見出し画像

「Ghostwire:Tokyo」感想:AAA級の再現度の東京で、「あえてハズしたB級感」が最高に贅沢でクセになる、スタイリッシュ少年漫画お祓いアクションアドベンチャー


かっこよさ一点突破の贅沢なスタイリッシュオカルトゲーム


 そもそもGhostwire:Tokyoとは

「サイコブレイク」「サイコブレイク2」を開発した、Tango Gameworksによる最新作。対応プラットフォームはPS5とPCの、アクションアドベンチャーゲームです。

ゲームの舞台は現代の東京、渋谷。事故に遭った主人公:暁人に、謎のキャラクター:KKが乗り移るところから始まります。暁人の体に入り込んだKK、そしてそれにより謎の能力を使えるようになった暁人。
一方、渋谷にいた大勢の人は、皆白い煙に包まれた瞬間に消失してしまいます。人がいなくなった渋谷で、人間の代わりに出現した幽霊と戦いながら、暁人は入院している妹を助けに行く---という物語です。

ビジュアルから怖そうな雰囲気はありますが、プレイフィールとしてはホラーではありません。もちろん明るく楽しいスポットは無く、おどろおどろしい雰囲気もあり、病院や建物はドキドキしながらの探索となります。

幻覚や奇妙な演出など、弱めのジャンプスケア(ホラー映画などによくある、急に大きな音と幽霊の顔などでびっくりさせる演出)がありますが、そこまで強いものでは無いため、ホラーが苦手な私でも楽しく遊べました。
綿密に描かれた渋谷風な世界は非常に大きな魅力であり、その街はコンパクトなオープンワールド、箱庭型のフィールド。戦闘は「スタイリッシュ少年漫画異能力怪異バトル」で気持ちよく、またイベントでは河童や一反木綿のような妖怪から、きさらぎ駅のような都市伝説までカバーしており、ホラーというよりオカルト的な雰囲気を強く感じるものとなっています。

このゲーム、私は本当に毎日睡眠時間を削って遊ぶほどドハマりしてしまいました。一方で、人によって評価が分かれるであろうとも思う内容であるとも感じているため、私視点の感想を記載してみます。



綿密に描かれた東京・渋谷を一人称視点で体験する魅力は圧倒的。しかしそこに「ハマれるかどうか」がこのゲームを楽しめるかどうかの最大の焦点

明らかな特徴であり、最大の魅力は、描かれた「東京」の細かさです。
既存の店舗や商品のパロディが散見される舞台である東京(渋谷)は、元ネタを推測するだけでも面白いものです。しかもこのゲームが一人称視点であることから、同じくリアルな東京を描いた「龍が如くシリーズ」や「すばらしきこのせかい」等とは異なる、「リアルな街を自分の目で見て探索している感覚」に陥りました。

そして東京の描写がゲームの中でも非常に大きな魅力であるからこそ、この部分に対して「ハマれるかどうか」が、この作品の評価の分かれ目であることは、非常に明白であると思います。

渋谷駅前

ニューヨークの街並みを描いた「Marvel's Spider-Man」を非常に楽しんだ私ですが、あのゲームは「行ったことはないけどなんとなく知っているニューヨーク」という知識でも楽しめました。そこには、スパイダーマンの蜘蛛の糸を用いて移動するという、スピーディーで爽快感あふれる移動手段が存在し、そしてそれがメインの移動手段であり、とても魅力的だったのです。

一方でこのゲームは、基本的には歩き/走りで移動を行います。天狗を利用したグラップル、ビルの屋上からビルの屋上へとグライド(空中浮遊)して移動することも可能ですが、地上に用意されたオブジェクトや店舗、イベントの多さを考えると、この移動手段はメインではないと思います。

収集物も大半は地上にあり、それらを見つけることも面白さの一つです。経験値となる霊体を探すときはビルの屋上も探索はしますが、やはり魅力、ゲームの見どころとしては、東京の街を探索するというところにあります。

