実を結びました。
今となってはデザイナーから参加希望のお声をかけていただくことも増えています。

レントシェア型のビジネスモデルにより、商品仕入の初期投資を抑え、毎月の賃料負担も緩和されました。
また参加する30を超えるブランドのデザイナーたちはR for Dとともにレントだけでなくリスクもシェアしているので、いわば同じ船に乗った一蓮托生の関係となります。

ちなみに毎月の固定的な支出で賃料と並んで重要なのは人件費です。
R for Dでは3人の創業メンバー以外にひとりだけ雇用をしています。
雇用の責任はとても大きく、最優先でお給料を支払わなければなりません。

実はここにも負担を軽減するための工夫があります。
それは創業メンバーの3人はそれぞれ自力の複業でR for Dに参画しながらでも生活費くらいは稼げることです。
なのでR for Dは4人のうち3人は最悪タダ働きでも続けていくことができます。

別の例では正社員として企業で働きながら活動しているデザイナーも現れており、個人としてもうまくリスク管理しながらチャレンジするための選択肢は広がっています。

熱狂だけの無謀なチャレンジに見えて、実は色々な面で計算をし、工夫をしてリスクがコントロールされていることがお分かりいただけたでしょうか。

今回も長い文章を読んでいただき、どうもありがとうございました。

株式会社TO YOUでは、それぞれの「たった一人を熱狂させる」を実現したいビジネスパートナーを募集しています。
ファッション業界でも、そうでなくても、どちらでも大丈夫です。
私たちはより多くの人が熱狂を形にできる社会がいい社会であると考えています。

あなたの熱狂を私たちに教えてください。そして一緒に実行しましょう。
反対の場合もあるかもしれません。
ビジネスのバックグラウンドがあるあなたであれば、そこでどんな熱狂を起こせるのか、私たちにも一緒に考えさせてください。

ご興味をお持ちいただけたら、Twitterのフォロー、DMやメールでのご連絡もお気軽にお願いします。

Twitter: @Iwashitayusuke

Mail: iwashita@deedfashion.com

第1回:たった一人を熱狂させる
第2回:たった一人を熱狂させる/R for Dの場合
第3回:たった一人を熱狂させる/R for Dの仕組み(前編)
第4回:たった一人を熱狂させる/R for Dの仕組み(後編)


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