見出し画像

経営と知財 #Appendix2 昨今注目の特許情報分析でわかること、本質的なこと

これまで「経営と知財」と題して、大枠の考え方の記事(よろしければこちらを参照ください)を書いてきましたが、いくつか補足的な事項を、箇条書きでアップしていきたいと思います。
簡単なメモですので、もしご不明点あればお問合せください。


・昨今、IPランドスケープや知財ビジネス評価書等、特許情報の分析が注目され、補助金、助成金なんかもついたりしている。
・ただし、本質的に何ができるか理解しておかないと時間と労力の無駄に終わることが多い。(一方で、ビジュアル化できてやってる感がでることもあり、大企業経営層などへは安心材料としてそこそこ効果的。あまり本質的な意味はありませんが、経営層が知財情報の本質を理解していないのも一因。)
・最も重要なポイントは情報の性質。
①特許情報は1年半前の動向が見えているため過去の情報、Web情報は最新の情報。
②特許情報は過去の情報が削除されないため蓄積、定量的分析に向く、Web情報は過去の情報が蓄積しないため定性的分析に使える。
③特許情報は、実際にプロダクトになっていないものも多く含みアイデア情報の蓄積、Web情報は投資覚悟を決めたプロダクトの情報。
・昨今、製品開発からリリースに1年半以上かかる分野はそう多くない、特許情報の鮮度、有効性、使い方は要判断。
・特許情報は課題と手段の2次元マップ等、客観的なビジュアル化ができ戦略策定に一見使いやすい。一方で、他社が投資しているところ、していないところが見えた後の判断は、結局のところWeb情報からのマーケット分析、事業性判断、或いは技術的なトレンドや作用機序などの技術者の視点での分析が必要。片一方ではなく、両情報の活用は必須。
・穴があった時に魅力がなく投資余地がないから穴なのか、誰も気づいていないチャンスの穴なのか。競争激しい領域があった時に既にレッドオーシャンなのか、供給より需要がはるかに大きくまだまだ参入の余地がある成長領域なのか、など。
・特許情報は過去情報が永遠と蓄積するため、情報量が多く、その分、相対的にWeb情報分析に比較し分析の労力が大きい。現状は、Web情報から分析の方向性を定めたあと、目的を持って特許情報分析に取り掛かるのが正しいプロセス。
・事業や技術的にAとBとCの方向性がある際に、AとBとCに他社がどれくらい投資しているか、誰と組んでいるのか、自社としての特許権利化の余地があるのか、などを特許情報から定量的に把握が可能。参入判断やリスク判断に使用できる。
・その他、特許情報でしかわからないこと、メリットをいくつか
①共同出願という制度があるため、どの企業とどの企業が協業関係にあるのか、どの企業とどの大学が共同研究の関係にあるのかがわかる。
②1件あたり数十万の費用がかかっているため、特許出願件数をみることでその分野への各企業の投資額が推定できる。
③定量的な分析は、時間軸も分析対象とできるため、投資の伸び、撤退のタイミングなどがわかる。
④業界ごとの課題感や、アイデア情報として、発想の種としての網羅性はそこそこあるため、使い方によってはマーケット分析の補足にはなる
⑤発明者名が個人名として出ているため、当該分野の研究者や、どこの会社からどこの会社に転職したっぽい、などがわかる。
・今後はChatGPTなど、特許情報分析の労力のデメリットが解消されていくと思われる。その場合は、過去の情報が全て蓄積されて開示されている特許情報はかなりの有望資産となる。上記の性質も考慮したツール化、開発をどこかのスタートアップがやってくれると嬉しい。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?