スパイダーマンと比べた場合ですが、明らかに「地上」を探索する面白さに比重があると思います。そうなると、どうしても見る景色はリアルな渋谷。「東京の渋谷という街を知っているかどうか」で、その面白さには大きな差が発生するように感じました。

スクランブル交差点に道玄坂、渋谷駅というスポット、そして実在の飲食店等を知っていることで、元ネタや同じ道、同じ建物を楽しめます。私自身、道玄坂あたりの再現度は、既視感を覚えるくらい細かいものでした。一方で、これらのスポットや、日本そのものを知らない場合、このゲームの大きな魅力を楽しめないのではないか、との疑問も、同時に浮かんできました。

ふと、人間の住む街(現実を模した町)を再現していたゲームとして、キングダムハーツ3を思い出しました。ベイマックスのエリア「サンフランソウキョウ」、サンフランシスコ+東京の和洋折衷なエリアです。

このエリアを冒険したときは、箱庭的な魅力が十分にあり、キングダムハーツの中でこのような街を舞台に戦えるのは非常に面白かった記憶があります。

しかし、それはその街がサンフランシスコ+東京であったことが理由ではありません。キングダムハーツというファンタジー、ディズニーの世界の中で、日本語が使われているという事実、またそれまでのエリアに比べ現実味のあるステージだったからこそ魅力を感じました。一方で、そのステージの細部について、強く印象に残ることはありませんでした。

キングダムハーツの世界に日本語があることには驚いた

つまり、「知らない街」には思い入れが無いのです。
逆に言うと、Ghostwire:Tokyoを初めてプレイして最初のムービーを見ただけで、精巧に渋谷の街が再現されていることがわかり、渋谷を歩いたことのある人なら、その「ゲームの中の渋谷」は、自分が歩んだことのある「思い入れのある渋谷」に変わるのです。

「知っている街」の再現が、今までにないくらい精巧であるからこそ探索も面白い。東京について詳しく、何度も渋谷に行ったことのある人は、既視感から思わずニヤニヤしてしまうゲームだと思います。一方で、渋谷に行ったことのない人からすると、特に思い入れの無い土地であり、どこか内輪受けしているゲームのように感じられる可能性もあります。
そしてきっとこのゲームへのハマり具合は、「渋谷をよく知っている人>渋谷に行ったことのある人>渋谷に行ったことのない人>渋谷を知らない人」というような順序になると思われます。

私自身、25歳で東京に引っ越してきた身として、あの渋谷の人混みが非常に苦手であり、用事が無ければ行くことはありません。行くとすれば誰かと用事がある場合か、渋谷のTSUTAYA、Club asia、今はもう無いですがLOUNGE NEOに行くことがほとんどでした。そのため、そのあたりの道筋は「あー!すごい再現されてる!」とわかりますが、それ以外の道はさほど印象には残りませんでした。
とは言え、この細かいディティールから生まれる「知っている場所がすごい再現されてる!」という感情は、他のゲームでは感じたことのないものでした。先に書いたように、それは一人称視点であるからなおさらそう感じ、本当に渋谷を歩いている、そして本当に渋谷に幽霊が跋扈している、そう思わせるリアリティへと繋がっていたのです。だからこそ、これが全く渋谷を知らない人はどう思うか想像すると、やはり私よりも、このゲーム内の街が印象に残らないのではないかと考えます。


「Steins; Gate」をプレイしていた約12,3年前、私はほとんど東京に行ったことがありませんでした。その数年後に東京に引っ越したのですが、秋葉原駅中央口からヨドバシカメラ横を通ったときの既視感と衝撃は未だに忘れられません。岡部倫太郎の立ち絵が見えるかと思うくらい、現実の景色とゲームで見た背景がリンクし、鳥肌が立ちました。

そういう意味では、例えば渋谷を見たことが無い海外の方が、今後東京に来た際に「Ghostwire:Tokyoで見た景色だ!」と感銘を受けることがあるかもしれません。ただ、私も実際にその景色を見るまではゲームの背景に何の感覚を受けることが無かったのも事実です。現実の街を舞台にしているゲームを体験したときの感動という意味では、「既に知っている街がゲームに出ている」という体験に勝るものは、なかなか無いと考えます。

「街を知っているからこそ細かい再現に驚き、そこからリアル感を感じるからこそ幽霊が徘徊する異質さもリアリティを増す」というのがこのゲームの魅力だからこそ、これが知らない街、つまりは渋谷を知らないと、面白さの体験が一部損なわれてしまうのではないか。そして、この街の探索が魅力の中でも大きい割合を占めているからこそ、なおさら街を知らない人への影響が大きいのではないか。そう感じるゲームでした。



とにかくカッコいいバトル、アクションは少年漫画。例えるならるろうに剣心の「牙突」

そんな、現実を模した世界で行われる戦闘はいわゆるFPS形式。主人公の暁人は風、炎、水の属性の遠距離攻撃(エーテルショット)を撃ち出し、幽霊に攻撃することができます。これらはエネルギー(エーテル)がある限り打ち出すことが可能で、エネルギーが無くなってしまうと打てなくなります。つまりは、エネルギーは銃弾、弾の所持数のようなものです。
それぞれの属性の攻撃を行い、ときには弓やお札なども用いて異能力バトルを、渋谷の街中で繰り広げる。これがとにかくカッコいいんです。
その理由は2つ。主人公:暁人の手や指の動かし方と、ネオンのような攻撃のビジュアルです。

アクションのかっこよさ

暁人は様々な攻撃を行いますが、その際に手や指をアグレッシブに動かします。銃を構えてただ弾を発射するのではありません。指から力強く打ち出すのです。

さらに、攻撃をためて一気に放出するチャージ攻撃であればなおさら激しい動きで攻撃します。例えば、指をまるで激しい指揮者のように動かすことで風の属性のエネルギーで攻撃し、炎攻撃は両手で爆弾を飛ばすように、そして水攻撃は刀で切り裂くように手、腕を動かします。

幽霊に攻撃を重ねることでコア(霊の心臓のようなもの)を露出させた際には、それを引き抜いて大きなダメージを与えることが出来ます。敵を倒す決め技のようなものです。
その演出がまた、とんでもなくカッコいい。まるであやとりのように力強く敵のコアを引っ張り、力強く、コアを引き抜く。ためてためて一気に爆発する演出は、カッコよさと同時に気持ちよさ、爽快感も覚える瞬間でした。

これらの演出はもう、既にいくつかのレビューで言われている通り、まるで少年漫画なんですよね。しかも、「動作が真似しやすい」というところがまた、いい演出だと思います。

なんというか、るろうに剣心の「牙突」的な真似しやすさというか。自分と同世代、30代くらいの方は、傘で牙突の真似をしたことがある人、結構いると思うんですよね。今思えばただの「突き」の動作なのですが、すぐに真似できるシンプルさだからこそ、真似できた(真似したくなった)記憶があります。これが九頭龍閃ではマネしにくいですしね。

このゲームにおけるバトル時の主人公:暁人の動作は、実際、指と手を動かしているだけです。そこがなんとも、無意識に真似したくなると思わせられました。また、ゲーム中に鳥居を開放する場面が何度かあるのですが、そのシーンでの指の合わせ方もまた良い。ついつい真似してしまいます。
そして、この「指や手の動作と同時に特別な力が発せられる」のが、シンプルながらいかにも普通の生活の延長線上のように感じ、身近なカッコよさとしてゲームの根幹を担っていました。とにかく、カッコいい。

鳥居解放の指を組む動作もまた最高

人のいない夜の道だからこそ映える、攻撃のビジュアル

そしてもう一つのカッコいい理由は、そのビジュアルです。
舞台は常に薄暗い夜、しとしとと雨が降ることもあり、濡れた地面には街の明かりが反射します。ここはもう、戦闘に限らずかっこいいというか美しさを感じます。

そんな街で戦う暁人から発せられるエネルギー。それは、風は緑、炎は赤、水は青といった色で表現されています。
これがまた、電気的というか、ネオン的な明るさで、夜の街とのいいコントラストになっているんですよね。明かりのようでもあり、花火のようでもあり。夜の世界で一際目立つ存在が飛び交うビジュアルは、派手で気持ちのいいものでした。これが晴れた日中では、あまり明るさにフォーカスされず、映えなかったと思います。

そしてその攻撃の明るさも、ネオン的とは書きましたが、夜の街のネオンのようではありつつ、人工的ではない自然界にありそうな明るさです。赤い照明ではなく、炎の赤さ。そんなところがまた、科学ではなくオカルトな感じがしてゲームの世界にぴったりでした。

濡れた地面の反射が美しい



バトルシステムを単調と捉えるか、シンプルと捉えるか

ただ、そのバトルシステムがやや単調であることは否めません。風や炎など攻撃の種類はありますが、一方でそれはRPGなどでいう「属性攻撃」とイコールとはなりません。銃か手りゅう弾か、攻撃範囲と威力、弾数が異なるだけで、つまりは同じ物理攻撃的な扱いなのです。

また、主人公:暁人の行動に「回避」というアクションはありません。そのため、アクションRPGなどにおける「敵の攻撃をスピーディーに避けて反撃」という気持ちよさはなく、常に敵の攻撃の当たらない範囲で攻撃をするのが正攻法となります。
防御およびかなり判定の甘い、簡単なジャストガードもあるので、接近戦も出来なくは無いですが、しかしこちらが強力な接近攻撃を持っていないこと、基本の遠距離攻撃もチャージするほど強力になることから、接近戦のメリットは薄いです。
中距離から遠距離での戦いが最も有効であるため、基本的には敵に向かうのではなく一定の距離を保ち(後ずさりしながら)攻撃をする、そして敵が近づいてきたら走って逃げるという行動になります。ほぼ、その行動が、最後までずっと変わらないのです。

そういう意味では、戦闘は単調であると言わざるを得ません。敵の攻撃もバリエーションはあるものの、短距離の攻撃か遠距離攻撃かの違いであり、そして攻撃の種類が変わろうと中距離遠距離で戦うセオリーには変わりがありません。どちらかというと、駅の地下街や工事現場などのフィールドにより、遠距離をキープできないときにどう戦うかが、プレイヤースキルと判断の問われるところでした。

この単調さは結局最後まで(イベント戦闘以外は)変わることはありませんでしたが、しかし「あー退屈だな…」と思うことは全くありませんでした。理由は先述の、見た目のカッコよさがひとつ。銃で撃つより、エネルギーをぶつけているという能動的な感じと、指揮者の如くアグレッシブに動く手、指。もはやダンスの振り付けのような戦闘は、退屈さを感じさせないものでした。

加えて、敵に耐久力があり、かつ攻撃力が大きいのがよいメリハリになっていたのかなとも思います。敵に一番オーソドックスな風攻撃を2,3発あてれば撃破、とはいかず、数発当てないと倒せません。
そもそものエネルギー、つまり弾薬が初期状態で30発分しかないので、攻撃を外してばかりだとすぐに弾切れになり、苦しい戦いを強いられます。威力の高い炎攻撃であれば1発で倒せることもありますが、炎攻撃は初期状態では5発ほどしか打てません。そのうえ、敵の攻撃はかなり威力が強く、3-4発食らうと体力がなくなりゲームオーバー。この緊張感がいいのかもしれません。

大味でありつつ丁寧に立ち回れば勝てる(丁寧に立ち回らなければ勝てない)といったバランスで構成されていたことも含め、私にとってはシステムの単調さ以上に、派手でカッコいい演出が「簡単に出せる」というメリットに繋がり、気軽に、カジュアルに楽しめた理由だと思います。

ステルス的に、敵の背後から攻撃を行うことで一撃で倒せる「即浄」というアクション(ステルスキル)もありますが、そもそも霊の動きが少なく、いつ振り向くのか把握しにくいところがありました。特に女子高生の霊なんて首から上が無いのでなおさら把握しにくく、まあステルス攻撃はうまくいけば有利、基本的には正面突破であるというデザインに感じました。
その正面突破のバトルがかっこよく油断できないものなのですから、ダルさや面倒さ、飽きは全く感じませんでした。



ホラーが苦手でも大丈夫な、「ちょっとハズした」オカルトゲーム

私自身、ホラーゲームが苦手であり、バイオシリーズを筆頭としたゾンビ系ゲームはほとんどプレイしたことがありません。主人公の不来方夕莉が可愛いという理由でプレイできた「零:濡鴉の巫女」、ホラーと知らず買った「パラサイト・イヴ」、その続編であり主人公がセクシーな「The 3rd birthday」はクリアしましたが、それ以外には手を出していません。

このゲームも、面白そうではありつつ不気味な世界に二の足を踏んでいて、発売日直前まで購入は考えていませんでした。しかし、発売記念の各ゲームメディアのレビューでは大々的に「これはホラーゲームではない!」という部分が極めてポジティブに書かれており、またSNSの動画を見る限り、ビクビクしながら進めるゲームではないことが認識でき、ハードルが大分下がりました。

そして何より、その怖さを超えて「面白そう!」と思わされたのが、「ちょっとハズした」オカルト感といったところです。ハズしたとはつまり、「王道のホラー感」「教科書的なホラー感」のセオリー、雰囲気作りを、あえて壊しているというところです。

公衆電話に形代をタッチして霊体を送る様はまるで交通系ICカード、電子マネーのようですし、首無し女子高生がクラウチングスタートやバク転で襲ってくるのはもちろん、メインの幽霊が異形の化け物ではなく傘を差したサラリーマン幽霊というところ、明らかに怖さに寄るのではなく、怖い雰囲気という皮をかぶった面白ポイントであるところ、まさに意図的に怖さから「ハズれて」います。

まるで交通系ICカード

さらに、サイドミッション、サブのイベントも明らかにホラーから外れているものが見受けられました。トイレの紙が無くて現世に留まる霊だとか、霊が蔓延るビルを調べていくと経営者と社員の思惑のすれ違いが垣間見え、「サラリーマンあるある」な話だったりとか。良くも悪くも、ホラーどころかその対極であるお笑いネタも盛り込むハズし具合なんですよね。

とは言え、逆にハズしすぎてゲームとしてどうなんだ?と思う部分が無いわけではありません。一反木綿や鎌鼬を追いかけるサイドクエストは妖怪とカジュアルに追いかけっこをしていますが、一方でそれぞれのクエストの中身が同じですし、面白いかといわれると正直ただの作業感のほうが強いです。このあたりは、ホラーでもオカルトでもなく、ゲームとしての隙間を埋める作業である要素、ただ世界観からハズれた要素に感じられたのは事実です。

しかしそれらはメイン要素ではなく、スキルツリー強化をする場合の要素であるため、本筋ではありません。よりゲームの本筋であるメインやサイドのクエストが、怖さに一直線ではなく、笑える要素と、オカルト的な「ちょっと不気味だけど気になる」というようなベクトルに、うまーく誘導されていました。そこが、私のような「ホラーは苦手だけどオカルトは好き」なタイプの人間には、ドストライクなゲームだったのです。



何でもありな物語を受け入れることが出来るかどうかが鍵

正直、ゲームの物語、ストーリーはかなり何でもあり。もちろん超常現象、オカルト、そのような面から考えれば必ずしも現実の法則や仕組みを遵守する必要は無く、いやむしろそのような仕組みから逸脱してこそのオカルトだと思うのですが、しかしそれでも限度を少し超えているのではないかという印象でした。私個人としては、そのある意味での「枠にとらわれない突き抜け具合」が気に入り、ますますこのゲームを好きになった理由の一つとなりました。

ただ、この物語、何でもありな展開をどう感じるかがかなりこのゲームの評価に直結すると思います。私がこのゲームを好きになった理由は、もはやゲームの整合性云々ではなく物語の展開に対して「そんな展開あるわけないでしょwww」と、ゲラゲラ笑えたからこそです。龍が如くで言えば桐生一馬が虎と戦うとか、大阪城が割れるとか、海から急に戦艦が現れるとか、そういう現実感置いてけぼりの「ありえない」展開を面白がることができるか、というところです。

非常に語弊を招きやすい表現であり、このゲームを貶めるような意味は全く無いのですが、どこかGhostwire:Tokyoは「AAA級っぽさの中に感じるB級感」があり、そこが非常に私にとってツボだったんですよね。
前述の、トイレの紙が無い霊とか、バク転して襲ってくる女子高生の霊とか。なんというか、そういった演出が「ゲームのアクセントとして意図的にB級っぽさを出しているのか、それともそんなB級っぽさを出すつもりは無かったけど、結果として雰囲気づくりに失敗してB級感が出ているのか」が分からず、初めは笑っていいのかどうかの判断が難しい部分でもありました。

ただ、物語の後半の展開はもう、そんな展開あり!?という展開でしたし、やはりじめじめした怖さではなくスタイリッシュなかっこよさが目立つゲームだったこともあり、心置きなく笑っていました。笑っていいのかどうかの迷いが吹っ切れた瞬間、さらに一段深くこのゲームにハマったんですよね。失礼な言い方かもしれませんが、非常に才能と努力と技術のあるスタッフの方々が、あえてAAAタイトルからハズしたB級っぽさを出したゲームであると自分なりに解釈した瞬間、自分の中でこのゲームが、ただ面白いゲームでは無く、とてつもない名作に格上げされたんです。
これだけ緻密にクオリティ高く再現された東京のビジュアルで、こんなB級っぽい物語(サイドクエスト含む)や、少年漫画のような大味でスタイリッシュな戦闘を繰り広げる、ある意味での「贅沢さ」を体験したのでした。

このB級的な物語の展開をどう感じるか。なんだこれ…と冷めてしまう、重厚な物語を求めるタイプの方にはなかなかお勧めできません。しかし、とりあえずよくわからないけど超常現象、オカルト、現実にはない超展開、なんでもあり!スタイリッシュに少年漫画の主人公になりたい!と思える方には、本当にお勧めしたい非常に素晴らしいゲームであると感じました。



誰もが痺れる、井上和彦さんのダンディな声と演技

重要な要素として、キャラクターのCVがあります。
これはもう、とにかくかっこいいとしか言えないんですよね。
主人公である暁人の相棒として体に乗り移るKK。そのCVを担当されている井上和彦さんの声がまた、非常にかっこいいんです。その役回りとしても、暁人をからかったり注意したり、しかしときには純粋な暁人の思いを茶化さない人の良さもあるKK、まさにイケてるおじさんの姿、声がけなのです。

これは女子でなくてもキュン…としてしまうかっこよさがありました。もはや後半は、いかにKK(井上和彦さんボイス)に褒めてもらえるかのためにゲームをプレイしていたようなところもあります。そのくらいかっこいい。

これがKKのようなベテランの男性ではなく若い男性で、暁人との2人組ペアであった場合でもまた面白いと思いますが、しかしこの設定、キャスティングはまさに大正解。
常に一人称であり、暁人の姿もムービーシーンくらいでしか見えず、声がキャラクターを形作るメインの要素となっていた以上、声優さんの演技の占める割合は大きく、そしてそれが魅力的であったからこそ、ゲームの魅力が底上げされていたのは間違いなかったです。

ゲーム中でも特にかっこいいKK(井上和彦さん)のセリフ。ぜひプレイして聞いてみてください。



終わりに:幼少期のゲームの楽しみ方を思い出させてくれた大事な作品

端的に言えば、もう毎日夢中になりながらこのゲームを楽しみました。
最初はびくびくしながら彷徨っていた渋谷の街も、戦いに慣れることでむしろワクワクが勝ち、新たに行動範囲が広がることがうれしくなりました。

どんな陰鬱でホラーな物語やサイドクエストかと思いきや、笑えるネタや作りこまれた都市伝説ネタなど「怖い」より「笑える」というものばかり。スタイリッシュな戦闘も相まって、怖いと感じる機会は思ったより少なかったです。街の雰囲気はおどろおどろしい部分もありますが、怖いのかと思って入ったビルがサラリーマンネタの解決だったときは思わず力が抜けてしまいました。怖さが面白さで中和されたゲーム。そこに残るのは、戦闘のスタイリッシュなカッコよさなんですよね。

カッコよさが浮き彫りになり、そこに強い求心力を感じて、発売から1週間ずっと夢中になって遊び、クリア。
クリアしたときに感じたのは、「久々に懐かしい楽しみ方をしたゲームだったなあ」という気持ちでした。

どうしてもここ最近は、物語性の強いゲームを多く遊んできた気がします。ゲームのハードが進化し、ボリュームが大きくなるほど、ただカッコいいだけのゲームは少ないものです。アクションがメインのゲームにも重厚な物語が盛り込まれたり、またアドベンチャーゲームやRPGではもはやストレートに悪いボスを倒す、というゲームは少なく、様々などんでん返しやサプライズな展開、心が引き裂かれたりプレイヤーが悩むようなストーリーが多くなっているように感じます。

そんな中、このゲームは「ただただかっこいい」という気持ちにさせてくれました。もはや「重厚な人間関係に悩むゲームに疲れていたのかも」と実感させられました。この感覚は、まさにその重厚な物語やキャラクター同士の人間関係、大人の事情などを理解できなかった小学生、中学生くらいのときの、「かっこよさに憧れた」懐かしい気持ちを、蘇らせてくれたと言っていいと思います。

そう、このゲームは中二病的なかっこよさ、もしかすると突き抜けすぎて「ダサカッコイイ」くらいまで行っているかもしれませんが、そんな演出により、小さい頃のかっこよさのみに憧れた純粋な気持ちが蘇るゲームなのです。そこを拒絶しない人には、もうたまらない作品です。
しかも、現代の東京でそれが体験できる。大人になった自分が、渋谷で、少年漫画の主人公のようになれる。それも、圧倒的なディティールで描かれた街中を。

ここ数年、面白いゲームは数あれど、ここまで少年の心にさせてくれたゲームはありませんでした。小さい頃、傘で牙突のマネをしていたように、暁人の指の動き、つい真似してしまいます。グッズとして、コアを引き抜くときのオレンジ色をしたあやとりが欲しいなと思っているところです。

何度も繰り返しますが、とにかくかっこよかった。最初から最後まで、演出から声優さんの演技から、ずっとかっこいい少年漫画を読んでいるようで、かつその漫画の主人公になったような感覚でした。
やや粗いところというか、もっと魅力的になるのではないかと思われる部分があるのは否めません。ただ、それでも、ちょっと粗かったとしても、私は本当に夢中になり毎日プレイし、霊を祓うことに夢中になりました。

本作、私にとっては今年のベストゲーム候補となるくらい、素晴らしい作品でした。DLCでも続編でも、もっと遊びたくて仕方がありません。もっとかっこいいプレイがしたくてうずうずします。
こんな作品がこれからもどんどん発売されることを心から願う、大好きな作品になりました。

東京を舞台に、かっこよくてスタイリッシュなアクションを楽しみたい方。本当にお勧めのゲームです。ぜひ遊んで、戦って、霊を祓っていきましょう。そこには純粋な「面白さ」そして「かっこよさ」が、不穏な東京と幽霊の姿で、しっかりと佇んでいますよ。




この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?